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143:公爵令嬢派と聖女派と

 ミランダさんと協力したおかげでしょうか。それとも生徒たちが私の傷を見かけることが多くなったためでしょうか。

 アルデートさんたちと手を組んでから数週間ほど経った頃には、学園には二つの派閥ができていました。


 一つは公爵令嬢派。言うまでもなくセルロッティさんの取り巻き、もはや盲信者と言ってもいい人たちや、彼女に憧れている女子生徒たちなど多数です。

 しかしもう一つは聖女派でした。こちらは身分の低い貴族、または二年生に多いように思います。

 ここ最近などは公爵令嬢派と聖女派で対立している光景を見かけることが増え、私のいる上級生下等クラスなどでも私をダシにしてよく言い争っていました。


「いかにタレンティド公爵令嬢であろうとも、聖女様を直接的に傷つけるなど許されることではないわ」

「それはこの悪女が悪いのでしょう。タレンティド公爵令嬢は女神のような人です。そも、彼女の婚約者である王太子殿下をたぶらかしたのはどこのどなたでしたか?」


 どちらも正論。だからこそぶつかり合っています。

 私の後ろの席のエマさんはかなり気まずそうにしていました。彼女はきっと公爵令嬢派にも聖女派にも入れないのでしょう。どちらも庇護するようなことを言っては、両方の派閥からなじられているようになり、彼女もどんどん孤立していっているのです。


 けれど私が彼女を守ることはできません。だって私は聖女。誰の味方をしても問題になるに違いありませんから。

 全てが終わった後に謝らなきゃなと私は思ったのでした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 いくら情勢が不安定だったとしても、表面上は何事もないかのように日々は過ぎていきます。

 秋が終わって冬が始まり、深まっていって、そのまま春――卒業の季節へと。


 ミランダさんが決定的な証拠を掴むのにはもう少し時間がかかる様子で、セルロッティさんをどうにかすることはまだできていません。

 このままでは卒業し、有耶無耶になってしまう。それだけは避けなければならないと私たちは焦りを感じ始めていました。


「今の状態では貴族が公爵家派と聖女派に二分されたままになりかねません。来たるべき『災厄』を前に内乱が起きるようなことがあってはこの国は容易く滅びるでしょう」

「そうなると聖女を呼び出した意味がなくなる。その前に、なんとかしなきゃな……」


 貴族たちの思惑が絡み合う学園は、まさに戦場。

 私たちはその戦争をなるべく平和的な方法で収めなければならない。そのための猶予は、日に日に少なくなっているのです。


 本当はただじっと耐え忍ぶつもりでした。それが私にできる唯一のことだったから。

 でももうそんな悠長なことを言っていられないのは三人ともわかっています。


「事態を動かすためには、何か重大なイベントでも起きないとですよね」


 たとえば衆人環視の中で階段から突き落とされる、とか。

 でもセルロッティさんがそんな大っぴらなことをするように思えません。

 どうしたものかと私がほとんど一日中頭を悩ませていた、そんなある日のことです。


「……今度、野外授業があります」


 まるで私の希望を聞き入れてくれたかのような絶好過ぎるタイミングで、クラス担任であるベッキー先生がそんなことを言い出したのは。

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