再開前夕
最終回の布石を置いときます。
見ようによってはかなりキツい事書きます。
それから、どれぐらい経っただろう。詠利から進捗を聞かれた。偶然にも私がこの行動を宣言した場所だった。
「書けたか?」
硬い木製の台に肘を着き、射抜くような目で此方を見てくる。詠利の目は高校生の頃から全く変わっていない。上質な物を求め、その為に行動を起こす。例えその行動が倫理に反していても、恐らく彼女は躊躇わない。あくまでも、作品を求めることにかけては生粋だし、崇高だ。
今の状態、書けない状態で彼女と話をする事自体。非常に不味い。恐らく、静かに闘志を燃やすだろう。だから一瞥した後、黒板を眺めながら口にした。
「見えないんだ。世界が、だから書けもしない」
また、泣いていた。ぽたぽたと頬を伝い、無理に表情筋を動かそうとしても動かない。ただ視界が水で覆われていく。
小説を書くことだけが唯一の趣味だった。それしか取り柄がなかった。現実が苦しくても、空想があれば何とか生きていけた。だから空想が見ない今は、書けない状態の私は、もぬけの殻のような状態だった。
一つの、大きなため息が隣から聞こえてきた。顔を見なくても分かった。詠利が呆れているのだ。それから、私が悩み続けていた問をなげかけた。
「お前は、評価とか気にして趣味やってんのか?」
「え?」
思わず詠利を見る。双眸は特段怒りに満ちてはいない。ただ水面のように今、この瞬間を映し続けている。それに対して私は惚けた顔をして、口をあんぐりと開けた。
「ポイント欲しさに書いてんのかって聞いたんだ」
物分りの悪い生徒でも見るように、髪に指を入れてぐしゃぐしゃと掻き回す。意味が伝わっていない事に苛立っている。
最終回でも、ちょろっとこの考え方出ます。
ブクマも、ポイントも、いいねも、ご感想、レビューも、どれも「どうでも良い」なんて事無いんです。
でもその先にあるものを、今取り戻そうとしてます。