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第七話「授業開始」

「ふあぁ……うむ。やはり、枕やベッドが変わると目覚めも若干違うな」


 入学式から時が経ち、早朝。

 シルビアは、ふかふかのベッドの中で欠伸を噛み殺す。

 時計を見ると、時刻はまだ朝の五時。

 カーテンを開けると、太陽が昇っている最中のようだ。まだ薄っすら暗い。


 いつもと違う部屋、いつもと違う光景。

 いつもと違う生活……。

 だが、シルビアは変わらず朝のトレーニングはやり続ける。そのために、早起きをしたのだ。


「大分慣れたが、やはり髪を束ねるのは難しいのである……」


 いっそのことばっさりと切ってしまおうと思ったが、ルカに全力で止められてしまった。

 せっかくの綺麗な銀髪なんだから! と。

 ボルトバの時は、あまり親孝行ができなかったため今度は全力で親のためにと思っているシルビアは、髪の毛を伸ばしたままこうしてツインテールに束ねている。

 ちなみに、ツインテールにしているのもルカの望みである。


「うむ。これでいい」


 全身が映る鏡で、ツインテールのバランスと、トレーニング用の服を着用を確認。

 最近流行のジャージという服だ。

 提案者は、どうやら異世界人だという。着心地もよく、パジャマ代わりにしている者達も居るようだ。実際、異世界でもそうしているとのことで、子供から大人まで幅広く大人気の服だ。


 シルビアが着用しているのは、白と青いラインが入ったもの。

 学校の体操服も去年からジャージに変更されている。

 違うところと言えば、ボルトリンの紋章が胸についているということか。


「……おはよう、シルビアくん」

「おはよう、寮長殿」


 部屋を出てすぐあの謎の生物と遭遇する。

 いや、今では謎ではないか。

 彼は、シルビアの予想した通り、ここの寮長だった。名は、ゴン。それ以外はまだ謎に包まれている。

 学校側は知っているのだろうが、悪人? 悪獣? ではないため今までの学生達は気にしていなかった。

 

 最初は怪しい獣という認識になるが、可愛い見た目のわりに渋い声のギャップがいいとなっていくようだ。しかも、一人で寮の管理もしており、料理も掃除も完璧にこなす。

 普通寮では、食堂に集まって食べるそうだが、トップ寮は各々部屋で食べる。

 もちろん、その料理は寮長のゴンが作っている。

 シルビアも夕食を味わったからこそ言える。


「夕食美味であった。朝食も今から楽しみである」

「任せるといい。トレーニング、頑張りたまえ」

「うむ。では、行ってくるのである」


 いったいあの見た目でどうやって料理を作っているのかと考えれば、更に謎が深まるばかりだが。


(では、まずはランニングであるな)


 今はトレーニングに集中しようと、トップ寮から出てからしっかりと柔軟体操をし、駆け出した。




・・・・・☆




 授業は普通の勉学と実技に分かれている。勉学は一般知識と冒険者知識を交互に学び、実技は基礎体力をつけたり、魔法の練習をしたり、中には罠を解除する時もある。

 そして、朝のホームルームが終わり最初の授業をシルビア達は受けている。


「では、教科書の二ページを開け。一ページ目は目次部分だから飛ばしてもいいぞ」


 勉学から始まる。

 教科は、冒険者知識だ。

 そして、それを教えるのはちゃんと髭を剃っているのかと疑問に思うほど、髭をところどころから生やしているやる気のなさそうな男子教師。


 左手を見ると、生の腕じゃない。誰が見てもわかる機械の腕だ。

 十五年前から急激に発展した機械工学。

 昔は、灯りや火を起こすにも手間がかかっていたが、現在は機械工学の発展によりスイッチひとつで灯りが点いたり、火を起こせるようになっている。


 シルビアもまずそこに驚いていた。

 ボルトバだった時は、ろうそくやランプなどで辺りを照らしたりしていた。それが、一アクションでどうにかなってしまう時代へとなっていた。

 今男子教師がつけている機械の腕もその機械工学の結晶のひとつ。

 戦いで腕や足をなくした者達に新たな希望をもたらした奇跡の一品だ。


「っと、そうだ。まだ名乗ってなかったな。俺は、今日からお前達に冒険者としての基礎知識を教えるタダイチだ。よろしく」


 と、機械の指からよろしくと書かれた小さな旗を出すタダイチ。

 これは彼なりのおちゃめなのか。

 生徒達も、突然の行動にどう対応すればいいのか固まっている者達ばかり。


(ほう。あの機械の腕。戦いに役立つものとばかり思っていたが、あんな芸当もできるのであるか)


 そんな微妙な空気の中、シルビアに機械の腕について興味を示していた。


「……おし。じゃあさっそく授業を始めるぞ。お前達にまず知識を教える前に、冒険者とはなんたるかを学べ」


 タダイチもそれを感じ取ったのかはわからないが、教科書を手に授業を再開する。


「教科書にも書いているが、冒険者とは冒険をする者の総称だ。今でさえ、魔物と戦ったり、クエストをこなす者みたいに言われているが。昔は、本当にただ世界をただただ冒険をするだけの者達のことを言っていたんだ。中には、働かない者達なんても言われてたな」

「え? そうだったんですか?」

「でもまあ、確かに世界を冒険するって言えばかっこよく聞こえるけど……」


 タダイチの言うことに衝撃を受ける生徒達。

 そう、昔はただ冒険をしていれば冒険者と言われていた。街や村などで一生を過ごすのではなく、まだ見ぬ未知を目指して冒険をする。

 当時から魔物という危険生物が存在していたため、人間達は自分の身を護るので精一杯で、冒険などという命を投げ捨てるようなことは中々しなかったため冒険者達は、挑戦者とも言われていたのだ。


「驚いただろ? 今でこそ、冒険者は世界から認められているが、昔は結構批判されてたんだとよ。俺もその時代に生まれていたわけじゃねぇから、詳しくは知らねぇがな」

「む、昔の人達は今みたいに戦う術を持っていたんですよね?」


 タダイチの説明に疑問に思った女子生徒が手を挙げて問いかける。


「ああ、そうだ。だが、今みたいに傭兵や騎士みたいな戦う者達が多かったわけじゃない。魔物の危険性もまだまだ謎だらけ。だから、昔の人達は自分達の身を護るので精一杯だったんだ」

「昔って大変だったんだなぁ……」

「だからこそ、こうして発展した時代で生まれたお前らはより世のため人のために働く。それが今の冒険者の役目だ。んじゃ、次は冒険者ならまず知っていなくちゃならない知識だ。ページを捲れー」


 最初はやる気のない教師かと思ったが、いざ授業が始まるとどこか熱のある言葉が、生徒達に影響を与えている。

 シルビアは、昔の記憶を思い返しながら最初の授業を受けた。

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