200:聖女の息の根を止めよ ――??視点――
私の目的を邪魔をする者は、何者であったとしても滅殺する。
私はもう二度と、悩むことも苦しむことも悲しむことも泣き叫ぶこともしたくない。
もう疲れたのだ、何もかも。
だから全てを排除する。そしてそれはもちろん、新たに現れた邪魔者――聖女とやらも例外ではなかった。
ドローナから聞いたところによると、スピダパム王国が召喚し、異界の地から渡来した救世主、それが聖女なのだという。
異界や召喚やらというのはよくわからないが、聖女の力により私が世界を滅ぼさんとするのを阻止するつもりなのは明白だった。
この世界に稀に誕生する魔法属性は三つ。
聖・氷・時。私は過去に時魔法を有していたし、魔女を集める中で氷魔法使いにも出会ったが、聖魔法を持つ者だけはまだ見たことがない。
だが話を聞けば聞くほど厄介な魔法であり、それを扱う聖女自体も厄介な女だということはわかった。
「たくさんの奇跡を起こしてぇ、大勢の民に慕われてるんですってぇ。魔獣はバシバシ倒すし傷は治すしですごいらしいですよぉ。貴族学園に入ってお貴族様の仲間になったんだとかぁ? なんか、面倒臭そうな奴ですよねぇ。ドローナぁ、名声に縋るような女って大っ嫌いですぅ。……殺したくなるくらいに」
「それは私も同感だが、小娘一人、私が手を下すまでもない。適当な魔女に殺させるのが一番だな」
私はしばし考え込んだ。
『土砂の魔女』ドローナは少々信用に欠ける。『暴風の魔女』ウィンダは万能だが、いまいち戦力的に心もとない。
逆に『大水の魔女』アクネリアは派手にやり過ぎるので後片付けが大変だ。それを考えると、自ずと適任者が見え手きた。
「『烈火の魔女』マディー、『氷冷の魔女』メディー」
「来たよ。何かご命令でも?」
「来たわ。命令があるのなら早く言いつけてほしいわ」
どこからともなく現れたのは、ピンク髪と青髪の双子。
私の手ずから育てた甲斐あって、なかなか有用な手駒だ。この二人であれば小娘を殺すことなど赤子の手を捻るようなものだろう。
まあ、仮に失敗しても別の魔女を送り込むか、私が直々に赴くまでだが。
「――お前たちに任務を課す。この度、スピダパム王国に現れたという黒髪黒瞳の聖女の息の根を止めること。手段は問わない。その周辺も適当に潰しておくといいだろう。この仕事、任されてくれるな?」
「一応、頷いておくとするよ」
「あたしはメディーに従うまでだわ。大魔女様のご命令はその次に重要なことだから、必ず希望に添えるかはわからないわ」
一つだけ大きな欠点があるとすれば、どうにも彼女らは従順ではないということだ。この点はおいおいしっかり教育した方がいいかも知れない。
肝心な時に裏切りにでも遭ったら困るからな。
だが、それらの心配事は後回しだ。
来る破滅の日のために、私はたっぷりと力をつけておくとでもしよう――。
これにて第2章完結となります。
次からは第3章・王都魔女騒動編になる予定です。プロットを組んだり書き溜めたりするので更新再開は7月1日を目指します。【追記】諸事情によりさらに二ヶ月先の9月1日に延期しました。すみません……。
どうぞお楽しみに。
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