213:いつか義姉妹になる二人
せっかくの再会、交わしたい言葉はたくさんありました。
私とセルは部屋に招き入れられ、その中でしばらく話すことに。
エムリオ様は「ヒジリが来たことを伝えてくるよ」と言って国王様に会いに行ったようです。
レーナ様の部屋に入るのは初めてだったでしょうか。
ベッドをはじめとした家具も隅に置かれた人形の全て少女趣味というかなんというか、可愛らしいものばかりです。
「椅子の数が足りないからそこのベッドにでも腰を下ろしてちょうだい」
「わかりましたわ、レーナ殿下。ヒジリはレーナ殿下の右隣にお座りなさいな」
「は、はいっ」
中央にレーナ様、左にセル、右に私。
ベッドに横並びに腰掛けたちょうどその時、部屋の隅に控えていたレーナ様付きのメイドさんがさっとお茶を淹れて手渡してくれます。
そしてお茶を啜り、しばらく味わってから、最初に口を開いたのはレーナ様でした。
「それにしてもセルロッティ姉様と『裸の聖女』が一緒なんて変な感じだわ。セルロッティ姉様も絆されたのね」
「……まあ、そういうことになりますかしら」
意味ありげにこちらへ視線を向けてくるレーナ様、つんとすましているセル。
早速二人の会話についていけないのですが……。
「絆されるってどういうことですか?」
「ああ、『裸の聖女』には言ってなかったわね。聖魔法の特性で、傍にいると貴女に気を許してしまうらしいのよ!」
「えぇぇ……!?」
そんなの、初耳過ぎます。
しかし心当たりはありました。エムリオ様は私に絆され、ナタリアさんは好意的、あれほど私に攻撃してきたセルも今や友達。
まさか私の体質のせいだったなんて。
「大して気にすることではありませんわ。あなたと和解したのは、体質が原因ではありませんわよ」
「そうですか? それならいいんですけど……」
これからは気をつけなくては、と言いたいところですが、こればかりは気をつけようがなさそうです。
レーナ様とセルはすでに知っていたからでしょう、平気な顔で、すぐに話題を変えられました。
私たちが学園に通っていた頃にレーナ様がどんな風に過ごしていたか。それらをしばらく話したあと、愚痴っぽくレーナ様は言います。
「そうそう、今日はダンスパーティーなんですってね。『裸の聖女』のくせに綺麗におめかしまでして、すっかり浮かれ切ってお気楽だわ。わたくしだって参加したいのに」
「……え、レーナ様は参加しないんですか? エムリオ様も行くみたいでしたけど」
不満げに頬を膨らませるレーナ様の横顔を見ながら首を傾げる私。
そんな私の疑問に答えたのはセルでした。
「レーナ殿下は国王陛下に溺愛されていらっしゃるからまだ公の場に立つことを許されておりませんのよ」
「あー……」
娘を心配して家から出そうとしない毒親みたいなことでしょうか。
国王様に失礼過ぎる考えですが、ずっとこの城に閉じ込めておくのは少し可哀想に思ってしまいます。
「こっそり城を抜け出して、私と行きます?」
「そうしたら罪に問われるのは貴女なのよ、『裸の聖女』。それにわたくし、セルロッティ姉様のように堂々とした生き方をしたいの。だからこっそり行くなんてしてやらないわ」
「……レーナ様はセルのこと、好きなんですね」
「当然よ。世界で一番美しくて、誰よりも輝いているセルロッティ姉様に憧れないわけがないでしょう?」
まるで自分のことのように胸を張るレーナ様。セルはというと「嬉しいですわ」なんて言いながら微笑し、私の胸の前から手を回してレーナ様の頭を撫でていました。
美少女と美童女が戯れるその姿はとても美しく見惚れてしまいそうです。
微笑ましい一方で、レーナ様を残してパーティーに行くのは心苦しいなと思わずにはいられないのでした――。
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