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17:聖女修行、厳しすぎじゃありません?

「もう、ダメぇっ!」


 そう叫び、私は地面に勢いよく倒れ込みました。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ……あれからニニの指導で修行を続けること、三時間。

 私はこの世のものと思えないほどの苦行に耐えかね、今にも気絶してしまいそうなほど消耗してしまっていました。


 まず、魔力の『ま』の字も理解できていない私に課されたのは、体内の魔力を感じること。

 大きく呼吸を繰り返し、大気中の魔素を体に取り込むことで魔力の流れとやらを感じるそうです。一応やってみましたが、案の定というかちんぷんかんぷんでした。


「魔力を感じるまでは魔法を使うことはできないのでございます。わたしの場合、最初は意識せずにやったのでございますが……聖女様は異世界から渡来した方ということもあり、魔力には慣れていらっしゃらないのかも知れませんね」


 それからは地獄でした。


 ニニは私に魔力を認識させるため、体に強制的に魔法を流すという荒っぽい方法を取ることに決めたようです。それを聞いても理解できない私へ、彼女はなんと――掌から閃光を放ちました。


「うがぁっ」


 直後その鋭い光が私の全身を貫き、まるで感電したかのような激痛が走りました。

 私は呻くことしかできず、その場に崩れ落ちます。瞼の裏に火花が散りました。本気で死ぬかと思いましたよ。


「今の光魔法によって体内の魔力の流れが刺激されたことでございましょう。しかしどうやら、まだ足りないようです。お覚悟はよろしいですか?」


「ちょ――、うわああああ!?」


 また、電流。今度は一度目より強い衝撃が体を駆け回り、一瞬意識が飛びます。かと思えばまた同様に全身に痛みが襲いかかってきて、声を上げることすら叶いません。


 しかも、やっと一息吐き、何か文句を言ってやろうとすると、「深呼吸して魔力を感じるのでございます」と厳しい声が飛んで来るのです。何せ相手は私の二倍も身長のある大女、怖くて逆らえず私はガタガタ震えました。

 ――何ですかこの罰ゲーム。死刑囚にでもなったような気分なんですが。


 もう一度深呼吸して念じてみましたが、体の中に蠢く虫のようなものを感じるだけで、魔法は出ません。

 するとニニが「もう少しでございますね」と笑い、その笑顔のままで私にまた光魔法を無理矢理流し込むのでした。


 体内で蠢く虫、失敗する魔法、電流。その繰り返しがしばらく続きました。

 これは地獄です。地獄以外の何者でもありません。苦しいと叫んでもやめてと喚いても、「もう少しでございます」とにこやかに言われ、雷の衝撃が降り注ぐばかり。

 しかもそんなに痛いのに怪我一つ負っていないのが悔しいところ。光魔法と言っても攻撃系ではなく、体内の魔力を活性化するためのものらしいです。よくはわからないのですが。


 そしてやっと、全身がぽわんと白く光り、何やら暖かなものが出た瞬間には――感動などという感情はどこにも残っていませんでした。

 こうして私は自分でもよくわからないままに、聖魔法という人生初の魔法を発動させていたのです。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「お疲れ様でございました。この目で直接聖女様のお力を見ることができるだなんて、わたしにはもったいないことでございます」


「…………」


 どうやら第一関門は突破した様子です。

 でも私は疲れ切ってしまっていて、ニニに言葉を返す力も残ってはいません。地面に倒れ伏したまま、露出しまくった全身の肌でチクチクした草の感触を味わっていました。


 聖女修行、ちょっと厳しすぎじゃありません? 心の中で文句を漏らしながら、私はこの先を憂鬱に思いました。もしもこんな苦行が毎日続くのだとしたら……私は耐えられるでしょうか。

 私はただの高校生なのに。どうしてこんな痛いことを体験しなくてはならないのか。理不尽さに涙が出ます。


 ああ、早く帰りたい……。

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