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第二話「まさか……」

思いきって三話目投稿!

「それで、話というのはやはり」

「うん。今回襲ってきた敵について」


 シルビア達とは別の部屋で、ナナエとリューゼは静かに話し合いをしていた。シュヴァルフ邸にある客室のひとつで、テーブルの上にはメイドが持ってきた紅茶にコーヒー、そしてクッキーが置いてある。

 リューゼはまずホットなコーヒーを口にし、椅子にどっかりと背を預ける。


「では、私のほうから話そう。知っての通り、私はシャリオくんのために調整したアグリオンを届けに全力疾走していたわけだが。その途中、森の中で妙な連中に絡まれてしまってね。仕方なく、突破するためにこの欠陥品を使わなくちゃならなくなったんだ」

「結構魔力量が多いあなたでも、長くは持たないからね」

「しかも、使ったら疲労でしばらく動けなくなってしまう。まだ先はあるから本当に使いたくなかったんだけど。私は戦闘が苦手だからね……」


 災難だったねぇ、と言いつつナナエはクッキーを口にする。


「さて、そんなこんながあり。解除するのもあれなので、装着したまま全力疾走をしていたら、彼女達が捕まっていた場所へと辿り着いたんだ」

「で、彼女達を救って一緒に脱出と。どんな場所だったの?」


 クッキーを食べ終わり、紅茶で喉を潤しつつ問いかける。


「そうだねぇ。一言で言うなら、岩の塊だね」

「岩の塊か……」


 ナナエはユネ達から、岩のようなブロックで囲まれた空間で戦っていたと聞いている。そこから岩の人形が無限かのように出現して、襲ってきたと。

 おそらくはシルビアが戦った岩の巨人と似たような生命体と推測するナナエ。

 その証拠に、赤い宝玉が額にあったと説明してくれていた。


「脱出した後、どうなったのかは……まあ報告にあった通りだろう」

「そうだね」


 あの後、敵の情報を伝えると同時にユネ達が捕らえられていたところの調査を依頼した。その報告が、今さっき届いたところだった。

 調査の結果。

 指定した場所には、すでに岩の塊はなく、その残骸もなかったとのこと。残留魔力があるかもと調べてたが、それもなし。もし、魔力が残っていればそれを辿って主犯の居所を探れたのだが……。


「相手も相当の使い手と言ったところか」

「そりゃあね。なにせ、転移魔術を使うほどだし。しかも、あんな魔物を操れるとなると……」


 以前ガゼムラに潜入し、自分達が取り逃がしたあの老婆と関係しているのだろうか? 少なくとも現れた巨人からは老婆から感じられた闇の力というものを感じなかった。

 意図的に隠していたのならば、相当な技術の持ち主とも言える。


「いずれにしろ、今回襲ってきた敵とガゼムラに潜入した敵が同じなのか。それをはっきりさせないとね」

「他にも、ガオザ王国を襲った謎の勢力のこともな。そいつらが、今回襲ってきた敵だったとすれば」

「一国を滅ぼせるほどの力を持っている、ね。あの巨人や転移魔術を見れば確かにそうとも考えられるねぇ……うーん! やばい! とてつもなくやばいね!!」

「と言っているわりには、余裕そうに見えるのが?」


 その姿は、まるで子供のようなはしゃぎようだ。

 付き合いが長いリューゼは、こういう時のナナエが何を思っているのかがなんとなくだが予想できる。


「そりゃあね。普通に特務でーってなら、あれだけど。今回は美少女達が一緒だからねー」

「お気に入りのシルビアくんも居るしな」

「うんうん! いやー、凄かったんだよ! シルビアたんとシャリオちゃんが合体した姿! 強さ!! まさにかっこ可愛いだったね!!」


 興奮するナナエを見て、リューゼはそうかそうかと苦笑しつつ、ならばと続ける。


「今回私がアグリオンに搭載させた機能を使えば更に興奮すると思うぞ。それほどの自信作だ」

「おー!! マジで!? くー! 今すぐ見たい! でも、我慢する! そういうものはいざって時に見たほうが興奮するってものだから!!」

「よくわかっているじゃないか。しかし、君と出会ってから私の技術は更に飛躍した。感謝しているよ、ナナエくん」

「なに改まっちゃってるの? あたしはただリューゼの技術を最大限に活用してるだけだよ」


 ナナエとの出会いがリューゼを成長させた。今までは、異世界人から得た機械技術が、また異世界人のおかげで発展した。

 今のリューゼがあるのは、ナナエとの出会いがあったからである。


「それに、これからも長い付き合いになるんだから。そういうしんみりしたのはなしなしー! さ! 二人っきりの話はここまで! シルビアたん達のところへいこー!!」

「だね。私も、美少女達との会話を楽しむとしよう!!」

「おー!!」


 


