176:その後のこと
そんなこんな色々……本当に色々とあり過ぎた卒業パーティーですが、それからは和やかに進み、終了することとなりました。
もちろん一部の令嬢・令息たちはこの後のことが気がかりでならないでしょうが……まあ、自業自得というものです。
半年以上続いた学園生活もこれで終わり。
そのことは非常に喜ばしいのですが、私が不安でならないのは今後の身の振り方が一体どうなるのかということでした。王城、各地の宿、そして学園寮とこの世界に来てから住むところを転々としている私ですが、少しは腰を落ち着けたいものです。
魔法大会の優勝で得られた賞金でも使ってどこかに家を構えるべきなのかも知れません。
「あ、そういえば。エマさんはご実家に帰るんですか?」
「うん。実家の商売を手伝わなくちゃだから、今日中にもモンデラグ男爵領に帰るつもり。サオトメ嬢と別れるのは惜しいけどね」
「そうですか。家に帰れるの、羨ましいな……」
ああ、私も早く家に帰りたい。
こんなわけのわからない場所に、いつまでいなければならないのでしょうか。
……でも、考えるだけ無駄ですね。辛くなるのですぐに思考を放棄しました。
「じゃあね、サオトメ嬢。またいつか会えることを楽しみにしてるよ」
「さようなら」
ドレスを引きずりながら、エマさんがパーティー会場を出て行きます。
彼女の他にもわらわらと参加者が帰っていって、最後はとうとう私とアルデートさん、セデルー公爵令嬢だけが残されました。
「お二人ともここでお別れ、ですね」
「そうだな。短い間ではあったが君といられて楽しかった。必要な時はいつでも俺を頼ってくれ」
口角を吊り上げ、ほんの少しだけ笑うアルデートさん。
イケメンの笑顔は破壊力抜群です。それだけで今までのしんみりした気持ちが吹き飛ぶようでした。
「そうさせてもらいます。――そしてミランダさんも、本当にありがとうございました。ご迷惑ばかりおかけしましたけど」
「そんなことありません。それにサオトメ様、お忘れになっていて? まだお別れの時ではございませんよ」
「というと?」
セデルー公爵令嬢の言葉に首を傾げる私でしたが……すぐに思い出しました。
『怪我人を癒すこともできますし毒を抜いたりもできます。それに私、お風呂が作れるんです。多分うまくやればそれなりに稼げると思います。
卒業後、私がミランダさんのお家に伺って聖女として無償で働かせていただきます』
かつて彼女との交渉の時、私はそんな大口を叩いたのでした。
それが交渉条件だったのをすっかり忘れていた自分が情けないです。
「セデルー公爵領へご招待いたします。ビューマン伯爵令息にはすでに支援金をいただいておりますから、サオトメ様お一人でいらしてくださいませ」
「わかりました」
せっかくならアルデートさんも一緒に、と言いたいところですが、彼には彼の都合があるでしょうから誘えません。
セデルー公爵令嬢であれば私に害をなすことはまずないでしょうから、大丈夫でしょう。私は頷き、しばらくはセデルー公爵領に滞在できそうだと思って内心ほくほく顔になりました。
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