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まだプロローグです。
数日間に渡り、プロローグがあります。
ガチで悩むのは、プロローグの後。
まずい、空想に浸り過ぎた。次、何の授業だっけ.......?
焦る私を見切ったように、お盆から飛び散ったコップを一纏めにしてくれる。はよ片付けて教室へ移動しろ、という事だろう。
「次は現文だよ」
「あーそうだ。ごめん。浸り過ぎた」
私は隣の椅子に乗ったリュックを背負うと、お盆を片手に移動を始めた。周りの生徒達も次の授業に向けて出口に向かっている。
私は声を掛けられた女子、詠利を見る。今日も長いロングヘアを一纏めにし、度の強い眼鏡を掛けている。表情に変化はない。無色彩が張り付いている。
「今回はどんな設定?」
詠利はちらりは私を一瞥すると、疑問を一つ投げかけた。
「うーん.......スチームパンクで、共依存。それから調律が好き」
「情報が飛びすぎて分からんわ」
今話しているのは次回作の構想中の小説について。作家がどのようにネタ出しをしているのかは不明である。でも私はふと視覚を遮った物を問答無用で鷲掴み、そのキーワードを箇条書きにする。それを使って文を構成していく。例えて言うならそう、ふわっとした大気を力技で圧縮し、塊を作る。そこから彫刻刀を使って思い描いた立体像を作るのに似ているかも知れない。
彼女はクスッと笑うと、渡り廊下に出る。秋の風は肌寒い。ひんやりとした空気が頬を撫でる。.
「私も分からん.......。でもこのまま行くと、世にある何かの小説と被る可能性があるから、もっとゴリゴリ掘り進めないと」
私達の会話は秋風に流されていく。
単語レベルで分解して、再構築しても、被る事があるんですよ。
しかも自分が書いたものよりも、圧倒的に質が良くて凝った作品。
結構へこみます。そんな事もあります。