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181:ジュラー侯爵令嬢は妹が欲しい?

「ようこそおいでくださいましたの、聖女様。どうぞお上がりになってくださいませですの」

「お邪魔します……」


 栗色の髪に虹色の瞳。

 私の故郷では絶対にあり得ない容姿をした彼女――ナタリア・ジュラー侯爵令嬢が美しい笑顔を浮かべ、私を招き入れます。


 私はいつになく緊張していました。

 そりゃあ、ミランダさんの屋敷に行った時もすごいお屋敷だなぁ、と思って身が引けてはいましたよ? それでも今までと今回とは話が別です。

 だってこの屋敷が今日から私の家となるかも知れないのですから。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ミランダさんとお別れした後、戸惑いながらも私は馬車に飛び乗り、ジュラー侯爵領へやって来ていました。

 セデルー公爵領の人々との別れを惜しむ心の余裕もありませんでした。次の滞在先が見つかったことはもちろん嬉しいのですけど、手紙の内容が内容だったので衝撃でしかなかったのです。


『聖女様、(わたくし)の生家、ジュラー侯爵家の養女となっていただきたいですの。

 (わたくし)、聖女様ともっと親しくなりたいんですのよ。

 それに聖女様は高貴なる身。これから社交の機会は増えるでしょう。聖女様に社交の技術やマナーを教えて差し上げることもできますの。女神様に誓って聖女様に不自由な思いはさせませんの」


 本当の手紙の文面はもっと長くて貴族ったらしい言い回しが多かったのですが、まあ大体要約するとこういうことが書かれていました。

 ジュラー侯爵令嬢ナタリアさんは、私を養女に――年齢的に考えておそらく妹でしょうか――にしたいというのです。


 なんで私なんかを? 権力目当て? 確かに条件的にはWin-Winなのはわかりますが、あまりにも話が突然過ぎてついていけなんですが!


 しかし他に滞在先の当てがあるわけでもありません。私はとりあえず話をするため、こうしてジュラー侯爵家を訪ねたというわけでした。


 ジュラー侯爵邸に着くなりジュラー侯爵令嬢をはじめとし、他にも執事服の男性やメイド服の女性など総勢五十人ほどに出迎えられ、それはそれはもてなされました。

 通されたのは香り高い花が敷き詰められた広間。そこで待っていたのはジュラー侯爵。学園で数度お会いして話したことがある、学園長先生です。


「……あ、えっと、お久しぶりです」


「お越しくださいましてありがとうございます、聖女様。娘が急な便りを寄越して申し訳ない」


「大丈夫です。びっくりはしましたけど。こちらこそ、卒業パーティーの場では色々とお騒がせしてすみませんでした」


「過ぎた話です。そもそもあれは、王太子殿下の言動を原因とした騒動ですからな。それときちんと問題の生徒たちには罰則を与えましたからご安心を」


 そんな話をしていると、ジュラー侯爵令嬢が口を挟んできました。


「お父様、早く本題を。聖女様は長旅でお疲れでいらっしゃると思いますの」


 彼女の言う通り、セデルー領からジュラー領は決して近いとは言えない距離でしたから、疲れているのは確かです。

 どうして異世界の交通手段って馬車しかない割には領地と領地の距離がものすごく離れているんでしょうか。いくら馬車の乗り心地がいいとはいえ、いちいち移動だけで時間がかかってしようがありません。はっきり言って不便です。


 ――ともかく、


「そうだな。聖女様、本題に入らせていただいても?」


「どうぞ」


 ここから始まるのは、私が養女になるか否かの大事な話し合いの様子。

 戸惑いながらも私は頷き、ジュラー侯爵様の話を聞き始めたのでした。

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