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第三話「大丈夫」

 ミミルは走っていた。

 どうして走っているのか? それは、今から数十秒前のことだ。


(うー……! 恥ずかしい! 恥ずかしい!! 恥ずかしいよぉ!! なんで、お友達になりたいって言いたかったのに、あんな間違いを……!!)


 シルビアへ友達になりたいと言いたかっただけだったのだが、恥ずかしさのあまり自分でもどうして!? と思うほどの恥ずかしい言葉を言ってしまったのだ。

 絶対変な子だと思われた。

 周りにも人が居て、結構大きな声ではっきりと言ってしまった。


 おっぱいと。


 どう考えても、いきなりおっぱいと叫ぶ子なんて変と思うのは当たり前。これで、友達になるのは不可能となってしまった。

 それもそのはずだ。いきなりおっぱいと発言する子となど友達になりたいと思うはずがない。

 もう終わりだぁ! と前を見ずただただ走る。


「あうっ!?」


 しかし、そんなことをしていれば誰かにぶつかるのは明白。軽く弾かれ、尻餅をついてしまったミミルは更に自分を責めていく。

 おっぱいといきなり叫んでしまううえに、多くの人が集まるところで前を見ず走り出しぶつかってしまう。自分はだめだめな子だと。

 ぶつかった相手に早く謝らなくちゃならないのに、自分の情けなさに目すら開けられない。


「ミミルじゃないですか。大丈夫ですか?」

「え? あっ、ユネちゃん」


 聞き覚えのある声に、はっと目を開ける。

 そこには、幼馴染の少女ユネが心配そうに手を差し伸べていた。

 肩まで長い栗色の髪の毛に、蝶のようなリボンを後頭部につけている可愛らしくもかっこいい少女。短めのスカートに、かなり鍛えたのだろうとわかるほど張りがいい太ももは、黒いタイツの上からでもわかるほどだ。


「どうしたんですか? いきなりいなくなったと思ったら、いきなりぶつかってきて。……泣いているんですか?」


 幼馴染の涙に気づいたユネは、助け起こすよりも先にしゃがみこんで涙をハンカチで拭った。そして、そのままミミルを落ち着かせるように頭を撫でながら話しかける。


「誰かに虐められたんですか? あ、でもそうだとしたら」

「ううん、違うのユネちゃん。私が、全部悪いの……」

「とにかく、移動しましょう。ここだと目立ちます」


 ほとんどは模擬試合をしているとはいえ、待っている者や試合が終わった者達は居る。道の真ん中で美少女達が座り込んでいれば、誰でも気になってしまう。

 ユネはミミルを立たせ、休憩場へと移動した。

 

「さあ、ユネに話してください。ユネから離れてからなにがあったのか」

「うん……じ、実はね。お友達に、なりたいって思った子が居たの」


 恥ずかしそうに答えるミミルの言葉に、ユネは嬉しそうに微笑む。


「そうですか。ミミルがお友達になりたいと思う子なら、ユネもお友達になってみたいです。……ですが、ミミルの様子から考えるに」

「……緊張、しちゃって」


 それから、何があったのかを恥ずかしながらも事細かく語っていく。

 シルビアを見つけ、話しかけるも、緊張のあまりなぜかおっぱいと叫んでしまったこと。

 誤解だと説明せずに、そのまま走り去ってしまったこと。

 もう友達になれないだろうと絶望したこと。

 全てを話したミミルは、再び情けなさの涙が零れそうになっていた。


「なるほど。確かに、ミミルは人と話すのは苦手なため時々変なことを言うことは知っていましたが。まさか、お友達をおっぱいと謎間違いをしてしまうとは」

「うぅ……ユネちゃん、冷静に分析しなくてもわかってるからぁ……!」


 悪気はなかったのだが、ユネはつい冷静に分析してしまう癖がある。これには、ミミルも両手で顔を隠してしまう。


「すみません、ミミル。ですが、おそらく大丈夫だとユネは思います」

「え? ど、どうして?」

「ミミルがお友達になりたいのは、あの百三番のシルビアなのですよね?」

「う、うん。か、かっこよくて、強くて、可愛くて……あんな子とお友達になれたら私もって」


 当然シルビアのことはユネも知っている。丁度自分の模擬試合が終わった後、なにやら妙な騒ぎに立ち寄ったところ自分よりも小さい女の子が模擬試合をしていたのだ。

 始めは、どうなるものかと心配して見ていたが、構えた瞬間に切り替わった雰囲気に考えは変わった。

 シルビアは只者ではないと。

 そして、模擬試合は一瞬にして終わった。

 気づいた時には、試験官が回転しながら壁に激突して気絶。


 腕に自信があったユネは、試験を受けに来た誰よりも強いと確信していた。

 それが、シルビアの強さを目の当たりにした時から変なもやもやが頭から離れないでいる。

 そんな時出会ったのが、いつの間にか居なくなっていたミミルだったというわけだ。

 まだ変なもやもやがなくなったわけではないが、幼馴染の涙を見たからにはそっちを最優先にしなくてはならない。


「あの子なら、おっぱいと叫んだぐらいじゃなんともないと思います」

「で、でも! もしチャンスがもう一度あっても、私試験に落ちちゃってるかもだし……そうなったら、合格確定のシルビアちゃんとは」


 あの強さに加えて、ユネ以上の速さで試験官を倒した。

 誰から見ても合格は確定。

 おそらく、ミミルは自分はボルトリンに入学できないから、もうシルビアと会う機会はないとでも思っているのだろう。


「何を言っているんですか。ミミルが合格じゃないのはおかしいというものです。もちろんユネも合格は確定ですが」


 ふふんっと胸を張ってドヤ顔を決める幼馴染にミミルはつい笑顔になってしまう。


「相変わらずユネちゃんはすごいなぁ。冷静な分析もできるし、自信たっぷりだし。それに比べて私は」

「ミミルは、そういうところがだめなんです。いつも教えているはずですよ? ミミルは胸を張れるだけの強さがあるんです。もちろん張れる胸も、大きいです」

「む、胸の話は止めない?」

 

 どうやらシルビアとの一件で、胸やおっぱいなどには敏感になってしまっているようだ。

 そういうことなら止めようと、話を切る。


「ともかくです。次からはユネも一緒にお友達を作ろうと申し立てますから」

「ユネちゃんが一緒なら、なんだか自信が出てくる、かな?」

「そうでしょう、そうでしょう。では、そろそろ試験も終わりのようですし。帰りに、約束通り王都のおいしいスイーツを食べに行きましょう」

「うん!」


 それから、一時間半ほどが経ち全ての模擬試合は終了。

 勉学も一般常識から冒険者にとっての基本知識の混合テストを行い、試験生達はボルトリンから一時帰宅となった。

 合否の通知は、後日自宅へ手紙にて届くようだ。

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