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152:戻ってきた日常と、セルロッティさんの動き

 例の事件はアルデートさんの計らいで伏せられ、ひとまずはただの事故ということになりました。

 私は川で溺れたせいであれから少し体調を崩して数日間ベッドの上の住人となり、小説も漫画もゲームも何もない中でただぼぅっとしていなければなりませんでした。


 その中で支えになったのは、外の情報を話してくれるアルデートさんの存在だったでしょう。

 私が魔獣を駆り尽くしてしまったので代わりに一対一の魔法バトルという方法で野外授業が行われていたことだったりとか、主要な令嬢令息の動きなどを教えてくれました。


「タレンティド公爵令嬢はあれ以来なりを潜めている。彼女に遣わせられたかどうかは知らないが、ここへやって来ようとしているのは伯爵家以下の令嬢や令息だな。もちろん召喚魔法の応用で追い返してはいるがとにかく執拗い。それとここ数日、俺への風当たりがさらに強くなった」


「すみません、なんというか……」


「別に君が全面的に悪いわけじゃないだろう」


「全面的ってことは私の一部悪いってことですよね」


「半分くらいはな。だがまあ、だからと言って川に突き落とされるような重罪でもない。相手は少しやり過ぎだ」


 そんな風に話しながら日々を過ごし、やがて、メンディ辺境伯領を離れる日がやって来ました。

 ゾロゾロと辺境伯領を後にする馬車の群れ。そしてその頃になってようやく体力が戻ってきた私も、アルデートさんの馬車に乗って学園に向かうため出発したのでした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 学園に着き、女子寮で荷物――と言ってもほぼ何もないのですが――を下ろせば、元の日常が戻ってきます。

 しかしこれまでと違うのは、ダーシーさんがはっきり敵になったこと。彼女と私の関係はさらに険悪になり、それを肌で感じ取ったエマさんやイルゼさん、ペリーヌさんはさらに居心地悪そうな顔をしていました。

 互いに不干渉、必要以上のことは話さない。


 そんな無味乾燥な毎日。しかしそれが終わるのももうすぐです。

 卒業式までには全てが終わるのですから。



 ところでセルロッティさんの方で動きに変化がありました。

 以前よりさらに私と絡むようになってきたのです。アルデートさんが私の傍にいることが多くなってから控えていたようでしたが、あの一件以来遠慮がいらなくなったのでしょう。大々的に私を貶めることを言ったり、アルデートさんを上から目線で貶したり。

 はたまた、「あなたが女神様に選ばれし聖女なはずがありませんわ!」と喧嘩を売ってきて、決闘を申し込んでくるという始末。学園で血生臭いことは良くないと話を聞きつけた学園長のジュラー侯爵様が無理矢理止めていなければ、きっと今頃学園は半壊していたことでしょう。


 それと反対に、取り巻き令嬢が私を襲うことはあれ以来ありません。

 私が生きていたことに驚き、自分達が告発されるのを恐れて大人しくしているのかも知れません。なら最初からやらなければいいのに、と思うのですが、彼女たちの内心はよくわかりませんでした。


「……ともかくサオトメ様を暗殺しようとしたことは事実でしょう。徹底的に罰さねばなりませんね」


「ただし人死は見たくないので、せいぜい停学処分程度になるようお願いしますね」


 私が害されたと聞いて怒り心頭なミランダさんに、私はやんわりとそう言います。

 しかし彼女は「そうも言っていられません」と言って毎日証拠集めに奔走していました。


 私は正しい結末を望みます。

 罰されるべきは罰せられなければなりませんが、それ以上は必要ないと思うのです。

 お人好しだと言われればその通りでしかないのですけれど。

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