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162:愛しい人を選び、大切な人を捨てる覚悟 ――エムリオ視点――

 ボクにとってセルロッティ・タレンティドという少女は何よりも大切だった。

 幼い頃からずっと共にあって。もちろんボクは王族、彼女は公爵令嬢だから立場上そこまで親しくはできなかったけれど、それでも家族同然……いや、それ以上に思っていた。


 しかしボクには彼女よりも愛しい人ができてしまった。

 もちろんこれがいけないことだというのは理解しているし、ロッティの嫉妬は正しいものなのかも知れない。


 だが、ヒジリがロッティに詰め寄られ、何やら罵られているのを聞いてしまっては、ボクはもう耐えられない。

 愛する人を選び、大切な人を捨てる覚悟――それがボクには必要だと悟った。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ボクは王子ではあるが、一人の騎士でもある。

 王侯貴族の男児は皆、騎士試験を受ける。ボクはロッティの土魔法で身体強化を日々受けていたおかげで余裕で合格することができた。

 ロッティを守るための力だと思っていた。でもこれからは違う、ボクの愛しい人……そしてこの世界を救うであろう聖女サオトメ・ヒジリを守るために力を使う。ボクは彼女の騎士になりたい。


 そのためには王子という身分を捨てなければならないだろう。

 幸い、妹のレーナはしっかりしている。彼女に王位を継がせることも可能だし、どうしても彼女が嫌がった場合や反対が強い場合などは今から教育を受けさせて弟のジョンを王太子にすればいい。十年もあれば立派な王太子になる。

 父である陛下はまだ若いから数十年はもつだろう。ボクが抜けたところで大した問題はないはずだ。


 だが厄介なことに自分で言うのもあれだがボクは優秀だ。願い出たところで廃嫡されるとは考えにくい。

 何か問題を起こさなければ――そう考えた時に真っ先に思いついたのは、ロッティとの婚約を大々的に破棄することだった。


 この婚約は王命だ。

 王命に背く、それすなわち叛逆と同意。さすがにそんなことをすればボクは王族でいられない。しかも公衆の面前でやればそれは覆しようのない話になる。

 公衆の面前、となると間近に迫った卒業パーティーの時が最適だろう。


 そこでボクはロッティの罪を暴き、一方的に断罪する。そして陛下に叱られつつ廃嫡、聖女の騎士となろう。


 ヒジリを守り、同時にボクのこの想いを叶えるにはこの筋書きしかない。

 ロッティには本当に悪いと思う。そもそもボクがヒジリに心を奪われたから、彼女はこんな暴挙に出たのだ。そう思うと胸が苦しくなった。


 しかしボクは必ずやり遂げてみせる。

 ロッティはきっと、年の近い公爵令息やらなんなら隣国の皇太子にでも嫁げるはずだ。ロッティは頭がいいし態度はキツいが実は可愛いから、嫁いだ先で溺愛でも何でもされるのだろう。心配することは何もない。一時的にでもロッティを傷つける以外は。


 ――ヒジリ、ロッティ、どこまでも身勝手で愚かなボクをどうか許してくれ。


 ボクは愛しい少女と大切だった少女に心の中で謝りながら、早速作戦を実行すべく計画を立て始めた。

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