第二十一話「月下の」
※下の謝罪文は戒めのために残しています。
この話を読み前に必ずご確認を!
まず……読者の皆さま方に謝罪をしなければなりません。
申し訳ありませんでしたぁ!!
実は、昨日の夜に投稿した話なのですが、本来はこの話の次に投稿されるはずのものでした。
よく確認もせずに投稿していまい……気づいたのは今日の朝でした……。
このまま次の話を投稿すると、時間が戻ったようになります。なので、次の話を投稿したと同時に前の話と今回の話を入れ替えます。
今後はこのようなミスしないように気を付けながら、投稿していこうと固く決意しました。
長くなりましたが、今後もスタイリッシュ警備員を温かい目で見守りつつ応援して頂けると嬉しいです……本編へどうぞ。
「うーむ。下水道に黒い靄が複数。それに形を変えることで、戦闘方法も変幻自在か……」
「それに加えて、呪いをかけられる。いやー、中々厄介な敵に狙われちゃってるねぇ、フラッカは」
「あれから何度も下水道へと向かっているが、あれ以来黒い靄が襲ってきたのは一回だけ。おそらく我らをどこからか観察して、作戦を練っているのかもしれない」
フラッカへと帰ってきて、六日が経った。それまで楽しいこともたくさんあったが、考えさせられることもたくさんあった。
夕食後のティータイム。シルビア、ナナエ、リューゼはとある一室でこれまであったことを話し合い、情報共有をしている。とはいえ、有力な情報を得たのはシルビアのみ。
他の二人も情報を集めてはいたが、大概遊んでいた。
そもそも、ナナエとリューゼはシルビアが情報収集のため夜出歩く時、リオーネとシャリオの護衛をすることになる。
そのため容易く動くことができなかったということもあるうえ、シルビアには故郷ということもあり、こと情報収集において敵わないところもある。
「いやぁ、相手は中々尻尾を掴ませてくれない厄介さんみたいだねぇ……はふぅ」
「フラッカほどの大都市を襲うんだ。簡単に尻尾など掴ませないだろう。……ところで、ナナエくん。さっきから何をしているんだ?」
真面目な話し合いをしている最中、ナナエはシルビアの膝枕をされながら頭を撫でられていた。
「シルビアたんに撫でられてます」
「ナナエを撫でている」
「……距離が縮まったようだね」
(こうでもしないと他に被害が及ぶ。それにこれぐらいのスキンシップは、許容範囲である)
秘湯での出来事から、ナナエを完全に手玉にとってしまったシルビア。今まではナナエのほうから迫っていたが、逆にこちらから攻めることで無力化している。
こうすることで、他の者に被害が及ばない……はずだ。
「さて、話の続きだが……これまで集めた情報で得た黒い靄が目撃された場所である」
これまでの情報収集で得た黒い靄の出現場所を記した地図をテーブルの真ん中に置く。それを見て、リューゼはほうっと声を漏らす。
「見事にバラバラだね」
中立街、貴族街、貧民街と見事に出現位置が散らばっている。ただ普通に見ればランダムに出現しているように見えるが、おかしな点がある。
それには三人とも気づいており、ナナエが切り出す。
「あれー? これってもしかして、ここを狙ってるのかな?」
「確かに、そう見えなくもないね。ただの偶然ってこともありえるけど」
「であるな。だが、改めて見れば……監視塔を狙っているように見える」
監視塔がフラッカ中央にあるため、狙っているように見える。だが、黒い靄は監視塔付近には出現していない。どこも監視塔からかなり距離がある。
「となると監視塔に何かがある、ということだね。まああの塔はこれまで何度も見に行ったけど、やはり立ち入り禁止エリアには入れなかったよ。いやまったく残念だ! この湧き上がる好奇心をどこにぶつけようか!!」
「一晩で建設された謎の塔かー。敵さんはその謎を知っているのかもね。だからこそ、狙っているだったりー」
