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詠利は冷徹な目をしていた。見下して軽蔑した目ではない。ただ真実を求め、心理を問う賢者の目だった。秋のひんやりとした風が頬を撫でる。それが私の悩みを僅かに柔らかくしてくれる。
「.......分かんない.......。温情に見合うだけのものを書いてる気がしない」
そして、全ての物事に通じる一つの疑問を投げかけた。ある意味哲学的、曖昧なものを極める為の問い。
「優しさのポイントと、こいつ嫌いだと思いながらも、純粋に作品に対してつけられたポイントって違うんかね.......」
「違わねぇわ。例えばだけど、道端で拾った百円と、苦労して稼いだ百円に違いなんかない。どちらの百円を使っても、買えるものは百円以下のものでしかない」
当たり前だ。この世界はそうやって出来ている。自分から見たらどれ程価値があるものだって、相手からしたらなんの意味もないものだってある。客観的な数字の事実こそが、万国の共通の言語。それは分かっている。分かっているのだが.......。出来れば私は心からのものが欲しい。読んだ後、心から満足して欲しい。
「そっか.......」
「でもそれはあくまでも他者からの視点だ。あたしは例えクソみたいな作家か書いたものだとしても、作品が良いなら全力で評価したい」
実直で精悍な目が私を射抜く。前の列がぞろぞろと移動する。バスが来たのだ。私達もその場を去った。
人様の権利に怯える作者なので、作品名は出しません。
でも
少女漫画の主人公であるケータイ小説家さんとか、
経験を元により現実味のある世界を描く漫画家さんとか、
全てをすり減らして作品に打ち込む先生とか、
本当に格好良いと思います。
性格も見かけも全て差し置いて、生き様が。
※全部分かったら同世代と認識します。特にケータイ小説。