214:国王様からの呼び出し、その理由は
「ヒジリ、今いいかな。父上がキミを呼んでる」
そう言ってエムリオ様が顔を覗かせたのは、レーナ様とセルが戯れる美しい光景を眺めた、ほんの数分後のことでした。
「えっ」と私は顔を上げ、エムリオ様を見上げました。
「国王様が、ですか?」
「そうだ。キミに会いたいそうだよ」
私はあくまでレーナ様に会いにこの城へ来たのであって、まさか国王様に呼び出されるなんて思いもよらなかったものですから、驚きしかありません。
しかしセルは当たり前のような顔で「早く行ってきなさいな」と私を急かしてきます。
「え、でも」
「侯爵令嬢になったのなら、国王陛下に御目通りするのは当然のことですわ」
そうか、確かに言われてみれば。
どうやらまだまだそのあたりの自覚が足りないようです。
「わかりました。じゃあ行ってきます。レーナ様、お話しできて嬉しかったです」
「わたくしもそこそこ楽しませてもらったわよ、『裸の聖女』。また来なさい」
名残惜しいですがレーナ様たちと別れ、私は部屋を出ました。
それからエムリオ様に先導されて城の廊下を歩き、国王様のいる玉座の間へと向かって歩き始めます。
「国王様からの呼び出しって話ですけど……ただ挨拶をするだけなんですか? なんだか私、やらかしたりしてません?」
「ああ、そこは大丈夫だ。父上はキミのことを聖女としてきちんと認めているよ」
「それは良かったです。ですが、じゃあなんで?」
「それは父上の口から直接聞くといい。ほら、着いたよ」
城の中でも一際目を引く扉の前に立ったエムリオ様が、くるりと私を振り返りました。
「ボクも一緒に入ってもいいけど、どうする?」
何の話かわからないため危険がないとも言えませんし、本当は同行してほしいのが本音。
でも、
「エムリオ様はセルをお願いします。私、一人で大丈夫ですから」
「そうかい? ならボクはお言葉に甘えるとするよ。頑張ってね、ヒジリ」
キラキラと輝かんばかりの満面の笑みに送り出され、私は扉に手をかけ、押し開きます。
そうして入室した広い一室の中央、玉座に腰掛ける国王様が私を出迎えました。
「壮健であったようだな、聖女ヒジリよ」
「えっと、国王様もお元気そうで何よりです」
威厳あふれる姿を前に思わず挨拶を忘れ、淑女の礼ではなくペコペコと頭を下げてしまう私。
国王様はしかし私を叱ることなく、柔らかな微笑みを浮かべられています。
「そなたを今日ここへ呼んだのは、重要な話があるからだ。本来はパーティー終了後に招待するつもりであったが、レーナに会いにきたと聞いたのでな」
「大事なお話? 心当たりがないのですが」
「なくて当然であろう。まだそなたには話しておらぬかったからな。そなたは学園を卒業し、一人前の聖女となったことだろう。そして厄災がすぐ傍まで迫っていることを考えればゆっくりはしておれん。故に」
国王様は懐から一本の棒のようなものを取り出し、言葉を続けました。
「聖女ヒジリ、そなたに聖なる杖を授けよう」
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