164:卒業へ向けての準備②
魔法大会のため、私とエマさんは魔法の修練を重ねました。
エマさんの風魔法、そして私の聖魔法をうまく融合させ、最大級に放出する。これがなかなかに加減が難しいのです。
放課後、アルデートさんたちと過ごす時間を削って、誰もいなくなった教室でただひたすらに魔法を連発し続けます。
以前までならきっと私は魔力の使い過ぎでぶっ倒れていたでしょうが、最近は慣れていたのでその心配もありません。ただし帰りはフラフラになるのでエマさんに背負われながら寮に戻らなければなりませんでしたが。
「……融合魔法を放った後は、あたしが一人目の周囲にウィンド・カッターを展開させて動きを封じておいて、その間にサオトメ嬢はこの聖魔法と風魔法を合わせたのを二人目にぶつける。これでいいね?」
「はい。これで準備はバッチリ。私たち敵なしですね!」
「そうだね。……参加できればの話だけど」
「どういうことですか?」
魔法大会は卒業式の日に開かれるわけで、何か大事件でも起こらない限り参加できないなんて事態にならないはずなのですが。
首を傾げる私に、エマさんは言いました。
「あたし、出られないかも知れないんだ」
「どうしてです?」
「魔法大会のための戦闘用ドレスと卒業式用に買ってたパーティードレスが今朝行方不明になっちゃって。モンデラグ男爵領は結構遠いところにあるから卒業式までに代わりのものが届かないかも知れないんだよね。かと言ってドレスを借りられるような相手もいないし。せっかくここまで練習したのに出られないかも知れないなんてごめんね。……本当に色々ごめんね、サオトメ嬢」
苦笑するエマさん。私は彼女の悔しげな表情を見て、わかってしまいました。
エマさんはドレスを紛失したんじゃない。何者かに破られるなり何なりしたのだと。
「ついて来てください」
「……サオトメ嬢?」
「戦闘用の方はわかりませんがパーティードレスなら頼めるあてがあります。セデルー公爵令嬢です。今から行きましょう」
「え、ちょっと待って」
「いいですから早く!」
なぜ、卒業準備に忙しいこの時期までつまらないいじめをしようとするのでしょう、公爵令嬢派は。
わかりません。わかりませんが、エマさんまで被害を受けているのだとすれば黙ってはいられません。セデルー公爵令嬢にエマさん用のドレスを貸してもらう話をつけた後は、彼女と一緒にとある人物から話を聞かねばならないでしょう。
ピンケル子爵令嬢、ダーシーさんに。
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