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174:断罪劇の幕引き

「……王太子殿下に対し強気に出られるなんて、さすがサオトメ様と言うべきでしょうね。ともかく、ご無事で本当に良かったです」


「でもすみません、せっかくセデルー公爵令嬢が協力してくれたのにそれを全部無駄にしちゃって。今までの証拠集めに奔走した日々は何だって思って今すっごくエムリオ様に腹が立ってるんですけど」


 セデルー公爵令嬢と合流した私は、小さく愚痴を漏らしていました。

 私たちがこの数ヶ月間、 どれだけ努力してきたと思っているのか。それを台無しにしたくせに、王子様だからというだけの理由で許されてもいいのか。でも直接本人に文句を言うわけにもいかず、やるせない気持ちが胸に募っていたのです。

 結局、タレンティド公爵令嬢の処分も有耶無耶になりそうですし……。


「仕方がありませんよ。王太子殿下なら証拠を集めるのは簡単だったのでしょう。そこまで考えが至らず、先を越された私の責任と言えます」


「いえいえ、そんなことは」


「何はともあれ片付いたから良かったじゃないか。セデルー公爵令嬢、改めて協力いただきありがとうございました。そしてご卒業おめでとうございます」


 アルデートさんが口を挟んできて、私はハッとなりました。

 そうでした。すっかり忘れていましたがここは卒業パーティーなのでした。まだ周りがガヤガヤとしてうるさいですが、せっかくのパーティーなのですから卒業を祝うべきでしょう。


「ビューマン令息、サオトメ様、ご卒業おめでとうございます」


「セデルー公爵令嬢もおめでとうございます」


「ありがとう」


 それから私たちは、今までの数ヶ月間を振り返りながら卒業式らしいことを話し合いました。

 その一方で断罪劇は『王子の暴走』という形で幕引きとなり、卒業生たちに謝罪がなされた後「忘れてくれ。このことは他言無用だ」というエムリオ様の言葉によって何事もなかったかのようになりました。このことを外部に漏らしたら消されるのでしょうか。王族の権力怖い。


 そして次はなんと私の前にタレンティド公爵令嬢が現れ、歓談に興じていた私とセデルー公爵令嬢の間に割って入ると、「今よろしいかしら」と言い出します。


「何ですか」


「――申し訳ございません。本日はあなた方にご迷惑をおかけいたしましたわ。

 セデルー公爵令嬢、アルデート、『裸の聖女』様、ご卒業おめでとうございます。

 エムリオの言う通りアタクシはやり過ぎたと思いますわ。もしも妃になってからこのような問題を起こしていればただでは済まなかったでしょう。その点はアタクシ、感謝しておりますの。

 後日きちんと場を設け、謝罪させていただきますわ」


「はぁ……。わかりました」


「それではアタクシ、エムリオと話さなければならないことがございますの。失礼致しますわ!」


 タレンティド公爵令嬢はそう言い残し、嵐のように走り去ります。そしてその後、彼女はエムリオ様と一緒に控え室へと消えて行きました。一体控え室で何をするのか……色々な妄想が膨らみますがそこは割愛。


「なんだったんでしょう……」


「彼女なりの反省の意思だろう。王太子殿下に婚約破棄されて相当こたえたんだろう。一応許してやってほしい」


「あれで反省とか、普通なら許してもらえないレベルですよ」


 でもやはり許してしまう私は、甘過ぎるのでしょう。

 そう思いながら苦笑を漏らしたのでした。

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