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第十話「通さない」

「また来たの! しつこいー!!」

「おう! 俺達はしつこいんだよ! これ以上付き纏われたくなけりゃあ、お前達が持ち去った金品をぜーんぶ! 俺達に渡しな!! えぇ? ガオザ王国の王女さんよぉ!?」

(やはりそうか……)


 予想通りだったために、このまま見過ごすわけにはいかない。予想が外れていたとしても、そうだ。


「君、ガオザ王国の王女シャリオ様なのか?」

「そうだよ。そういうお姉ちゃんは、ボルトリンの生徒さんなんだね。気づかなかったよ。それと、様はいらないよ。もうわたし、王女じゃないもん」

「そういうことならば、シャリオよ。少し待っているのである。悪党どもは、我輩が全て撃退しよう」


 本来は採取クエストだったが、こういう緊急事態の場合はその者の判断に任せられることになっている。しかも、捕まえた者達に懸賞金がかかっていた場合はその者のものとなる。

 が、シルビアはまだボルトリンの生徒だ。懸賞金も、シルビアへと直接渡ることはない。


「気をつけろよ。あいつは、あの鎧を倒した奴だ」

「わかってるっすよ」

「では、先生。お願いします」


 頭を丸めた山賊が言うと、一人の女性が前に出てくる。身なりは若干山賊よりだが、どこか品があるように見える。

 赤いポニーテールで、腰には二本の短剣。太ももには何本かの投げナイフ。おそらく、他にもどこかに武器を装備しているに違いない。女性は、シルビア達を見るなり呆れた顔で息を漏らす。


「あんた達、こんなガキに手間取ってるっていうのかい?」

「す、すいやせん。でも、あの鎧がすげぇめちゃくちゃな強さでして。腕とか回転するんですぜ!? それを簡単に倒したあの銀髪のガキも只者じゃねぇ……ここはヴァーバラの姉御の力が必要なんすよ!」

「まったく仕方ないねぇ。お前たち! あたしが来たからには安心しな! けど、報酬は契約より弾ませてもらうからねぇ!!」


 どうやら彼女は金で雇われた傭兵のようだ。女性の傭兵は比較的珍しい。傭兵は金を払うことで護衛から魔物討伐までなんでもやる者達だ。

 中には、平気で悪者に手を貸して、殺人を犯す者も居る。彼女も、金さえ払ってくれれば、相手が悪党だろうと関係ない、という人種なのだろう。


「むー! お姉ちゃん。あたしも戦う!!」


 やる気十分に、鎧の中へと入っていくシャリオ。しかし、シルビアはいいやっと首を横に振る。


「君は、戦わなくてもいい」

「え? どうして! だって、相手はいっぱい居るんだよ! こっちも人数増やさないと! それに、わたしあいつらを倒したことあるんだよ!?」


 シャリオが身に纏っている謎の鎧の強さは十分わかっている。目の前の山賊達を倒したというのは本当なのだろう。

 そう思えるほどの強さだった。だから、彼女が戦力に加わるのはとても心強い。

 しかし、それでもシルビアは彼女の参加を拒絶する。

 その理由は、金で雇われた傭兵の女ヴァーバラにある。


 彼女はかなり戦闘慣れをしている。それは、雰囲気からわかる。口だけではない。彼女は、それだけの力を持っている。

 対して、シャリオは戦闘慣れしていない。確かに、鎧の力は絶大だ。絶大だが、シャリオが戦闘慣れしていないせいで、先ほども簡単に転ばされたのだ。

 それに。


「君は、ここよりも優先しなくてはならないところがあるんじゃないのか?」

「……うん」


 王女であるシャリオが居るということは、もうひとつ感じた気配は一緒に逃げていた王妃だろう。ならば、ここで一緒に戦うよりも王妃のところへ向かうのが最善だ。

 

「心配はない。我輩は負けない。悪者を倒したら、すぐそっちに向かう。だから、行くのである」

「わ、わかった! 頑張ってね! お姉ちゃん!!」


 決断が早くて助かる。シャリオは再度鎧を身に纏って、王妃が隠れているであろう場所へと駆け抜けていく。

 それを見たヴァーバラは逃がさないとばかりに、武器を構えて動き出すも。


「させない」

「邪魔だよ!!」


 シルビアが彼女よりも早く動き、行動を遮る。振り下ろされた短剣も軽く片手で止める。そのまま刃を木の棒の感覚で折り、腹部へと拳を打ちつける。


「かは!?」

「む?」


 一撃で撃退するつもりだったが、何か遮られた。それでも、ダメージは十分与えた。

 先ほどまで余裕の表情だったヴァーバラの様子を見れば一目瞭然。

 腹部を押さえながら、シルビアを睨みつけている。


「あんた……只者じゃないねぇ。何歳だい」

「十歳だ」

「あたしの半分も生きていないじゃないかい……まったく、恐ろしい子が居たもんだよ」

「あ、姉御! 大丈夫っすか!?」


 頼りにしていたヴァーバラが簡単に一撃を貰ったため山賊の一人が駆け寄ってくる。後ろに控えていた他の山賊達も今ので一気に警戒心が高まったようだ。

 一斉に武器を構えじりじりと近づいてくる。


「あんた達、手を出すんじゃないよ。この子はあたしの獲物だ。あんた達は、逃げた王女を捕まえな!!」

「ほう。我輩と一騎打ちをするつもりか? シャリオを倒せないから、雇われたのではないのか?」

「確かにね。けど、こいつらと一斉に飛び掛ってもあんたには勝てないだろうからね。だったら、だめもとでもまたこいつらがシャリオ姫を狙ったほうがいいと思わないかい?」


 彼らの目的は、シャリオ。

 わざわざ狙いでもないシルビアに戦力を全部突っ込む必要はないということだ。さすがは、戦い慣れしているだけあってよく考えている。

 ただ、誤算がある。


「我輩が、それを許すとでも?」


 目的がわかっていて、簡単に通すシルビアではない。相手を威嚇するように、闘気を放出させる。それに恐れた山賊達は七人。

 他もシルビアが放出する闘気を感じ取っているが、なんとか怯むことなく武器を構え続けている。


「あんた達! 怯んでんじゃないよ!! さっさと王女を追いな!!」

「へ、へい!!」

「行かせないのである!!」

「うわっ!?」


 最初に飛び出した山賊へと素早く近づき、回し蹴りを食らわす。

 近くの木へと打ちつけられた山賊は、気を失う寸前で。


「し、白……」


 どうやら、シルビアの下着を見たらしい。何度もユネに言われていることだが、それでもシルビアは忘れてしまう。

 スカートを穿いて激しい運動をするならば、ちゃんとスパッツを穿くようにと。

 山賊の言葉で気づいたシルビアだったが、今更下着のことを考えて攻撃するのは……。


(よし。見えないぐらい素早く動こう)


 今度気をつければいいかという考えに至ったシルビアは、山賊達へと突撃していく。

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