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142:ミランダさんの友人たち

 アルデートさんに散々心配されながら一緒に向かったのは、ミランダさんのいるであろうテラスです。

 今はちょうど昼時なので人がたくさんいるおかげで、私が近づいてもそこまで目立ちません。と言っても好奇の目線で見つめてくる人物は少なからずいましたからアルデートさんに彼女らの目を逸らしてもらうよう頼み、私はミランダさんを探します。


 そしてすぐに見つけました。特徴的な緑色の髪の美少女、間違いなくミランダさんです。

 彼女の周囲には友人だろうと思われる二人の女子生徒がいます。どちらもおそらく二年生でしょう。私と面識はありません。

 ですが私は構わず声をかけました。


「ミランダさん、こんにちは。ちょっといいですか?」


「あらサオトメ様ですか。ごきげんよう。……これはその、ひどくやられましたね」


 私の方を振り向いたミランダさんがサッと顔を青くしながら放った言葉がそれでした。

 彼女のトパーズ色の瞳が見開かれ、わかりやすく驚愕しているようです。周囲の名も知らぬ令嬢がざわざわ言い出しました。

 そうですよね。貴族のお嬢様ともなれば血が怖いのかも知れません。私だって血はあまり得意な方じゃありませんし、いきなりは刺激がきつ過ぎたと反省します。


「ええと、初めまして。あなたのお怪我も心配なのですけど、お名前をお伺いしても? もしかしてミランダ様のお知り合いですの?」


「はい。私、サオトメ・ヒジリです。一応、この国に異世界から召喚された聖女です。とはいえこの学園では悪評まみれですけどね」


 私が名乗った途端、質問してきたミランダさんの友人の片方が少し気まずそうな顔をしました。

 多分二年生にも私の噂は広まっているのでしょう。別に今更こんな態度をされても気にしませんが。


「そうだったのですね。そうとは知らず、失礼をしました。

 わたしはポルルク伯爵家が長女、メリ・ポルルクですわ。どうぞお見知り置きを」


「私からもご挨拶をさせていただきますね。

 私はアリス・ロリータと申します。ロリータ伯爵家の娘です。聖女様のお姿をこうして直接拝めるなんて夢のようです。実は聖女様がご入学される前からお会いしたいと思っていたのですよ。まさかナタリアより早くお会いできるとは思ってもみませんでした。後で自慢しなくては……」


 彼女らが内心で私のことをどう思っているかはわかりませんが、とりあえずは敵対的ではないようで一安心です。それどころか友好的なのは少し意外でしたが。

 セルロッティさんの取り巻きだったら面と向かって悪口を言ってきますからね。類は友を呼ぶというやつでしょうか。まともなミランダさんの友人である彼女らはまともなようです。

 ともかく、


「こちらこそです。それで本題なんですけど、ミランダさん、これって証拠として使えますよね?」


「これ? ――あぁ、それですか。ええもちろん。私だけではなくメリ嬢もアリス嬢もあなたが傷ついたことは保証できます。ビューマン伯爵令息は?」


「ちゃんと見てくれていました」


「なら、信憑性は増すでしょうね。そうそう、私の方でも既に証拠をいくつか掴んでいるのです。もう少しすれば必要なものは揃うかと」


「そうですか。ありがとうございます」


 作戦はなかなかうまくいっているようで何よりです。

 それを確かめ合っていると、きょとんとしながら私たちの話を聞いいていたメリさんが口を挟んできました。


「ミランダ様、それが例の賭けなんですのね?」


 どうやら彼女、ミランダさんからある程度話を聞かされている様子。

 どうして部外者に教えるのかと思い、私はようやく気がつきました。メリさんの実家であるポルルク伯爵家が、ミランダさんが交渉に乗った理由に他ならないということに。


「ポルルク伯爵家って、あのポルルク伯爵家なんですか。ということはメリさんのお兄さんか弟さんがミランダさんの想い人ってことです?」


「……! サオトメ様、あまりそのお話は外に持ち出さないでください。メリ嬢も、アリス嬢がいらっしゃることをお忘れですか」


「一体どういうことなのですか? そのお話、内緒にしないでぜひ聞かせてくださいませ」


 想い人の話を持ち出されたせいなのか真っ赤になるミランダさん、首を傾げるメリさん、興味津々なアリスさん。

 私の一言のせいで一気にカオスになってしまいましたね……。


 仕方ないのでそれからしばらく雑談という名のミランダさんを中心とした恋バナをし、なんとか作戦の話を誤魔化しました。

 人と話していて楽しいと思ったのは久しぶりです。彼女たちとぜひ友達になりたいものです。


 そのためにも一刻も早くセルロッティさんの問題を片付けねばなりません。

「体を張ってもっと頑張らないと」と、気合いを入れ直す私なのでした。

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