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185/239

185:貴族は想像以上に大変です②

 メイジーによるマナー教育はなかなか厳しいものばかりでした。

 お茶の持ち方、料理やお菓子食べ方、細かい言葉遣いや姿勢まで……。


 少しでも気を抜くとメイジーに注意されるので気の休まる時間がありません。

 これでも普通の貴族令嬢の教育の何倍も甘いというのですからゾッとしました。

 私はこれから少なくとも数ヶ月はこの世界で生きなければならない身。最低限のことは身につけなければならないのです。歯を食いしばり、必死で頑張り続けました。


 特に難しいのはドレスでの足捌きです。

 ナタリアさんに私専用に仕立てられたホームドレスを貰い受け、普段着として着ているのですが、これが意外に動きづらい。

 ミランダさんに借りたドレスは子供向けだったため軽くて歩きやすかったのですが、サイズは同じくらいとはいえ今回は完全に大人仕様。廊下で転んだことは五、六回。その度メイジーに叱られるということを繰り返し、五日ほどかけてやっと転ばないようになりました。


「ヒジリお嬢様、これくらいでへこたれていてはいけません。パーティードレスは宝石などの装飾があり、さらにコルセットの締め付けが強い故にさらに歩きにくくなっております。これからパーティーなどにご出席なさる機会も増えるでしょう。とりあえず慣れていただきませんと」


「は、はい」


 これよりさらに窮屈なドレスなんて想像したくもないんですが。

 メイジーの言葉にゾッとする私なのでした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そんな風にして毎日を過ごし、ジュラー侯爵家での滞在期間が十日に達しようとしていたある日のこと。

 王宮の料理にも負けない贅沢さな朝食の席で、ナタリアさんがこんな話を持ちかけてきました。


「ヒジリ様、今度お茶会をいたしませんこと?」


「え、お茶会ですか」


「公爵令嬢のミランダ・セデルー様、伯爵令嬢アリス・ロリータ様、それと従姉妹の子爵令嬢ジュリエラ・アンディス様をお招きしてお茶会を開く予定ですの。その時にヒジリ様にもぜひご参加いただきたく思いますの。皆様気心の知れた仲なので心配は不要ですの」


 一週間ほどお茶の作法を叩き込まれたおかげでなんとか見られるとメイジーに評価されるレベルにまでなった私ですが、急にお茶会なんてハードルが高過ぎます。

 でも、貴族令嬢にとってお茶会に出るのは必須条件なんだそうです。「大体のことは(わたくし)が行いますの。ヒジリ様はお茶とお話しを楽しんでくださるだけで良いですの」と言われ、渋々ながら首を縦に振りました。


 本当にお茶と話を楽しむだけならいいのですが、どうにもそうは思えないのですよね。

 ナタリアさん親しい知り合いなら大丈夫なのかも知れませんけど……。

 私はただ、何も起こらないことを切実に祈るばかりです。


 ああ、本当に貴族令嬢は大変過ぎます。

 養女としてお屋敷に滞在させてもらっている身でこんなことを言うのは傲慢なのかも知れませんが、正直なところを言ってしまうと早く庶民に戻りたい気持ちでいっぱいでした。

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