表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/239

103:初めての魔法授業①

 逃げ出したくなる気持ちをなんとか堪えながら、わけのわからない授業に耐え忍んだ後。

 入学初日なので早めに終わるに違いないと思っていたのですが、そうは問屋が卸さないようで――。


「続いては魔法の実習授業となります」


 先生はそんなことを言い始めたのです。


 魔法の実習授業。

 その言葉を聞いて一番に思い出したのは、ニニに扱かれまくった日々のことでした。

 私、また気絶しなければならないんでしょうか……? こんな大勢の前で……?


 しかしそんな私の内心の声は誰にも届くことはなく、先生は授業内容を淡々と話し続けます。


「二人一組になって、属性を掛け合わせた『融合魔法』というものを発現させることを、本日の目標といたします。先ほどの授業で習った通り、融合魔法には魔術式が必要であり……」


 融合魔法というのを簡単に言うと、二人の人物が持つ魔法をくっつけて、より強大な力にしたもののことだそうです。

 水の魔法と火の魔法を合わせて霧を発生させたり、風属性と土属性の魔法を混ぜて砂埃を舞い上げたり、初心者レベルはその程度。上級者になると風の魔法と闇属性魔法などを掛け合わせて殺人に特化した風の刀を作り出すことができたりもするらしいのですが……それより一人で魔法を使った方が早いので基本的にそれらのことをしないのだとか。


 ともかく、


「魔法属性を考え、ペア決めを行ってくださいませ。それが終了し次第、魔法の融合を開始するように」


 そうして私の初めての魔法授業が始まったのでした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 魔法授業にあたって心配していたのは気絶してしまうかどうかだったのですが、現在、なぜかそれ以前に問題が起きてしまっています。


「私が聖女様と一緒にペアを組むんです」

「あなた、火属性でしょう? 相性が悪いわ。やはり水属性のわたしが水属性が一番聖女様に相応しいと思うの」

「俺、下等クラスの中では魔法が得意なんだぜ。聖女と組むにはもってこいだろうが」


 睨み合う女子生徒たち。その中に割り込んで声を荒げる男子生徒たち。

 聖女である私。そんな私とペアになりたがっている生徒はものすごく多いようで、視線で相手を牽制し合いながら言い争っています。

 教室の空気は張り詰め、非常に居心地が悪いです。先生はペア決めにあたって口を出さないつもりなのか、ずっと別の作業をしていました。


 ……さて、この状況をどうしたらいいのでしょう。


 困り果て、こうなったら恨まれるのを承知の上で適当な子を指名した方がいいかも知れないと考え始めていたその時、背後からポンと肩を叩かれました。

 驚いて振り向くと、そこにはストロベリーブロンドの髪にネイビーブルーの瞳の少女がいて、こちらに身を乗り出していたのです。


「ねぇサオトメ嬢、あたし、モンデラグ男爵家のエマっていうんだけど」


「……? あなたも私とペアを組みたいって言うんですか」


「まあ簡単に言っちゃえばそうかな。聖女様と仲良くなりたいなーって。それと魔法授業が苦手だから聖女様がいてくれれば大丈夫かなっていう考えもあるけど。ダメ?」


 少女――エマ・モンデラグと名乗る男爵令嬢が、ニコニコしながら首を傾げました。

 きっと彼女だって他の生徒と同じで多分に打算があるのでしょう。自分から積極的に声をかけてきたところを見て、それは間違いありません。

 でもこれ以上揉め事が続くと面倒臭いと思っていた私は、大して深く考えることなく頷きました。


「いいですよ。一緒に授業、やりましょう」


「ありがとう! 嬉しいっ。じゃあよろしくね、サオトメ嬢」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 エマさんが周囲から嫉妬の視線に貫かれたのは言うまでもありませんが、断じて私の責任ではないと言っておきましょう。

 貴族社会、怖いです。

 面白い! 続きを読みたい! など思っていただけましたら、ブックマークや評価をしてくださると作者がとっても喜びます。

 ご意見ご感想、お待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