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第二十九話「旅立ち前に」

 フラッカを襲った邪龍ベロリアナードが何をしたかったのか。その謎が監視塔にあるのではと、調べに行った際にわかったことがひとつある。

 それは、邪龍ベロリアナードが潜入していたかもしれないということだ。聞いたところによると、監視塔の監視長が、なぜか気絶した姿で更衣室のロッカーから見つかったそうだ。


 そして、監視長が気絶したであろう時間帯。

 その時、監視兵達は普通に監視長と話し、共に働いていたという。となれば、働いていた監視長は何者なのか? という疑問に、シルビアは邪龍ベロリアナードではないかと考えた。


 ベロリアナードは、変幻自在に姿を変えることができるという。

 もし、ベロリアナードが監視長に姿を変え、何かをしていたというのであれば……監視塔だけが襲われなかったのにも納得がいく。

 監視塔には、何かがあり、その何かをベロリアナードが姿を変えて奪っていった。その何か、だが。監視塔からは情報がない。よほど重要なものなのか、どうでもいいものだったのか。

 どちらにせよ、シルビアはエリンやカオラなどを通じて邪龍ベロリアナードの存在を世界中に広めることにした。このままでは、世界中が邪龍の牙にやられてしまう。それを避けるためにも、早急にベロリアナードの居場所を突き止め、倒さなければならない。


 ……とはいえ、相手はあの伝説の古代種。

 世界でももっとも強き存在と言われている。そんな相手を本当に倒せるのか? 今回は、単なる物取りだったようだが、いずれは力による侵略をしてくるだろう。

 そうなれば……。


「―――と、言うことなのですが」

『邪龍ベロリアナード……こちらでも確認していました。世界を震撼させるほどの強大で邪悪な力を』


 シルビアは、フラッカであったことをディアナに教えていた。久しぶりのお喋りということで、テンションが上がっていたが、それもシルビアの話を聞いた瞬間からシリアスなほうへと変わった。


「女神様は邪龍については」

『残念ですが、ベロリアナードはわたくしの力をもってしても計り知れないほどに強大な存在です。いったいいつ生まれたのか、どこから来たのか……どこに居るのか』

「女神様の力でもですか?」

『はい……というか、わたくしの主な仕事は世界を見守るというか、最近では書類仕事が多くてろくに女神らしい仕事なんて一切していなくてですね、そもそも新人女神はやる気が無さ過ぎるんです。こういう地味な仕事をすぐ放り投げてしまうし、わたくしだって書類仕事なんて本当はやりたくないんですけど、誰かがやらなくちゃ終わらないし、仕事が終わったと思ったらまた仕事が来るし、もうわたくし女神じゃなくてただの事務員みたいになっているし、女神って何なんですかね……シルビアさんとこうして話すのが楽しみで頑張っていますけど、やっぱりわたくしは女神なわけですし』

「め、女神様?」


 何か突然塞き止められた水が噴出したかのように、喋り出すディアナにシルビアは呆気に取られていた。いったい神々の世界では何があったのか。

 神々しい姿とオーラが、今ではどんどん澱んだものへと変わっている。

 このままではディアナの何かが外れてしまうのでは心配になってしまった。が、自分で我に返ったディアナは咳払いをする。


『も、申し訳ありません。ついに歯止めが利かず』

「いえ。女神様も大変なのですね。我輩には想像だにもできませんが」

『ええ、大変です。とはいえ、わたくしは女神。弱音を吐きたいですが、そうも言ってられません。話を戻しますが、邪龍に関してはこの世界の危機に関わること。わたくしも協力は惜しみません。こちらで色々と調べておきますので、シルビアさんのほうもどうか無茶だけは』

「我輩も平和に暮らしたいのだが、どうしてもそうしてくれない。どうしてでしょうね……」


 はあっと珍しくため息を漏らすシルビアを見て、ディアナは小さく笑みを浮かべる。


『そういう運命の下に生まれた、からではないでしょうか。シルビアさんは、誰かが困っていれば体が先に動いてしまうお人ですから。それは生まれ変わる前から変わっていません』

「……でありますね」

『はい。ところで、これからシルビアさんはどうなされるおつもりですか?』

「ユネとミミルの故郷へ向かおうと思っています。ミミルがどうしても気になることがあるというので」

『彼女達の故郷というと……なるほど、そういうことですか』


 さすがは女神。いったい何をするのかを把握したようだ。ユネ、ミミルの故郷にはドラゴンの伝説がある。そして、ミミルが確かめたいことは当然ドラゴンに関してだ。

 どうやらシルビアと一戦交えたアステオも関わっているらしい。


「出発は明日。故郷の近くまではナナエの空間移動で行くつもりです」

『なるほど、それでしたら安心ですね。それで、近くというのは?』

「港町ウェルッタです」

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