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168/239

168:卒業パーティーにて

 ドレスでパーティーなんて生まれて初めてです。

 薄青の少しぶかぶかなドレスを纏った私は、エマさんと一緒に会場を歩き回っていました。


 聖女と成金男爵令嬢が魔法大会にて優勝した。

 卒業パーティーはその話題で持ちきりで、卒業パーティーらしい今までの何年間かを懐かしむという話題はあまり聞こえてきません。皆が皆そんなに私たちが勝ったことをやいのやいの言いたいのでしょうか? どうやら賛否両論あるようで、公爵令嬢派と聖女派が対立している様子も見受けられました。


 が、そんなことはどうでもいいのです。

 魔法大会なんて私にとってはおまけ。今から行うことの方が大事なのですから。

 そのために私が探しているのは、セデルー公爵令嬢とアルデートさんです。広いパーティー会場を散々探し回って、やっとセデルー公爵令嬢を見つけました。


「セデルー公爵令嬢!」


「あら、サオトメ様。ドレス、とってもお似合いですよ。それに隣の彼女はモンデラグ男爵令嬢ですか。ごきげんよう。魔法大会の優勝おめでとうございます」


「ありがとうございます」

「セデルー公爵令嬢にお祝いいただけて嬉しい限りです。セデルー公爵令嬢の戦いっぷりも素敵でした」


「本当はもう少し話していたいのですが、私はサオトメ様と少しやらねばならないことがあるのです。モンデラグ男爵令嬢、サオトメ様をお借りしても?」


「別にあたしのものじゃないので、遠慮なくどうぞ」


「ではサオトメ様、参りましょうか」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 アルデートさんは大勢の令嬢に囲まれていました。


「ビューマン伯爵令息、わたくしと婚約してくださいませ」

「私と」「いいえ、わたしが」「ビューマン令息」


 どうやらプロポーズを受けている様子です。アルデートさんが女性と絡んでいるところを見たことがないので、失礼な言い方ではありますがそんなにモテていることが意外でした。


「でも確かにイケメンですもんね、アルデートさん」


「彼を選ぶ令嬢は物好きだと思いますよ。彼、口が悪いですし全然紳士然としていませんもの」


「そうですか? 私は普通に魅力がある人だと思いますけど」


 でも今はそんなことを言っている場合ではありません。早く令嬢たちの輪から引きずり出してタレンティド公爵令嬢を呼び寄せてもらい、それから――。


 などと考えていた、その時でした。


「ヒジリ」


「……え?」


 背後からぎゅっと私の腕を掴む手が。

 驚いて振り返ると、そこ立っていたのは燃えるような赤髪の青年――エムリオ様でした。


 どうして彼が今ここに?

 とてつもなく嫌な予感がします。しかし私が行動を起こす前に、彼は言いました。


「やっと見つけた。実は付き合ってほしいことがあるんだ。来てほしい」


「ちょ、ちょっと」


「王太子殿下、何をなさるのです。不敬を承知で申し上げますが未婚の女性に触れるなど――」


「わかっている。キミはセデルー公爵令嬢だね。ボクは今、キミの口出しを求めていない」


 セデルー公爵令嬢にそう言った時のエムリオ様の目は、いつになく冷ややかでした。

 この人、こんな一面もあるんですね……と呑気な感想を抱いた私。しかし次の瞬間には腕を強く引かれ、エムリオ様について行かざるを得なくなります。


 ああ、ものすごく嫌な予感がします。

 そういう予感は大抵的中するものです。というかしなかった例を知りません。


 私の腕をがっしりと抱えたエムリオ様が向かったのは、ホールの中央。

 そして、予定になかった最悪のショーが始まるのです――。

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