・・・・・☆




「お三方の寝室はこちらになります。本来はベッドを二つ設置している部屋なのですが、急遽三つ目を設置させてもらいました」

「ほ、ほえー……寮のベッドより豪華ですね」

「緊張して眠れないかも……」


 ルカとの話し合いは終わり、昼食時まで休憩するため各々の部屋へと訪れていた。ユネ、ミミル、ピアナが案内された寝室には、すでに運ばれていた荷物があり、ベッドの横に置かれている。

 

「眠れなかったユネが一緒に寝てあげますから!」

「う、うん」

「あたしもこういうベッドは久しぶりね。……うん、中々のふかふか感だわ」

「ありがとうございます。用意した甲斐がありました」

「ところで、カリアさん?」

「はい」


 今、シルビアはない。自分の部屋へシャリオを案内しているところだ。リオーネはナナエと同じ部屋で寝るそうで、リューゼは……一人部屋とのこと。

 

「カリアさんって、シルビアちゃんの専属執事って聞いたんですけど」


 それは、今から数分前のこと。

 何気ない会話の中で、シルビアが明かした真実。確かに、貴族などには専属の執事が居ることはおかしいことではない。

 シルビアも忘れがちだが、貴族の娘。

 いったい家ではどういう風に過ごしているのかと、気になっていた。直接本人に聞けばいいのだが、専属執事ならば客観的に教えてくれるかもしれないと思ったのだ。


「はい。シルビア様が五歳の時専属執事として雇って貰えました」

「執事をする前は、カインさんのところで副団長をしていたんですよね?」

「今もたまに団長の手伝いで騎士達の訓練の相手をしています。シルビア様が、ボルトリンに入学してからはそっちのほうが多くなりましたが……おや? ユネ様。リボンが曲がっておりますよ」

「え? あ、本当だ」

「これで大丈夫です」


 話しながらも、本人すら気づかなかったことに気づき、即座に対応する。かっこよく、美しく、気が効く。三人は、素直にすごい人だなぁっと感心してしまっていた。


「さて、話の途中でしたが。まだ私にお聞きしたいことはありますか?」

「じゃあどうして騎士団の副団長を辞めてまで、シルビアの専属執事になったの? 副団長って相当すごい役どころだと思うのだけれど」

「それは……シルビア様との出会いからお話しなければならないので、少々お時間を貰うことになるのですが」


 カリアは忙しい身。時間がかかるとなると、今聞くのは無理があるだろう。


「じゃあ、今はいいわ。時間ができた時に話してくれれば」

「承知致しました。では、私は」


 カリアが去ろうとした時だった。何かに気づいたのか、びしっと身を引き締めドアの前で待ての体勢に入ったではないか。

 すると、すぐノック音が響き、シルビアの声を廊下から聞こえる。


「入るぞ」

「お疲れ様でございます、シルビア様。シャリオ様は?」

「うむ。今は、旅の疲れなんだろう。ベッドでぐっすり眠っている。今はナナエが傍に居るが、メイド隊に監視を頼めるか?」

「畏まりました。では、メイド達に監視につくよう通達致します」

「頼んだ」

「あの、メイド隊って?」


 また新たな疑問が出てきたことで、ユネが手を挙げて問いかける。


「私が副団長をしていた頃に、育てていた騎士達の集まり。メイドにまでなって私を追いかけてきてくれた精鋭達です」

「つ、つまり鍛え上げられた女騎士さん達がメイドに?」

「じゃあ、私達の荷物を運んでくれていたメイドさん達も」

「はい。元は騎士でした」


 騎士団は大丈夫なのだろうか? と心配になった三人だった。それほどカリアに人望があるのだと考えるべきなのだろうが、女性騎士は今でも貴重な存在。

 ユネ達が知っているだけでも、確認したメイド達は十数人は居た。その全てが元騎士なのであれば……男達は嘆きの声を上げたに違いない。


「では、私はこれにて仕事に戻らせて頂きます。っと、その前に。シルビア様」


 さっそく仕事に戻ろうとしていたカリアが真っ白マシュマロを取り出し、シルビアの口元へと近づける。


「はむ……うーん、やはりマシュマロはおいしいのである」


 いつもの年齢に見合わず大人びている雰囲気から一変。マシュマロを食べたシルビアは、歳相応の可愛らしい笑顔を振りまく。

 三人は慣れたつもりだったが、可愛いとほっこりしてしまう。


「……うっ」


 そこで、カリアが口を手で塞ぎ苦しそうにしている姿を見る。どうしたのかと、声をかけようとするミミルだったがそれよりも先に、失礼しますと行って部屋から飛び出していった。

 

「ど、どうしたの? カリアさん」

「カリアはいつもあんな感じだ。心配はない。すぐ何事もなかったかのように仕事に戻っているゆえ。それよりも、三人とも昼食を食べた後はフラッカを案内しよう」

「え、ええ。……まさか、カリアさんがシルビアの専属執事になったのって」


 なんとなく察してしまったピアナは、シルビアを見詰めた。

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