第七話「学生の悩み」
冒険者育成学校。
そう学校なのだ。そのため冒険者に必要な実技だけではなく、勉学もある。今回は、教室にて一般学のテストを行っていた。
静寂に包まれる空間で、ただただカリカリとペンと紙が擦れる音が響いている。
(ふむ。皆、苦戦しているようだな。冒険者知識ならばまだ余裕なのだろうが……)
開始してから、七分ほど経っているが、シルビアはもう半分以上書けている。視線を動かすことはできないが、気配でどんな状態なのかがわかる。
まず気になるのが、いつも仲良くしている三人だ。
ユネは、冒険者知識ならば余裕で書いていたが、一般学は中々苦戦している。そもそも、気配を感じなくとも耳に届くほどうー! と唸っているため誰でもわかるだろう。
次にミミルだが、苦戦することなくすらすらと問題を解いている模様。
ピアナも若干苦戦しているようだが、順調に進んでいる。
(まあ、冒険者知識もそうだが。我輩が余裕なのは、年の功というやつだな)
ボルトリンに通う生徒達は、年齢もバラバラなため出題される問題も年齢によって難易度は少し違う。これは、仕方がないことだが教師もテストを作るのが大変だろう。
ただ入学しているのが、十二歳以上がほとんどなためにその辺りを想定したテストとなっている。
十歳は、現在シルビア一人なため心配されていたが、シルビア自身が大丈夫だと公言し、皆と同じテストをしているのだ。
(まだ時間はある……最後に見直しでもするか)
今回のテストは、十五分となっている。
残り時間が、五分と迫っているが、終わっていない者達が多い。
気配からして、ユネはあそこから一気に問題を解きなんとか終わったようだが……適当でないことを祈って、シルビアは見直しをする。
「残り五分だ。終わっていない者は、頑張れ。終わっている者は、しっかり見直しをしておくように」
「もう五分かよ!」
「まだ終わってねー!!」
教師の言葉に、時間がなくなっていたことに気づいた男子生徒達が嘆きの声を上げる。
女子生徒にも数人頭を悩ませている者達が居るようで、刻々と時間が過ぎていく中、シルビアは見直しを終えて、静かに終了時間を待った。
「……よし、そこまでだ。皆ペンを置いて、テスト用紙を裏返すように」
「くそー! 後二問だったのにー!!」
「一問だけわからなかったよー!」
「ほら、早く後ろから回収しなさい」
それぞれ悔しそうな声を上げつつも、教師の指示通り一番後ろから裏返したテスト用紙を前へと持っていく。
「よし。これで全部だな。それじゃ、残り時間で授業の続きをする。教科書の」
その後、残り時間で授業を行った。生徒達は、授業をしている中でも先ほどのテストが気になって集中できていない者達も多かったそうだ。
「ふい……危なかったですねぇ」
授業を終え、休み時間となったところで四人は集まり先ほどのことを話し合っていた。
開口一番はユネだ。
額の汗を拭うような動作をして、そのまま語り出す。
「さすがに、年齢がバラバラなだけに、ちょーっと問題が難しかったですねぇ」
「そうね。私も勉強したつもりだったのに、今日のは苦戦したわ。……まあ、そこの二人は全然苦戦してなかったようだけど」
「そうですよねー。シルビアにいたっては、一番年下なのにあっという間に終わっていた気配でしたし」
明らかに、羨ましそうに見詰められるシルビアとミミル。
特に見られているのはシルビアだった。
仲良し四人組の中では、シルビアが一番若い。それなのに、全然苦戦していないなんてありえないと。
「これが天才ってやつなのね……」
「ユネだって、努力の天才です!!」
「それを言うなら、私だって!」
「別に我輩は天才というわけではない。ただ知っていただけ。知っていた知識だったからこそ、苦戦せず書けただけである」
本当のことを言ったつもりだったが。
「そういうのを天才と言うんです!」
「世の中には、知っていても中々出てこなくて、全然書けない人達だって居るのよ!」
今日はやたらと、共感している二人。
いつもなら、どちらかが何かを言って、言い争いに発展する。それが今では、標的が完全にシルビアへと向けられているのだ。
「で、でも二人は解けたんだよね?」
「まあ、解けましたよ」
「解けたわ、当然。でも、見直しが全部できなかったから、不安なのよね」
「それは皆同じことだ」
と、周りを見渡すと互いに先ほどのテストについて話し合っていたり、もうだめだぁ! とうな垂れている生徒も居た。
「……ま、今回のテストは所詮小テスト。本番は長期休み前のテストよ!」
「はい! そこが勝負ですね! その時は、四人で集まって勉強会をしましょう!!」
自分達よりも落ち込んでいる生徒を見て冷静になったのか。今回のテストは、どうということはなかったと気持ちを切り替える。
今回のテストはあくまで小テスト。
本番と言ってもいいテストは、長期休み前に行われるものだ。冒険者知識、一般知識の二つのテストを受けて、その中で規定の点数にいかないものが、二つ以上出た場合は長期休み中に学校で補習を受けたり、課題も多くなってしまう。
何が何でも、その時のテストはどうにかしないといけない。
「であるな。長期休みに補習など受けることになったら、我輩の実家に来れなくなってしまうぞ?」
「そ、それはだめよ! ユネ! 次は、互いに頑張るわよ!!」
「ですね!」
シルビアの実家に行くため。二人は、決意を新たに手を交し合った。
「よかったぁ。元気になったみたいだね」
「二人ならば、落ち込んでもすぐ立ち直ることはわかっていたのである」
「というわけで、次はコース別授業だから私は移動するわ。またお昼に会いましょう!!」
長期休みまで後、二週間とちょっと。
授業も多少過酷になっているが、これもその後にある長期休みのため。シルビアとしては、まだまだボルトリンで過ごしたいところもあるが、休む時には休む。
それは、冒険者ではなくとも全ての者達に言えることだ。




