目覚め〜前章〜
「ハァ…… ハァ…… またあの夢、、、、」
そう言いながら、小学1年生くらいに見える少年は汗をふきベットから足だけをおろした。すると、ドアの向こうからドタドタという音が聞こえてきてドアがすごい勢いで開けられた。
「ジーク様!どうかされましたか!?」
そう言いながら、とても心配そうな顔をしている彼女は僕の専属メイドのシュナだ。たぶん、僕がうなされていたから心配して来てくれたのだろう。
「大丈夫、ちょっと怖い夢を見ただけだから」
僕は安心させるために笑顔でこたえた。
だが、シュナは驚いた顔をしたかと思いきや僕のことを抱きしめていた。
「!!……ちょっ、シュナーー」
「もう大丈夫ですよ。シュナがいますからね」
頭を撫でながらとても優しい声でそう言ってくれた。僕は我慢ができずに泣いてしまった。
数分後、僕が泣き止むとシュナは少し名残惜しそうに離れた。
「ありがと、シュナ。本当はとっても怖かったんだ」
「いえ、私はジーク様の専属メイドとして当然のことをしたまでです」
「どうして仕事モードになっちゃうかな〜」ボソッ
「なにか言いましたか?」
「な、なんでもないよ!」
「?そうですか。それでは私は朝食の準備がありますので失礼いたします」
「うん、ありがとね」
シュナが部屋を出ていくのを笑顔で見送ったあと、1人になった部屋で僕は悶えていた。
ー数年後ー
「ハァ〜、めんどくせぇな〜」
ものすごく憂鬱になりながらもオレは学校へ歩いていた。
この国……フロイスト王国では貴族は6歳になると学校へ行かなければならない。一般市民もたまにはいるが学費の問題など様々な理由からほとんど貴族のお坊ちゃんやお嬢様だけだ。
オレもその中の1人だ。オレの父さんはカイル・ルーテンブルクといい、この国では王族の次に偉い公爵という爵位を持っている。
爵位は、公爵>侯爵>伯爵>辺境伯>子爵>男爵=騎士爵という順番で偉い。
騎士爵というものは、主に騎士団長だけが持っているものだが、稀に受勲されたときに貰うこともある。
そんなわけで、今後この国を引っ張って行く存在として威厳を持った行動をしないといけないのだか、オレはそういうめんどくさいことが大嫌いなのだ。そして、そのめんどくさいだらけの学校はオレにとって地獄のような場所なのだ。
いつも通りオレが落ち込みながら登校していると、
「よっ、なに朝から辛気臭い顔してんだよ」
めちゃくちゃテンションの高い親友が来た。朝からイラつく野郎だなコイツは
「てめぇ、分かって言ってんだろ?」
オレが少し魔力を可視化してそう言うと
「すまんすまん(汗)冗談だよ」
「ったく、二度と言うんじゃねーぞ」
「はいはい。そんなことよりジーク、さっきので周りの子達が怯えちゃってるよ?」
「はっ!忘れてた!」
「しょうがないな〜、【我が求めるは癒しをつかさどる水の力 冷静】これでよしっと」
「ありがとな、ギル」
「いやいや、これも王としてのつとめだよ」
威張りながらそんなことを言う親友。本当は「アホか」と言ってやりたいのだか事実なので仕方がない。コイツはフロイスト王国第2王子のギルティア・フロイストなのだ。
オレがコイツとあったのは5歳のとき、国中の貴族を集めた王子のお披露目パーティで会った。
最初の印象はというと最悪だった。2人とも公爵家と王家の子という位の高い家でプライドも高かった。そのせいで会えばいつもケンカをしていた。普通なら公爵家でも王家に歯向かえば打ち首の刑なのだがギルのお父さん、つまり王様は
『ハッハッハッハー、王族にケンカ売るとかおもしれーな。それに喧嘩するほど仲がいいってことだろ、好きにさしとけ』
との事だった。そしてどちらかから言うまでもなくオレ達は親友になっていた。
それからというものオレ達は何をするにしても一緒だった。
そして今日は、これからオレ達が通うことになる国立第一魔術学院中等部の入学式だ。ギルが楽しそうにしていたのはそのせいかもしれない。
「なぁ、どっちが首席だと思う?」
などと当たり前のことをギルが聞いてきた。
「そんなの決まってるだろ?オレだよ」
オレは自信満々でそう言った。何故かって?そりゃあ、初等部では毎回オレが学年1位だった(ギルは毎回2位)からな。首席はオレ以外有り得ん。
「じゃあ、どっちが首席か賭けてみようか」
「いいぜ、負けた方がお昼奢りな」
「おっけー」
そんなことを話していると、掲示板が見えて来た。さてさてさーて、どっちが首席だ?
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1位 ジーク・ルーテンブルク 300点/300点
2位 ギルティア・フロイスト 295点/300点
3位 ルーシェ・カロライナ 293点/300点
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よっしゃぁぁぁああ!!
「ごちそうさまです」
「……嘘だぁぁぁー 」
落ち込むギルを放っておいてオレは教室へと向かうのだった。
ーー同時刻 ???にてーー
真っ暗な空間にポツンと円卓と椅子が6個あり、その中心には占いで使うような水晶が置かれている。その周りには誰かいるようだが黒いモヤがかかってハッキリと見えないが何か話しているようだ。
「彼もそろそろ思い出すかのう」
「ったく、おっせーな」
「ふふっ、楽しみね」
「彼って誰?」
「僕のこと覚えているかな〜」
「………」
それぞれ違った反応だが誰もが「彼」が思い出すことを待ち望んでいるようだった。