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第二十五話「それぞれの戦い」

本日二話目でーす。

 リオーネのサポートも加わり戦いはよりスムーズに進んだ。攻撃魔術は苦手のようだが、回復から強化などサポートに関しては一通り扱えるため、ミミルはユネを、リオーネはピアナをと分かれることができたのだ。


「これで、最後よ!!」


 最後は、ピアナが崩れた岩から刃を生成し、的確に額の宝石を貫く。

 静寂に包まれた空間で、四人はまだ来るのではと数十秒ほど周囲に目を配る。


「……どうやらさっきので最後みたいですね」


 その後、岩の人形が出てくることはなくなり四人は一息つく。


「久しぶりの魔物との戦いだったけど、強くなったわね私達」

「新種だってなんのそのー!! っと、喜ぶのもいいですが。状況はあまり変わっていません」


 魔物を倒したのはいいが、自分達が閉じ込められているということは変わっていない。シルビアとナナエが助けに来るのを待つのが一番なのだろうが。


「このまま敵さんがずっと放置するわけがないからね」


 今は作戦を考えている時間だとピアナは判断した。

 この合間に、敵はいったい何を考えているのだろうか。それとも、先ほどの魔物に襲わせるというのが一番の作戦だったのか。

 そうだとしたら一番いいのだが、そうではないだろう。


「あれだけの大掛かりな転移魔術を使う相手です。わたくし達では、考えられない方法で襲ってくるかもしれません。それに備えて、まずは回復を」

「ありがとうございます、リオーネさん」

「ユネちゃんも」

「いやー、闘気を纏っていても怪我する時はしちゃうものですねー」


 こちらが断然優勢だったが、二人に怪我ないわけではなかった。どういうわけか、倒されたはずの岩が勝手に動き出すことがあった。

 更に、額にはめ込まれた宝石の力か。魔術を跳ね返す陣が発動したのだ。それでも、大したものではなかったため力押しで倒すことができた。


「こうなると専用武器とかそういうのが欲しいものですね」

「ボルトリンに入るまでは、貧乏だったからユネちゃんよく欲しい欲しいって言ってたよね」

「ただ武器を装備するとその分重くなってしまいますから、動きが鈍くなってしまう可能性もあるんですよね。できれば軽く強固な武器が好ましいですが」


 武器といえば、そのほとんどが鉄などでできているためどうも足技を使う時、重荷になるんじゃないかとユネは不安になっている。

 

「だったら、オーダーメイドすればいいじゃない。あなたにあった武器を」

「そうしたいですが。オーダーメイドって普通に武器を買うよりも高くなりませんか?」

「多少の出費なんて我慢しなさい。自分専用の武器よ? あなただったら憧れてるんじゃない?」


 回復を終えたピアナは、どうなのよ? と問いかける。


「……まあ、憧れてますが。と、とりあえずお財布と相談です!!」

「足りなかったら、私も出すよユネちゃん」

「い、いえ! そこまで迷惑をかけるわけにはいきません! そのお金はミミル自身のために使うべきです! 親への仕送りもあることですから!! ……ん?」


 ユネの傷の手当てが終わり、慌てて立ち上がったところで部屋の空気が変わった。それに気づいた四人は自然と口を閉ざす。


「あいつらを倒すとは、学生にしては中々やる。だが、もうしばらくそこで戯れていてもらおう」


 すると、どこからともなく男の声が響き渡る。周囲を探すが、姿はない。


「誰よ!! 隠れてないで姿を現しなさい!!」

「あなたの狙いは、リオーネなのですか!? それとも」


 ピアナへの言葉には答えなかった声だったが、リオーネの問いには即答してくれた。


「当然、貴様の娘だ。奴の力を手に入れる。それが我が目的のひとつ」

「そうはさせませんよ! ユネ達が居る限りあなたの悪事なんて打ち砕いてあげます!!」


 ……しかし、返答はなかった。先ほどまでの重い空気もなくなったことから、声の主はいなくなったのだろう。

 それに対して、ユネは。


「無視するなー!!!」

「ゆ、ユネちゃん落ち着いて……!」




・・・・・☆




「お、お姉様! お母様は!? 皆は!?」

「……どうやらどこかへ転移させられたようだ。すまない、シャリオ。リオーネ殿を助けてやれず」


 突然の転移魔術になんとか対応したが、助けられたのはシャリオだけだった。別の転移陣で、一緒に居たユネ、ミミル、ピアナ、リオーネの四人はどこかへと転移させられてしまい、シャリオが不安がっている。

 シルビアは謝罪の言葉を送り、その後頭を撫でる。


「だが、三人が一緒なのだ。リオーネ殿は必ず無事だ」

「う、うん……」

「お、お客様! これはいったい」


 シルビア達を送ってくれている御者の男性も何がどうなっているのかと動揺を隠せないで居た。それは、後ろからついてきていた他の御者と馬車に乗っていた者達も同意。

 他の者達が無事ということは、やはり狙いは。


「シルビアたん。お出ましだよ」


 何かが近づいてくる気配に気づき、視線を向ける。

 

「な、なんだありゃあ!? きょ、巨人!?」


 御者が驚く相手は、明らかに十メートルは超えているであろう巨大の人型な何かに。人間ではないのは確実だ。

 おそらく魔物に【ゴーレム】の新種……かもしれない。

 しれないというのは、シルビアの知識でもあんなもの見たことがないからだ。岩の体という特徴は【ゴーレム】のそれだが、大きさが尋常ではない。

 

 今現在確認されている【ゴーレム】の大きさは、最大でも五メートルだ。

 だが、目の前に突然現れた巨人はその約二倍以上かもしれない。

 何よりも目立つのは額や肩にはめ込まれている宝石。

 あんなもの今まで確認されているどの【ゴーレム】にもついていない。あれは本当に【ゴーレム】なのかシルビアにも悩みどころなのだ。


「真っ直ぐこっちに向かってきているか……」

「どうする?」


 と、答えが決まっていることをあえて聞いてくるナナエ。シルビアは、それに対して小さく笑い一歩前に出た。


「ナナエ。シャリオと、他の者達を頼めるか?」

「いいよー」


 緊張感のない軽い返事だが、安心できてしまう不思議な力を感じる。


「お姉様……」


 憧れるお姉様でも、さすがにあの巨人に立ち向かうのは無茶だと心配している顔だ。


「心配はない。我輩が、あの巨人を倒し。リオーネ殿達を探し出す。君が憧れる我輩を信じるのである」


 太陽にも負けない満面な笑顔で頭を撫でる。すると、先ほどまでの不安がどこかへと吹き飛んだかのか。お返しとばかりにシャリオも笑顔になる。


「うん! 頑張ってお姉様!!」

「うむ。我輩が戻るまで、大人しく待っているのだぞ」


 そして、シルビアは何十倍もあろう巨体へと突っ込んでいく。


「お、お客さん! 危ないですよ!!」


 無茶だと飛び出すシルビアを呼び止めようとする御者だったが、ナナエが肩にぽんっと手を置いて静止させる。


「まあまあ。ここは彼女に任せましょう。あっ、それとこの場はあたしが護りますので!!」

「え? あ、はい……お任せ、します?」

「うん! 皆さーん!! 一旦こちらに集まってー!! そうしたほうが護りやすいからー!!」

「こっちだよー!!」


 一箇所に集め、護りやすい陣形をとったところでナナエは再びシルビアの後ろ姿を見詰めた。


(さあ、シルビアたん。あなたの実力。しっかりこの目で見させてもらうから!!)

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