139:三人の作戦会議
ミランダさんとの交渉から、丸一日が経ちました。
その間にも色々嫌がらせは受けましたが、あまり心が痛まなかったのはおそらくアルデートさんのおかげでしょう。
慰められるとすぐに元気になる。改めて私の単純さを知り、思わず苦笑してしまいましたが。
――そして夕方、三人ぼっちの空き教室にて。
「父に確認をとったところ、「了解した」との返事がありました。ただし表向きにはタレンティド公爵家と対立しないという条件付きではありますが。……それでよろしいですか、聖女様?」
「もちろんです。
本来無関係なミランダさんを巻き込んでしまって、本当に申し訳ないと思ってます。私もこれを大事にするつもりはないです。できる限り、協力してください」
「よろしくお願いしますね、聖女サオトメ様、そしてビューマン伯爵令息」
こうして私たちは一応ではありますが、仲間になったというわけです。
そして今から始めるのは、三人ぼっちの作戦会議。ズバリ、セルロッティさんをギャフンと言わせるため、これからどうやって動くかということを話し合わねばなりません。
「まずお訊きしたいのは、タレンティド嬢をどうしたいのかということ。徹底的に潰すのであれば、こちらも本気を出すべきでしょう。密偵を雇わせ、調べさせます。それでも我がセデルー公爵家とタレンティド公爵家ではあまりにも格が違いますから、難しいでしょうが」
「いえ、そこまでやるつもりはないんです。第一セルロッティさんってエムリオ様のお妃になるんでしょう。そんな人がいなくなったら、困るじゃないですか」
「サオトメ様がお妃になりたいのではなくて?」
首を傾げるミランダさんに答えたのはアルデートさんです。
「彼女にはどうやっても無理でしょう。王妃になるには素養が必要だ。そして彼女はそれを持ち合わせていない」
「そういうことなら、公爵家ごと没落させる計画はなしとしましょう。うっかり私が殿下の婚約者にでも選ばれるのは嫌ですし……。
なら、サオトメ様を虐げた証拠を掴んで、学園長に提出の上、謹慎処分程度が妥当でしょうか。多少の汚名ということで済みますし、何よりサオトメ様にとって脅威が失せるわけですしね」
「そうしてくださるとありがたいです」
「退学処分にならないといいが」
「そこは大丈夫でしょう。そもそも非があるのは王太子殿下ですし。婚約者のいる身で、たとえ聖女様であろうとも近づくなどと正気の沙汰とは思えません。なんなら殿下も謹慎処分になるかも知れませんね」
「未来の国王夫妻が揃って謹慎処分とは……。この国の将来が不安になるな」
まあ、そもそもその前に厄災とやらが襲うらしいので、撃退できなければ滅びるんですけどね。
「ともかく、方針が決まれば後は役割分担です。権力があるといえ私はあなた方と違って二年生。そもそもタレンティド嬢との面識も少ないですし、情報収集は容易いとは言えません。あなた方にもできる限りのことをしていただかないと」
「もちろんです。でも私、人脈もないですし非力で……」
「そうですね。では聖女サオトメ様は、なるべく虐げられていてください。その証拠を私が確保していきます。ビューマン令息は、聖女サオトメ様をお護りなさい」
「え、でも俺、他の令息たちと違って騎士じゃないですよ?」
「存じています。それでも、聖女サオトメ様の身を護れるのはビューマン令息しかいないのですよ」
「…………わかりました。君はそれでいいか、サオトメ嬢?」
「はい、大丈夫です。それとぜひ聖って呼んでください。お二人とも、よろしくお願いします」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それから私たちは、他の細々としたことも決めていきました。
例えば、もしもエムリオ様が私に接触してきたらどう対応するかとか。ミランダさんやアルデートさんにまで危害が及んだ場合の話とか。
不安はあります。でもミランダさんの存在は非常に心強く、今ならセルロッティさんに対抗しても勝てるような気がしてきます。
「目指すは悪役令嬢断罪劇!ですね」
「『アクヤクレイジョウ』が何かはわかりませんが、頑張りましょう」
「俺もできるだけ力になろう」
これから共に戦っていく仲間として、私たちは固く握手を交わしたのでした。
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