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プロローグ:死刑執行

裏切り者-壱-の続編ですが、読んでなくても多分問題ありません。


前作からの登場人物


初代裏切り者。本名、阿羅銀 龍鬼。日本からの転移者。

世界を救うと同時に、指導者不在の戦国時代を作り上げた張本人。

二代目裏切り者とは親友関係。認識阻害の能力者。

なんやかんやあって死んだ。


レーヴェンス

ストックリー王国の聖戦士。銀と共に悪魔の軍勢と戦い生還した。

初代裏切られ者。今作での出番がメインかモブ扱いか定かで無い。

出番があるなら今作でも裏切られるし、これから先もずっと裏切られる。

なんやかんやあっても死なないけど、ひたすら裏切られる。多分。

 別に大したことをしたわけじゃないんだよ。

 適当に誘拐してきた男女五十人を全裸にして、ちょっとした大広間に押し込んだだけなんだ。

 あとは燻した麻薬を流し込んで、「みんなでいっぱいセックスしたら病気や怪我が治って、ありとあらゆる災いを退けられるよ」ってアナウンスもしたけど、最初の2回か3回くらいだけかな?


 何でそんなことをしたのかって?


 操れるのかなって思ったんだ。本当にクスリとセックスで人を操ることなんて出来るのかなって。

 バカげた話だよね。人を操るためにクスリとセックスを使うのはよくある手かも知れない。

 けれど、クスリとセックスだけじゃ操れるわけがないんだよ。


 なのに、あの時の僕は絶対にできるって思ってたんだ。

 五十人の男女を裸にして一カ所にまとめてクスリを流し込んで正気を失わせて、セックスするように誘導すればあとは簡単に操れるって。

 本当に操れてしまったから、どうしようもないね。


 でもね、みんな正気に返っちゃったんだよ。

 僕も、信者達も、何で僕たちはこんなことをしているんだろうって。


 その時だったかな。いなくなっちゃったんだよ。

 僕の親友。僕が大好きな龍鬼(ロキ)


 僕も、みんなも龍鬼(ロキ)がいなくなって慌てたものさ。

 不道徳も、不謹慎も、何も笑えなくなってしまったんだ。


 だからかな。何もかも台無しにしてみたくなったんだ。自暴自棄って言うのかな。

 信者たちも喜んで付き合ってくれたよ。

 自分が今まで取り返しの付かないことを喜んでやっていたことを思い出してしまっていたからかな。


 それで毒と堕落の坩堝の出来上がり。

 そう。始めは僕らの現実逃避だったんだ。


 元は50人しかいなかった信者も気付けば5000人。

 ちょっとした広間に押し込むってわけにはいかないから、ちょっとした広間の代わりにちょっとした村をね襲撃したんだ。

 そして、土地を奪った。するとね楽しくなってくるんだ。クスリとセックス。そして暴力。彼等は奪う愉しさを知ったわけだね。


 その時の僕かい?


 大まかな方針を出すだけで何もしてなかったんだ。

 麻薬の栽培も、乱交も、殺しも、盗みも、何もしていなかったんだ。

 僕だけが欲望の形が定まっていなかった。


 クスリとセックスで人を操るという一番最初の目的も、今になって思えば、それは僕の目的や望みだったのだろうか、なんてね。

 駄目なんだ。龍鬼(ロキ)がいなくなってからどうして良いのか分からなくなったんだ。

 元々、僕はどんな欲望を持っていたのか、何を望んでいたのか、何に愉悦を見出せるのか、どうしても思い出せない。


 取調や裁判で、これまでに僕がしてきたことを何度も聞かされた。

 だと言うのに現実感が無い。知ってはいるんだ。映画の登場人物を見ていたのと同じ感覚だ。

 僕がしたことを、僕の経験として捉えることが出来ない。どうしても他人事のように感じてしまう。


 本当に僕は、僕なのかな?


 教誨室でそんな事を語って、前室に通され、所長から死刑執行を言い渡された。

 手錠を嵌められ、目隠しをされた。カーテンが開く音がした。

 音がした方へと促された。十数歩ほど進むと足音が変わり、停止を命じられた。

 立ち止まると首に縄をかけられた。


 こうして、僕の死刑執行は恙無く完了した。

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