175:下級令嬢たちからの謝罪
エムリオ様たちが去っても、卒業パーティーは続行されるようです。
タレンティド公爵令嬢が去った後、次に私たちの元へやって来たのはエマさんでした。
「サオトメ嬢、大丈夫だった!?」
「あぁ、エマさん。なんかお騒がせしてすみません」
「いやいやサオトメ嬢が謝ることじゃないでしょ。それにしても王太子殿下の婚約破棄騒動とか……これって歴史に残るレベルじゃない?」
「そうですね。一歩間違えば大事件でしたし」
「でも結果的に良かったのかも。サオトメ嬢、かっこ良かったよ!
それと、改めてごめんね」
「なんでエマさんが謝るんですか。もういいですよ、気にしてません。それよりエマさん、卒業しましたし色々なことが公になりましたから、これでもういじめられることはないと思います。お互い喜びましょう?」
「そうだね。サオトメ嬢のおかげだよ」
せっかくですしエマさんとも一緒にパーティーを楽しもう……そう思った矢先、私の周囲に恐る恐るといった様子でやって来た複数の人影が。
ああもう、一体何なのでしょう。しかもその人物の中にはダーシーさんもいますし。まさか最後の嫌がらせ?
と、思ったら。
「「「「「申し訳ございませんでした!」」」」」
などと、一斉に頭を下げて詫びてきたのです。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ダーシーさんをはじめとした、今まであらゆるいじめを行ってきた下級令嬢たち。
私に脅迫まがいのことをしてきた者、教科書を破いたり何なりしてきた者、エマさんのドレスを破いた者……。そんな彼女らが全てに絶望したような顔で謝罪してきました。
「私たちはとんでもないことをしてしまいました。聖女様を虐げるなど、女神様のお心に反する行いでしょう」とダーシーさんは言い、涙を流します。
おそらく、問題を起こした彼女らは謹慎なり何なり処罰は受けるでしょうし、おおかたは上からの圧力による不可抗力でいじめをしていたに違いありません。なのにこんな風にして謝罪されまくると逆に気まずいです。令嬢たちの数はどんどん増え、しまいには二十人ほどが私を取り囲む事態になっていました。
「ええと……皆さん、私は別に構いませんから落ち着いてください」
「謝罪のお手紙を送らせていただきたく」
「わたしはなんと愚かなことをしてしまったのでしょう。神に見捨てられ、王国を追放されても文句はございません」
「聖女様、正しき裁きを」「アッディムト侯爵家とフォン伯爵家、ユーラスア伯爵家の令嬢たちは許してはなりません」「すみませんでした」
口々に述べられる謝罪、そして他の令嬢たちへの糾弾。
名前を呼ばれたタレンティド公爵令嬢の取り巻きたちが悲鳴を上げたのが聞こえました。そういえば彼女らでしたね、私を川に突き落としたのは。さすがにあれは許せないので、少し多めに慰謝料を請求してもいいかも知れません。自ら謝罪する気は、ないようですしね。
「私はあなた方を許します。ご自分から謝罪をし、過去を悔いたからです。これは女神様のご意志です……多分」
女神の声が聞こえるわけでも何でもないので、完全なる気休めの言葉ですが。
心の底から彼女らを許せることは、ないと思います。でも罵詈雑言を吐くより、この方がいいでしょうから。
それでも令嬢たちは許されたことに安堵したようで、特にダーシーさんなどは気絶してしまったようです。どれだけ気を張り詰めていたんでしょう、彼女。とにかくこの場がこれ以上混乱するのは望ましくないので、アルデートさんに頼んで彼女らを追い払ってもらうことにしました。
「……今のサオトメ嬢、すっごく聖女っぽかった」
「耳心地のいいことを言っただけですけどね」
エマさんの感心したような呟きに、私は苦笑まじりに応えるのでした。
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