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第二話「グオット村到着」

活動報告やTwitterで報告しましたが、来週の月曜日から新作を投稿しようかと思ってます。


なので、明日辺りからまた一話投稿に戻る予定です。

 馬車で移動してから一日。

 あっという間に一つ目の森を抜け二つ目の森に入った。もう少しでグオット村へ到着しようとしていた頃、御者が話しかけてきた。


「それにしてもお客さん。グオット村に行くってことはダンジョンが目的ですか? 見たところ冒険者には見えませんが」

「まあ、まだ見習いですからね。でもこれでもボルトリンの生徒なんですよ!」

「本当ですか? てことは、そちらの銀色のお嬢さんや桃色のお嬢さんも?」


 御者にとってはとても信じられないことらしい。それもそのはずだ。ボルトリンは冒険者育成学校の中でも入るのが難しいと言われている。

 自分よりもひ弱そうな少女達が、あのボルトリンに入学したなどと。


「我輩はそうであるが、こっちの子は違う」


 そう言って、シルビアはぐっすりと眠っていいるシャリオの頭を撫でる。


「はー、最近の若者達は本当にすごいんだね。私も多少の護身術は心得ていますがね、さすがに自分から危険地へ行く勇気はなくて。お嬢さん達のこと素直に尊敬しますよ。っと、どうやら森を抜けるようです」

「お? てことは」


 久しぶりの故郷。ユネとミミルは窓を開けて身を乗り出す。

 馬車が行く先には光が溢れている。

 そこを抜けると……柵に囲まれた小さな村が見えた。周囲は山々に囲まれえおり、他に人里のようなものは見当たらない。


「到着しました! あそこが、ユネ達の故郷! グオット村です!!」

「はえ? 着いたの?」


 外から入ってくる風とユネの大声にシャリオが目を覚ます。まだ意識が完全に覚醒していない様子だが、外が気になるようでふらふら窓へと近づいていく。

 

「無理をするな。もうすぐ馬車が止まる。それまで眠気を覚ましておくのだ」

「ふぁい……」

 

 シャリオが完全に目を覚ます間に、馬車はグオット村前に到着した。本来ならば帰りがいつになるのかと伝えるところだが、帰りはいいと伝えるシルビア達。

 帰りは、ナナエの空間移動があるため馬車の必要はない。馬車が再び森の中へと消えるのを見送った後、シルビアはグオット村を今一度視界に入れた。

 どこにでもありそうな柵で村中を囲んでおり、木造の建築物が奥まで並んでいる。どうやら中央広場のようなものがあるらしく、そこに一際大きく存在感のある石像が置いてあった。おそらくあれが噂のドラゴンの像なのだろう。


「では! さっそくグオット村に―――はっ!?」

「うおー! ユネー!!」


 村に入ろうと足を進めたユネに何か大きな影が襲い掛かる。しかし、ユネは慣れた感じに大きな影を蹴り飛ばす。


「ぐほおっ!?」


 大きな影……もとい大柄の男は、ころころとボールのように転がり軽く受身を取る。そして、再びこちらに近づき。


「腕は! いや足は鈍っていないようだな! 我が娘よ!!」

「当然ですよ、お父さん。いったいどこに通っていると思っているんですか? お父さんこそ、いい加減いい歳なんですから、こういうのは止めておいたほうがいいですよ」

「何を言っている馬鹿娘!! 俺はまだまだ若い!! それにお前のような軟弱な蹴りでは俺の体は、げほおっ!?」

「ちょっ!? 血! 血吐いたわよ!?」

「あっ、大丈夫です。いつものことなんで」

「いつもの!?」


 どうやら、襲ってきた大男はユネの父親のようだ。こう言ってはなんだが、似ているところがどこもない。おそらくユネは母親似なのだろう。

 随分と騒がしく豪快な人だと思っているところへ、一人の女性が近づいてくる。栗色の長い髪の毛、ふっくらとした体つき、頭には布をつけており膝を突いて血を吐いている大男に近づき……背中を叩いた。


