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第十六話「油断はできない」

「……ふう」


 一般テストは終わった。だが、二日も残っている。まだまだ油断はできない。シルビアも帰宅し、自室で明日に向けての勉強をしている。

 一緒に暮らしているリオーネとシャリオはテスト勉強中は邪魔にならないようにと、ゴンが済んでいる管理者室に移動していたので、久しぶりに静かな自室となっていた。

 

 そのため久しぶりにディアナと会話をしようと【女神石】を取り出す。

 テーブルの上で宙に浮く【女神石】からは、あの時のゆるりとした姿ではなく見知った神々しい姿だった。


『お久しぶりです、シルビアさん』

「お久しぶりです。今日は、こたつには入っていないんですね」

『で、ですからあれはたまたまで!!』


 せっかく女神らしく挨拶をしていたディアナだったが、シルビアの何気ない一言で一気に雰囲気が崩れてしまった。

 最近ディアナと会話ができていなかたっためちょっとしたお茶目のつもりだったが、ディアナは意外と気にしていたようだ。今の慌てようを見れば誰でもわかる。


「あははは。これはすみません。まさかそこまで気にしていたとは」

『い、いえ! わたくしも気にするようなことではないとわかってはいるのですが、つい。そ、それで今日はどのようなご用件で? ……実は、ご連絡を頂いてもらって申し訳ないのですが、これから緊急のお仕事が入ってしまってあまりお時間が、その』


 ディアナもシルビアと会話をするのを楽しみにしていたようだが、タイミング悪くまた何かの仕事が入ってしまったようだ。

 やはり女神とゆっくり会話をすることはできないのだろうか。彼女も、忙しい中なんとか時間を作っているようだが、これはまだまだ無理そうだ。


「いえ、あまりお気になさらず。我輩も、女神様のお声が聞きたく連絡してしまっただけですので。こちらこそ忙しい中申し訳ありません」

『そんなことはないですよ。わたくしも忙しい中で、誰かと会話することが唯一の楽しみですから』

「そう言って頂けると気持ちが楽になります」

『よかったです。では、これからお仕事へ向かいますが、ひとつだけお伝えしたいことがあります。……何か嫌な力が動き出そうとしています。どうかお気をつけください』

「……わかりました」


 その嫌な力というのがどんなものなのかは見当がついている。おそらくオルカにも近づいた闇の魔力を与えている謎の勢力。

 それかガオザ王国を襲った勢力。この二つの勢力は同じだと思っているが、違う可能性もある。ディアナの注意を胸にし【女神石】を木箱に仕舞った。


「勉強に戻るか」


 久しぶりにディアナの声を聞いたシルビアは、夕食の時間まで勉強を続けることにし、ペンを握り締めた。

 すると。


「お姉様ぁ!」

「おぉ、シャリオ。どうしたのだ? 我輩はまだ勉強中であるぞ」


 ゴンの部屋に居るはずのシャリオがいつものように元気な笑顔で飛びついてきた。最近はシルビアの膝の上に頭や体を乗せたりするのが好きらしく、今回は寝転ぶ形でシルビアの顔を見上げていた。


「だって、ゴンおじさんもお母様も夕食を作るって言っていなくなっちゃったから退屈なんだもん」

「そうであったか。では、夕食までここに居ていいぞ」

「いいの?」

「そのために来たのであろう? ただ勉強の邪魔にならないように少し静かにしていてほしい。いいか?」

「はーい!!」


 それからは、ピアナなどに教わった魔力の制御方法のひとつである魔力の球を作ったり、シルビアが教えた闘気を練る練習をしたりして、基本静かにしていた。

 だが、すぐに飽きたのか。シルビアと背を合わせながら本を読み始めた。夕食ができたのはそれから数十分後だった。




・・・・・☆




「おい、お前達」

「オルカか。どうかした?」


 一般学テストの翌日。今日は、冒険者知識のテストだ。いつものように教室へと入っていこうとしたところで、隣のクラスのオルカが話しかけてきた。

 ちゃんとエブルとダイも一緒だ。


「昨日のテストどうだった?」

「完璧なのである」

「問題ないわ。そういうあなたはどうなの? そうやって聞いてくるってことは……」


 にやにやとピアナがオルカ達を見ると、三人同時に慌て出す。


「ち、ちげぇよ!! ただ気になって聞いただけだろ!?」

「そ、そうそう!!」

「同級生としてな?」

「……それで? あなた達はどうだったのよ。それを聞いてるんだけど、私は」


 が、三人の様子を見る限り言葉に表さなくともなんとなく察しがつく。


「テストは今日と明日もある! 油断するんじゃねぇぞ!!」

「その通りだ!! 俺達は余裕だけどな!! な!? ダイ!!」

「……お、おう!!」

「本当に余裕なんでしょうか」


 三人のやり取りから余裕とは思えないと感じるユネ。


「おーい、お前ら。いつまで話してんだ。そろそろ教室で待機してろ」

「あでっ!?」

「た、タダイチ先生……」


 教室の入り口前で話していると、タダイチが生徒の名簿帖でオルカの頭を軽く叩く。


「生徒同士で話し合うのはいいが、それは教室内でやれ。予鈴は鳴ったはずだぞ」

「そ、そうだった。そんじゃあな! テスト頑張れよ!!」


 と、教室から離れていくオルカ達。その後をタダイチは追いながらこんなことを言う。


「お前のほうが頑張れよ」

「ど、どういう意味だよ!? まさかもう昨日の結果出たのか!?」

「知らん。俺は一般学には関係ないからな。だが、普段のお前の成績を考えるとなぁ」

「教師が生徒を不安にさせるなよ!!」


 二人のやり取りを見た後、四人は教室へと入っていく。そして、シルビアの席に集まって今日のことを話し合いだした。予鈴は鳴っているがまだシーニが来るまで大丈夫だろうと。


「まったくあの三人大丈夫かしら?」

「あの様子だとちょっと不安だよね……」

「大丈夫だと思いますよ? 一般知識ならともかく今日は冒険者知識です。彼らだって、冒険者を目指す生徒なんですから」


 そういうユネにも昨日とは違って余裕のようなものが見える。ユネだけじゃない。他の生徒達もそうだ。自分達は冒険者を目指す生徒だ。

 冒険者知識ならば任せろ! という雰囲気が出ている。


「そういえば、明日の実技だけど。何をやるのかしら?」

「毎年恒例で、一年は基本的なことから教師との軽い模擬戦をやるようですよ」

「教師との模擬戦かぁ……私自信ないよ……」


 うな垂れるミミルにピアナが軽く背中を叩く。


「しっかりしなさい、ミミル。あなたなら大丈夫よ。それに模擬戦と言っても教師は本気を出さないんでしょ?」

「はい、そう聞いてます。まあでも模擬戦と言っても、いつもやっているような組み手みたいなものらしいです」

「ふむ。だが、他をおろそかにはできない」

「結局は、三日とも油断するなってことでしょ? わかってるわよ」

「皆さーん。席に着いてくださーい」


 シーニがやってきた。生徒達は、すぐに席に座りさっそくテスト前のホームルームが始まった。

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