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154:聖女たり得る器なのかを判断させていただきますの ――ナタリア視点――

 スピダパム王立学園にご入学なさった聖女、サオトメ・ヒジリ様。

 彼女の評判は初めてこそ悪くはありませんでしたけれど、次第に悪評が目立つようになってきましたの。


 王太子殿下に対して媚を売っているだとか、タレンティド公爵令嬢に敵対なさっているだとか。

 王太子殿下にもタレンティド公爵令嬢ともこれといって深い関係のない(わたくし)にとっては正直興味のないことでしたけれど、噂を聞けば聞くほど聖女様が孤立しているご様子で心配ではありました。しかし同じ三年生とは言えどクラスは別。なかなか接触する機会が掴めず、聖女様の噂を徹底的に収集しながら時を待っておりましたの。


 その中でわかったのは、聖女様が虐げられているという事実。

 貴族としては当然の行動かも知れません。好ましくない者は排除する。ここはそういう世界ですもの。

 しかし異邦人である聖女様にそれを求めるのは酷というものでしょう。さらに聖女様が受けている仕打ちを聞けばやり過ぎだということはすぐにわかりましたの。


 王国民として、聖女様を守って差し上げたい。

 そう思いましましたけれど(わたくし)にできることなど多くはございませんの。何せタレンティド公爵家と対立するようなことがあってはいけませんし、(わたくし)の父は学園長。立場を考えなければならないですもの。


 そうして遠目から見ていた(わたくし)でしたけれど、聖女様の状況は日に日に悪くなるばかり。さらには学園が公爵令嬢派と聖女派に割れ、くだらない争いを始めてしまいましたの。

 これはさすがに放任できないが打つ手がない。そう言って頭を抱える父にどう助言していいものやら、(わたくし)はわかりませんでした。

 そんな中で(わたくし)が知り得た情報がありましたの。それは、この学園で出会い、数ヶ月前より親しくさせていただいくようになったポルルク伯爵令嬢のメリ様がおっしゃっていたお話でした。


「ミランダ様が聖女様にお力添えをなさっているようです」


「セデルー公爵令嬢が、ですの?」


 セデルー公爵令嬢ミランダ様とは数度お話しさせていただく機会がございました。

 彼女自身の立ち振る舞いも、そして周囲からの評判も非常にいい、少し活発なところはあるようですが申し分ない淑女でしたの。

 決してご自身のお立場がわからないような方ではございません。彼女が、明らかに不利である聖女様に手を貸した。ポルルク伯爵家の件を条件に手を結んだのでしょうが、それにしたとしても多少は利があると判断した故の結果なのでしょう。

 セデルー公爵家さえも味方につけられる聖女様。(わたくし)はもしかすると彼女を見くびっていたかも知れない、と思い直しましたの。タレンティド公爵令嬢に好き放題させるだけではなく、きちんと報復の機会を見ている。そのような方であれば、(わたくし)も協力する価値があるかも知れませんの。


「こうなれば、直接お会いするしかございませんの。聖女様をお選びになった女神様に対して不敬かも知れませんが、サオトメ・ヒジリ様が真に聖女たり得る器なのかを判断させていただきますの」


 卒業式の迫る春のある日、(わたくし)は意を決し、ビューマン伯爵令息と何やら話していらっしゃった聖女様に声をかけ、放課後にお話しすることを約束いたしましたの。

 (わたくし)、人を見る目はある方だと自覚しておりますの。噂は情報にはなりますけれど、真実はこの目で見なければわかりません。そして真実サオトメ・ヒジリ様が聖女であるとしたならば――(わたくし)は多少のふりを承知の上、協力しようと考えております。

 もちろん聖女たり得る方でなかった場合は軽くお話ししてからすぐにお別れするつもりですけれど。


 ああ、今から聖女様とお話しするのが楽しみですの。

 (わたくし)は午後の授業を手早く済ませ、約束の場所へと向かって歩き出しましたの。

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