第四話「ドラゴンの住み処」
新作は、今日の夕方か夜の時間帯に投稿する予定です!
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「……ここは?」
地に足が着いている。それに気づいたピアナは目を開ける。
「おぉ、なんていうか……お花が綺麗な場所だね」
シルビア達がたどり着いたのは、一面に様々な花が咲き広がっている場所。そして、奥には何か祭壇のようなものが見える。
「ここって谷の底だよね?」
シャリオが疑問を飛ばす。
どうして、そんなことを言うのか。それは谷の底にしては壁が無い。自分達が落ちてきたところはそれほど距離がないほど断崖絶壁に挟まれていた。
それがどうだ。
今自分達が居るところには壁はなく、どこまでも続く平地。だが、その疑問はすぐ解消される。なぜならここは正確には谷の底ではなく。
「違うよ、シャリオちゃん。ここはね……シュガリエの住処、だよ。私達は無事転移できたみたい」
「じゃあ、谷の底じゃなくて別の場所なの? どの辺?」
「うーん、それは私にもわからないの。たぶん、シュガリエが作り出した特殊な空間、だと思う」
シャリオの疑問に答えつつ、ミミルは自分の右目を手で覆い目を閉じる。
おそらく身に宿っているシュガリエに話しかけているのだろう。
「……」
「どうかしたの? ユネ。なんだか浮かない顔だけど」
そんな中、ユネが祭壇のほうを見詰め浮かない顔をしていた。ピアナが何気なく話しかけるも、なんでもないですっと作り笑顔でひらりと受け流す。
「……どうしたのかしら、ユネ」
「我輩達にはわからないことが、昔あった、のかもしれない。あの表情と態度を見ればわかる」
いつも元気なユネが故郷に来ることになってから、少しずつ考える素振りを見せたり、上の空になる時があった。
谷に来る途中もそうだったが、今のユネはもっとおかしい。
元気付けてやりたいが、先ほどのようにひらりと受け流してしまうのだ。
「それで、ミミルちゃん。ここに来た理由、そろそろ聞かせてくれないかな?」
ユネの様子も気になるが、今回の目的も気になるところ。もしかすれば、その理由がユネの様子がおかしくなったことと繋がるかもしれない。
ナナエの問いに、ずっと目を閉じていたミミルが祭壇を見詰めたまま話し出した。
「実はね。私、昔の記憶が一部欠落してるんだ……」
「記憶の欠落?」
「うん。しかも、シュガリエと過ごした記憶が」
「シュガリエは気づいたらミミルに宿っていたってこと?」
「そう、だって聞いてる」
「……それで、思い出してどうするつもりなの?」
欠落しているということは、思い出したくないから、とても嫌な記憶だったのかもしれない。ドラゴンにどれほどの力があるのかはわからないが、シュガリエがわざと自分との思い出を消したという可能性もある。
「なんとなく、なんだけどね。その記憶の中に、ドラゴンについてのものもある気がするの」
「つまり、ベロリアナードやブラゴラスについて何か知れるかもしれない、ということか?」
「うん。……でも、すぐには思い出せないみたい。シュガリエも何も答えてくれないし」
それほど思い出して欲しくない記憶なのだろう。
だが、どうしてシュガリエはここへ導いてくれたのだろうか? ここに来ただけでは、記憶は簡単には蘇らないとわかっていたから? それとも他に理由があるのか。
「じゃあ、さっきから見えてる祭壇に行って見ましょう。あそこに行けばなにか思い出すかもしれないわ」
「そうだね。ユネちゃん、行こっか」
「え? あ、はい。そうですね! 誰が一番につけるか勝負しましょう!」
「おー! そういうことだったら、わたしが一番だー!」
「させるかー! お姉さんが一番だぞー!」
別に競争をしているわけではないのだが、元気のいい三人だとシルビアは笑みを零す。シルビアとピアナは、ユネが無理矢理元気な姿を見せているということには気づいている。
無論、幼馴染であるミミルもだ。
小さくなっていく三人の後ろ姿をゆっくり追いながら、ピアナは問いかけた。当然ユネの空元気な理由についてだ。
「ねえ、ユネってもしかしてだけど。何か知っているんじゃないの?」
「そう、だと思う。実はね、記憶が失った私を村まで連れて行ってくれたのはユネちゃんなんだって」
「……なるほどね」
これは確実に何かを知っている。
が、ユネ自身話すわけにはいかないと思っているのだろう。それは、彼女の様子を見れば明白である。
「ミミルは聞いたのであるか? ユネに、何があったのかを」
「うん……だけど、ユネちゃんは本当のことを答えてくれなかった。ただ強く頭を打ったんだって。その一点張り。確かに頭が痛む感じがあったから、その時は納得しちゃったけど」
今となっては違うと疑ってしまう。
幼馴染を疑いたくはないが、彼女の態度から自然と疑問視を向けてしまうのだろう。
「おーい!! 三人とも遅いぞー!!」
「えへへ! わたしいっちばーん!!」
「くぅ……! シャリオちゃんの可愛さに見惚れてしまった……! 無念!!」
すでに祭壇へと到着していた三人の内二人がこちらへと元気に手を振っている。シルビア達も、遅れながらも祭壇に到着。
近くで見ると、祭壇というよりも大きな生物の寝床、のように見える。ここがシュガリエの住処ということは、ここでいつも寝そべっていたのだと想像できる。
「へえ……なかなか広いわね」
「ここでシュガリエが眠っていたんだ……あっ」
回りを見渡していると、ミミルが何かを発見した。シュガリエの寝床であろう場所の奥。石碑があったのだ。シルビア達も近くで確認するが……正直何を書いてあるのかわからない。
ただ文字は無理だが、壁画が何を表しているのかはなんとなくだが理解できる。
そこには何体ものドラゴンが描かれていた。そして、一際大きくドラゴン達の頭上を飛んでいる二体の白と黒のドラゴン。
おそらく白龍シュガリエと黒龍ブラゴラスだろう。中央には、何か羽が生えた光の球体が描かれている。ドラゴンが生まれる寸前? それともこのような形をしたドラゴンが存在するというものか。
「これって、ドラゴン達がこの球体と戦っていたってことなのかしら?」
「見ようによっては、この球体を守護しているようにも見える……ミミル、何か感じないか?」
「……だめ、シュガリエは反応しない。やっぱりまだ復活する力が足りないのかな」
その後、色々と調べるもほとんど進展はなかった。
ここでの収穫は、ドラゴンの住処と謎の石碑、そしてユネが何かを知っているということだ。ただまだ調査は始まったばかり。
ミミルはまだまだ調べるところがあると言っているため、諦める選択肢はない。
本当は、ユネが知っていることを話してくれれば色々と進むのだろうが……。




