第15話 チャレンジ! 一年生
「イズミ」
「!? な、なんだムサシ起きてたのか?」
イズミは咄嗟にムサシのふんどしを背後に隠した。
しかしムサシは起きる様子もない。
布団にモゾモゾともぐるだけ。
「ムサシ……起きて……るのか?」
「イズミ……ヤエ……好き…………ぐぅ」
「寝言かよ」
イズミは胸をなでおろす。
危うく幼なじみの下着(?)を片手に気まずい関係になり、あまつさえヤエに殺されるかもと言うところを回避できたと安心した。
改めて布団から伸びるムサシの足を見るが、どうにも興奮はしなくなってしまっていた。
ムサシの「好き」は家族に向けるそれと同じで、イズミにしてもムサシは妹のように思っている。
だから、いくらイズミの顔が今にやけていても、ポケットの中のストッキングを履かそうなどと妄想していても、けっして妹のようなムサシに欲情などはしていないのだ。
「ち、違う。さすがにそれはヤバイだろ俺」
どうやらイズミは送り狼にはならずに済んだようだ。
送り狼どころか犯罪者だとも思うが、今回は送り狼と言葉を濁したい。
「しかし……このまま帰ると……」
イズミの脳内では、朝になりムサシがノーパンと気づきヤエに話す光景を想像した。
その後、ヤエにより自分がムサシを送ったと伝えられ、下着を脱がした疑いが自分にかかると言うよくない妄想。
イズミとしては変態扱いなど今更だが、さすがにご近所づきあいというものがある手前両親になんと言われるか……。
これは状況的によろしくない。
「……履かせるか」
イズミは意を決した。
ふんどしをムサシに履かせるふんどしチャレンジ。
目を薄く開き、なるべく見ないように心がけての挑戦。
意識を集中し、ムサシの布団の上下に自身の呼吸のタイミングを合わせる。
耳は微かな衣擦れの音さえ逃さなかった。
心臓の拍動の合間が一瞬のようにも、フランス映画のように緩慢にも感じた。
長い、永い時間を越えて気づけば空は明るくなっていた。
「……あさ?」
外から聞こえる小鳥のさえずりに、目をこすりながらムサシは目を覚ました。
いつもの眠たげな声だが、目覚めた彼女は布団にもたれかかり眠る幼なじみを見つける。
「……イズミ何してるの?」
「……おはよう」
「おはよー」
ムサシは嬉しそうに笑っているが、イズミは疲れ切った顔をしている。
ほとんど眠れていないのが伺えた。
「……あれ?」
ムサシは布団の中を覗き不思議そうな声を上げた。
「ふんどし……」
その一言にイズミは身を竦ませる。
まずい、うまく履かせたはずだがバレたかと血の気が引いた。
「昨日脱いでたのに……あれー?」
「脱いでた……だと」
ムサシのまさかの発言。
イズミは布団に突っ伏し考えることをやめた。
「どーしたのイズミー?」
「燃え尽きたんだよ……真っ白にな」
「?」
イズミの頭を犬猫でも撫でるようにムサシは撫でつけ、そのまま二人は二度寝についた。
窓の外では「魔王様魔王様」と制服姿の青い髪の少女が叫んでいる。
どうやらデニルの意識もようやく戻ったようだが、当の主人は隣家で爆睡とのん気なものだった。
「魔王様! まさか昨晩の下級勇者に攫われたのでは!? こうなったら辺り一帯焦土にしてで――」
「やめなさいよ!!」
怒鳴るヤエの声が響き、その後に泣きじゃくるデニルの声が響く。
熟睡するイズミはすごく安らかな顔をしていた。
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