「げぼっ!?」

「まったくなにやってんだい、あんたは。ユネが帰ってきて嬉しいのはわかるけど、お客さんも居るんだよ? ごめんなさいねぇ、うちの旦那が」


 あははは!! と容赦なく背中を叩く女性。

 ユネの父親たる大男を旦那と呼ぶからには、ユネの母親なのだろう。こう言ってはなんだが、母親にも似ていない気がするシルビア達だった。


「げ、元気な親ね」

「でしょ? あっ、紹介しますよ。お父さんのダダッカとお母さんのヘルミです」

「よろしくね。あんた達が、ユネとミミルのお友達さん達だね。いやぁ、こんなにも上品で可愛らしい子達が友達なんて。いい出会いができたんだねぇ」

「まあ上品なのは当然ですね。なんて言っても、シルビアとピアナは貴族ですから!」

「な、なんだって!? 貴族ぅ!?」


 自慢げに紹介すると、今まで血を吐いていたダダッカが顔を上げる。なにやら、シルビア達を睨みつけているようだが、貴族が嫌い、なのだろうか? 

 心配になる二人は、ただただダダッカの言葉をじっと待っていた。

 

「……すげぇじゃねぇか!! 馬鹿娘!! 貴族と友達になったなんてよ!!」

「馬鹿娘は止めてください! というか、二人に血塗れの顔を近づけないでください!!」

「ほら、あんた早く拭きな」

「っと、すまねぇな。嬢ちゃん達も、悪かったな。びっくりしただろ?」


 ヘルミから貰った真っ白なタオルで口元に付着した血を拭き取りながらダダッカは笑う。確かに色んな意味で驚いたが、シルビア達にとっては笑みが零れる程度の驚きだ。

 これ以上のことをすでに体験していたため耐性がついてしまっている。


「さて、挨拶も済んだことだし」


 シルビア達の挨拶は済んでいないのだが、ダダッカは雰囲気をがらっと変えユネを見る。


「ユネ、それにミミル。お前達、俺達との誓いは覚えているだろうな?」

「もちろんです」

「はい」

「それがわかっていて、戻ってきたってことはよほどのことがあったってことか?」


 ユネとミミルは首を縦に振り、一歩前に出る。


「このことは手紙にも書きましたけど……私の口から改めて言います」


 すうっと一度深呼吸をし、ミミルは発言した。


「邪悪なドラゴンが動きだし、私に宿っている白龍シュガリエが目覚めつつあります。そして……私の兄が見つかったかもしれません」

「……てことは、あそこに行くのか?」

「はい。そのために戻ってきましたから」


 シルビア達もここに来ることになってから、ミミルにある程度のことは聞いていた。ここグオット村にはドラゴンの伝説が残っている。

 そんな村に生まれたミミルは、ドラゴンと心通わせ対話ができる巫女の力を持つ一族だという。そして、ミミルの右目は実在した白きドラゴン……白龍シュガリエそのもの。どうして、彼女の目にドラゴンの力が宿っているのかは、話してくれなかったがよほどの事情があると察しあえて聞かなかった。


 最後に、フラッカでシルビアに戦いを挑んできた黒龍ブラゴラスを宿した青年アステオ=イズラは、ミミルの実の兄である可能性があるということ。

 どうやら、まだミミルが生まれる前に兄は父親と共に村を出て行ってしまったようだ。理由はわからないが、突然だったという。そのためミミルは兄の顔を知らない。

 知っているのは、名前だけ。イズラとは父親である名。偶然かもしれない。だが、ミミルは同じドラゴンを宿した身として直感的に感じているようだ。


「そうか……だったら、俺達は止めはしねぇ。それがドラゴンに選ばれしお前の使命だからと思うからな。が、お前の母親にはちゃんと会っていけよ」

「はい」

「あっ、今日は家には戻らないから」

「なにぃ!?」


 真面目な話を終えたところでユネが、別の話題へと切り替える。てっきり実家に戻るとばかり思っていたダダッカは、娘の発言に動揺を隠せないでいた。

新作が投稿された際には、我輩はロリであると共に応援してくださると嬉しいです!

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