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222:『社交界の華』なセルは引っ張りだこ

 見惚れているうちにいつの間にか一曲目は鳴り止み、王族の方々のファーストダンスは終わってしまいました。


 そうなればもうあとは自由です。

 二曲目が流れ出すと同時、皆それぞれのパートナーと共にダンスを開始してしまいます。


 曲はクラシック調のものでした。

 流れた時間は五分足らずだった気がします。そして続いての三曲目――ここからがパーティーの本番でした。


 ここはあくまで社交の場。一曲目は絶対にパートナーと踊ることになっているのですが、それ以降は女性は求めてきた男性を選んで、男性はできるだけ身分が高く美しい踊りをする令嬢や婦人に声をかけていきます。

 できるだけ多くの縁を作り、今後に活かすのが目的。ダンスのみであれば不貞とは取られないのだとか。私的には一緒にダンスをするだけでも浮気な気がしますが、この世界と私の価値観は大抵違いますから今更驚きません。


 二曲目もエムリオ様と踊り切ったらしいセルのところには、きっとこの時を待ち構えていたのであろう男性陣がワッと群がり、次々に声をかけていました。


「タレンティド公爵令嬢、私と踊ってはいただけませんかな」

「僕もどうかお願いします」

「いえ、タレンティド嬢、ぜひとも俺と」

「ぜひわたしをお選びください」

「この身に不相応であると自覚しておりますが、どうか一晩の夢を見させてはいただけないでしょうか」

「この手を取ってください、タレンティド公爵令嬢」


 その数なんと五十人以上。

 本当にすごい。すご過ぎます。それほど人気だなんて。


 セルは彼らをざっと一瞥すると、にこりと笑みを浮かべて。


「ではそこのあなたと、あなたと、あなたにいたしますわ。他の方には申し訳ないですけれど、アタクシ暇じゃございませんの」


 三人ほどを指名して、他の全員を切り捨てました。

 服装がそこまで豪華ではないのを見るに、どれもそれほど身分が高くない男性です。おそらく子爵家以下でしょう。


「でもなんでそんな相手をあえて……?」


「それはうっかり手を出されないためだよ。ロッティは綺麗だから、数年前のパーティーで不躾な相手に独占されたことがあったんだ。高位貴族だったから力関係上なかなか断れなくて、それから身分の低い相手を選ぶようになったんだ」


「へぇ、そんな事情が――って、エムリオ様!?」


 いつからいたのか、エムリオ様が私のすぐ隣に立っていたのでギョッとしました。


「王族のボクも下手な相手と踊るわけにはいかないから、ちょっと時間を持て余してね。ヒジリが一人でいるのを見て心配になって来たんだ」


「あー……えっと、ジュラー侯爵夫人と逸れてしまったというか、見失ってしまったというか」


 予定では侯爵夫人が男性パート、私が女性パートというのを踊ることになっていました。婚約者がいない私はそうする他なかったのです。


「踊る相手がいないんだね。良かったらボクが――」


「いいえ、謹んでお断りします」


 そう言われると想定していたので、すぐに否定の言葉を返すことができました。

 踊ってみたい気もしないでもないですが、うっかりまたセルに嫉妬を向けられたらと思うとたまりませんからね。


「そうか。でもじゃあどうするんだい」


「とりあえず見物しようかなーと。ほら、セルのダンス見てると惚れ惚れしちゃって時間を忘れられますし!」


 舞踏中のセルを指差し、私は誤魔化します。情けないですがそう言い訳するのが一番な気がしました。


「ロッティは『社交界の華』なんて呼ばれるくらいだからね。キミもあれを見習うといいと思うよ」


「そう……ですね。そうさせてもらいます」


 精一杯の笑顔でそう言った私でしたが、このパーティーで果たしてダンスのお相手が見つかるだろうかと不安になり始めていました。

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