101:夏季休暇明け初日、新入生?現る
連載再開、第2章スタートです!
――スピダパム王立学園。
五百年ほど前からずっと湖の上に建ち続けている、歴史ある場所らしいです。
十三歳から十五歳までの貴族の子女が通い、社交界に出る前に交友関係を作ったり交流の仕方を学んだりし、魔法の授業も受けるのだとか。
「立派な紳士・淑女を育てるのがこの学校のモットーです。聖女様には関係ないことと思われるやも知れませんが、この世界で我々貴族と関わり合いながら生きるには必要なこともあるでしょう。『光の騎士』殿からは魔力制御のことをもう少し学ばせてほしいと伝えられております。
これにて説明を終了させていただきます。ご不明な点はありますかな?」
「じゃあ一つだけ。校則などはありますか?」
「人を過度に害さないこと。これ以外は特にございません。
まあ、破る生徒もかなりいるのですがね」
「わかりました。ありがとうございます」
学園について教えてくれた学園長先生――ジュラー侯爵様に、私は頭を下げました。
橋を渡って王立学園の建物に入るなり職員がやって来て学園長室に連れて来られ、話を聞かされたというのが今までの流れです。最初は何か怖いことをされるのではと不安になったりしましたが、何もないようで安心しました。
「何かあれば私の方で対応させていただくのでお知らせください。では聖女様、これからの貴女の学園生活が健やかなものになりますよう」
「はい」
私は頷くと、学園長室を後にして早速自分の教室だと教えられた場所に向かったのでした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
視線。視線視線視線。
無数の視線が、私に突き刺さっていました。男女なんて関係ありません。教室に足を踏み入れた瞬間、私は好奇の目に晒され、注目の的でした。
元の世界で通っていた高校ではいい意味でも悪い意味でも平々凡々の代表だったような私。しかしこの学園ではそうはいかなさそうだと悟り、ゲンナリしました。制服であれば良かったのに、こんな露出の多い格好じゃそりゃそうなりますよ……。
しかしそこへちょうど先生が入って来たことで、私から複数の視線が外れます。
私たちの教師となる人は、ヘーゼル色のひっつめ髪の若い女性。後で知ったところによると、とある子爵家の令嬢で、今は女性教諭としてこの学園で働くベッキー先生という方なのだそうです。
緩徐は教壇に立つと、綺麗にお辞儀……ではなく、カーテシーをしてから、話し始めました。
「皆様、おはようございます。
本日より夏季休暇が明け、新学期が開始いたします。
それでは……」
この国の挨拶はカーテシーなんですね。貴族階級といい、西洋的な文化なのでしょうか。
などとどうでもいいことを考えながら話を聞いていると、「――さて」と言ってベッキー先生が私の方を見、教壇に登るよう促して来ました。
いつの間にか話終えていたようです。
「聖女様、こちらへ」
正直言って嫌でしたがここで拒否するわけにもいかず、私は仕方なく彼女の言う通りにしました。
「自己紹介をお願いいたします」
やはり来ました。自己紹介イベント。
私、これ苦手なのですよね。中学生の頃、厨二病にどっぷり浸かっていた時に、入学初日に最高に恥ずかしい自己紹介をしてしまい、以来苦手意識が半端ないのです。
しかも今回は人が多い。多過ぎます。
でも、ここでやらなきゃ今後の生活に大きな差し障りが出るかも知れません。
負けるな私。しっかりしろ私!
「えっと。私は新入生?の早乙女聖です! 異世界から召喚されて連れて来られました、聖女です! 好きなものは可愛らしいもの、嫌いなのは理不尽なこの世界! よろしくお願いしますっ」
――ああ、これ失敗した時の反応ですね。
皆が気まずそうに顔を逸らすのを見つめ、私はどこか他人事のように思ったのでした。
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