224:彼との再会、テラスでの語らい
すみません、今回はすごく短いです。
テラスからは王都が一望できました。
ちらほらと明かりが灯った、目に眩しくないながらも綺麗な夜景。空には満月が浮かんでいます。
しかし目を引くものはそれだけではありません。テラスの淵で、月光の元で輝く美しい銀色が目に飛び込んできたのです。
それが一体何かがわかるまでにどれほどの時間を要したでしょうか。よくよく目を凝らして、そして……あっと声を上げました。
無人だと思っていたテラスに人がいる。
それも銀髪の――どこか見覚えのある、青年が。
私の声でこちらに気づいたのでしょう。その青年はゆっくりと私を振り向きました。
「ああ、君もいたのか」
私の心臓が早鐘を打ち始めます。
ダメだ、こんな泣きそうな顔を見られたらいけない、と。でも今更パーティー会場の方に戻るなんてできるはずもありません。
私は、辿々しく返事をしました。
「アルデート……さん。ご機嫌よう」
「また数ヶ月ぶりになるな。ずいぶん立派な令嬢になって」
アルデート・ヒューマン伯爵令息。
ジュラー侯爵家の養女となってから会ったことがあるのでさほど時間は空いていませんから久々の再会というわけでもありませんが、まさかここで会えるなんて思わず、驚いてしまいます。
今回は王家主催のパーティー。よくよく考えてみれば、彼がいて当然なのでした。
「そんなこと、ないですよ」
今だってパーティー会場が怖くなって逃げ出してきたくらいなのです。申し分ない淑女になれたつもりでいたのに、その自信は今ガタガタになりかけています。
しかしそれは口にせず、無理矢理に話題を変えました。
「あ、えっと。アルデートさんはどうしてここに?」
「俺はああいう催しが苦手でな。まだ婚約していないせいもあって色々面倒なんだ。ナタリア・ジュラー侯爵令嬢もいつもの如く求婚されまくりだっただろう?」
「いつもの如く、なんですね……」
黄色い声が上がる様子がありありと想像できてしまいます。
確かにそれは鬱陶しくも思うでしょう。テラスでぼっち時間を過ごす方がマシという考えはよくわかりました。
お邪魔してしまったなという罪悪感と、それなら私はどこへ行けばいいのかという困惑が胸の中で入り混じり、込み上げそうになります。
それを押し隠せていたかどうか、私には自信がありません。
気づかれなかったのかも知れない。あるいは気づいていながらあえて触れられなかったのかも知れない。
ですがアルデートさんの視線は少し気遣わしげだったのは確かでした。
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