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145:メンディ辺境伯領

 メンディ辺境伯領は王国の最西端にあり、西側の隣国であるメーデス共和国との国境を警備するという役割を持った貴族家なのだそうです。

 王国の騎士たちとは別に独自の兵団があったりもして、彼らは国境警備の他に魔獣退治を行うとのこと。メンディ辺境伯領はスピダパム王国で最も魔獣の出現率が多い土地で、大小に関わらず見かけない日はないのだとか。


 アルデートさんから「これくらいは知っておくといい」と言われて教えられた内容が上のものでした。

 辺境伯、というだけあって国境に接しているのはある程度予想していましたが、まさか魔獣が出るだなんて。となると、魔法の野外授業は間違いなくそれを倒すことになりそうです。ああ、魔力切れを起こさないか心配です。


 しかし心配していても仕方がありません。あっという間に馬車旅は三日目を迎え、目的のメンディ辺境伯寮に着いてしまったのですから。

 私たちの馬車は一番乗りではなく、すでに多くの馬車が到着している様子です。こんな大勢の馬車をどこが受け入れるのかと思っていましたがどうやらこれから拠点となるのはメンディ辺境伯邸のようです。城と見紛うほど……いいえ、むしろこちらの方が大きいんじゃないかというほどの邸宅で、ポツンと建っているその姿は『孤島の城』という感じがしました。


「なんだか王城よりもずっと古そうですね……。すごい」


「王城は改修工事が行われているがこちらは随分古くからこのままだからな。ほら、まずはメンディ辺境伯に挨拶しに行くぞ」


「え、先生と合流する方が先じゃないんですか」


「俺たち……と言っても君は平民だが、まあ貴族として挨拶をするのは当然だからな。辺境伯は伯爵家よりも身分が上。一応聖女の君よりは身分が低くはあるが、相手の出方がわからない以上、慎重に行った方がいい」


「わかりました」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「私はボブ・メンディ。メンディ辺境伯家当主だ。君ら、学園生かね。よくぞ遥々こんな辺境まで来てくれた! 可愛いお嬢さんを見られて嬉しいぞ!」


「は、はぁ。それは良かったです」


 向かった先、辺境伯の執務室にいたのは、熊のようなガタイのいい若い男性でした。

 とってつけたようなスーツの似合わないこと似合わないこと。そしてガハハと笑う大きな声に私は思わず萎縮してしまいます。正直なところあまり得意なタイプの人じゃなさそうです。

 でも、挨拶はしておかなければならないでしょう。


「私は、早乙女聖です。そして彼がビューマン伯爵家の――」


「アルデート・ビューマンです。お久しぶりですメンディ辺境伯殿」


「おお! ビューマン令息。確か三年前以来だったか。随分立派になられた」


「そんなことありませんよ」


 それからしばらくアルデートさんと辺境伯様はお話しした後、何事もなく別れ、執務室を出ていくことができました。きちんとした滞在許可も得られましたしこれで一安心、なのですが。


「アルデートさん、三年前って何を指してるんですか」


「いや、少し彼の花嫁選びを手伝っただけで大したことではない」


「それ、全然大したことあるんですが。というか、婚約者選びってよそ者が口出ししていいものなんですか。政略とか力関係とか色々面倒なことがあるんじゃ?」


「辺境伯は政治から遠い立場だからな。色々あるんだ」


「へぇ……」


 それにしてもアルデートさんって案の定、厄介事に首を突っ込むタイプなんですね。

 私も大概のようですが、アルデートさんもかなりのお人好しのようです。


「それはともかく……次は先生と他の生徒たちと合流しますか」


「いよいよ魔法講義だな。一体どんな事件が起こるやらだ」


 どちらからともなくため息を吐き、私たちは他の生徒たちと合流すべく歩き出しました。

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