シルビアの膝に顔を埋めながら呟くナナエを見て、リューゼは小さく笑みを浮かべ紅茶を嗜む。
「その謎が長期による下準備に見合ったものだったとすれば……作戦開始時は、とんでもないことになりそうだね。どう考える? シルビアくん」
「無論、我輩の故郷で好き勝手はさせない。全力を持って、敵を撃退しよう」
「いやはや、頼もしいものだね。では、私はその時のためにグレゴランとアグリオンを調整しておこうかな」
そう言って、一足先に部屋から出て行く。二人きりになるが、シルビアは改めて地図をじっと見詰め始める。
(監視塔の謎か……もし、それがこの世界をも変えるものだったとすれば)
あまり頼るのはよくないと思っていたが、ディアナと話すべきか。フラッカに来てからは一度も会話をしていないため、世間話も兼ねて連絡を入れるのも良いだろう。
(女神様は、案外寂しがりやであるからな)
「どうしたの? シルビアたん。突然笑顔になって」
「なんでもない。さあ、ナナエ。そろそろ就寝の時間である。行くぞ」
「えー? このままがいいー」
よほどシルビアの膝の上が気持ちいいのか、一向に離れようとしない。どちらが子供なのか……と思いつつシルビアはナナエの頭を軽く叩きながら呟く。
「わがままは言うものではない。明日も膝を貸してやるから、戻るのだ」
すると、魚が跳ねるかのようにシルビアから離れていく。
「わかった! じゃあ、おやすみー!」
素直に戻っていくナナエを見送ったシルビアは地図を片付け、自室へと向かった。
「……こんなにも綺麗な月が昇っているというのに、今でも刻々とフラッカには危機が及んでいると考えると」
気持ちよく眠れないかもしれない。
だが、相手の尻尾を掴めないのであれば動こうにも動けない。今は、やれることをやり、眠れる時に寝る。その時に備えて……。
「ん? あれは」
自室直前で、廊下に俯く人影を発見する。
「うっ……ぐっ!?」
「ミミル?」
パジャマに着替えたミミルだった。眼帯のある目を押さえ、苦しそうにしている。
「ミミル? どうしたのだ、ミミル!」
急ぎ駆けつけ、ミミルに問いかける。
が、答えられないぐらいの痛みと苦しさなのか。一向に返事が返ってこない。
「ミミル! 目が痛むのか? ミミル!!」
この現象は黒い靄と遭遇した時に似ている。つまり、この近辺に黒い靄出現した? いや黒い靄の気配は覚えている。近くに出たのであれば、気づかないはずがないし、ナナエが空間魔術にて結界を張っている。普通の結界と違い悪意ある者が入ってくれば、別空間へと閉じ込めてしまう強力な結界だ。
それが突然現れる黒い靄だったとしても、結界はシュヴァルフ邸全域に張られている。では、シュヴァルフ邸外に?
「はあ……はあ……し、シルビア、ちゃん?」
ようやく答えてくれた。まだ苦しさはあるようだが、少し和らいでいるようだ。
「どうしたのだ? まさかまた黒い靄が?」
「う、ううん。そうじゃないの……ただ目が痛くなっただけ。その……嫌な夢を見ちゃって」
「嫌な夢?」
ひとまず壁際に座らせ、持っていたハンカチで額の汗を拭いながら問いかける。
「うん……。黒い何かが私を襲ってきたの。まるで、私を食べようとしていたかのように」
「黒い何か」
やはり黒い靄となにか関係あるのだろうか。どういうものなのかはわからないが、ミミルの眼帯の下には黒い靄に関係する力があると考えるべきか。
「でも、大丈夫だよ。もう痛みが治まってきたから……」
確かに、最初見かけた時よりは顔色もよくなり、呼吸も安定してきている。だが、このまま一人にしておくわけにはいかない。
「部屋まで一緒に行こう。さあ、立てるか?」
「う、うん。ありがとう、シルビアちゃん」
大分よくなったのを見計らい、肩を貸してミミルを寝室まで送っていった。




