表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
180/239

180:仕事完了、そして次なる滞在先は

 ――それからさらに数日後。


 昼は領民と交流し、夜はセデルー公爵領で寝泊まりをさせてもらいながら私は過ごしていました。

 お風呂作りの作業も着実に進んでいきます。まず最初に取り掛かったのは公爵邸……ではなく領地の一角の普通の家から。


 一軒一軒作って行ったのでかなりの時間はかかってしまいましたが、その分だけ感謝され、私の聖女としての株は上がった気がします。

 毎日魔力を使うのでぐったりではあるものの達成感はあり、もしも許されるのならここに永住してもいいかな〜なんて思うくらいには過ごしやすい場所でした。


 ミランダさんに領地を案内してもらったり、セデルー領特産のご馳走を食べさせてもらったりもしましたしね。


 しかしそれが長く続くわけもなく、最後にセデルー公爵邸の特大な浴槽を拵えれば、私の仕事は終わり。

 湯加減を試してみるという名目で、キラキラと聖魔法特有の光を放ちながら湯気を立たせるお風呂に浸かりながら、私はため息を吐きました。


「これでもう、セデルー領に滞在する口実がなくなってしまいましたね……」


 ここを立ち去った後、私は一体どこで暮らせばいいのでしょう?

 学園を出た時に一旦保留にして考えないようにしていた問題が、私を苦しめます。


 アルデートさんのお屋敷にでも行って泊めてもらった方がいいのかどうなのか。

 でもそうなると明らかに彼の迷惑になってしまうでしょう。この世界では異性間で名前を呼び合うこともあれなのですから同居なんてもっての他に違いありませんし……。


 そして出た結論は。


「とりあえず、王城にでも行ってみますか……」


 あの場はさらっと流してしまいましたが、よく考えるとエムリオ様の暴挙を止められた功績は大きいような気がするのです。

 それを国王様に言って、褒美に住居でもあてがってもらうのはアリだと思いました。というか、その手しかありません。少し図々しいですが、宿でその日暮しをしてお金が尽きるよりはマシでしょう。


 などと思案に耽っているうちに、少しのぼせてしまったようです。

 高揚する体を洗い流してミランダさんから借りたルームドレス姿で外に出ると、そこにはセデルー公爵家のメイドが待ち構えていました。


「どうしました?」


「ミランダお嬢様がお呼びです。聖女サオトメ様、どうぞこちらへ」


 私がわけがわからないまま、ついて行きました。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ヒジリ嬢、お仕事お疲れ様でした。

 あなたのおかげで私とバリ様の婚約が継続することができたこと、そして我が領のために全力を尽くしてくださったこと、心から感謝します。

 本当ならヒジリ嬢にいつまでも我が家で過ごしていただきたいところですけれど、そうも行きませんでしょう? そこでヒジリ嬢の次なる滞在先を勝手ながら探させていただいたところ、ちょうど良いところがあったのです」


 ミランダさんの部屋へ行くと、そこにはいつになく真面目な顔の彼女が待っており、そんなことを話し始めました。

 ただのお別れの挨拶かと思っていた私は度肝を抜かれました。まさかミランダさんが私のこれからの心配をしてくれていたなんて。しかも、滞在先を見つけてくれていたなんて。


「こちらこそありがとうございます……! で、そこはどこなんですか?」


 思わず前傾姿勢になる私。

 ミランダさんは「そう焦らないでください」と笑い、何やら懐から手紙らしきものを取り出しました。


「これです。どうぞお読みになって」


 手渡されたその手紙の封筒に書かれていた文字を見て、私は息を呑みます。

 だってそれは――。


「ジュラー侯爵令嬢から、ですか?」


 学園長先生の娘さんであり学園のいじめ事件の時に手を貸してくれた人物。

 ナタリア・ジュラー侯爵令嬢からのものだったのです。

 面白い! 続きを読みたい! など思っていただけましたら、ブックマークや評価をしてくださると作者がとっても喜びます。

 ご意見ご感想、お待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