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第四話「悪党は」

 王都ガゼムラから二時間ほど南へ進むと、明らかに最近建てられたであろう建物を発見したようだ。

 その近くには、訓練された動きをする兵士達が警戒するように動いていたとか。

 そして、その兵士の鎧に刻まれている紋章が最近戦いに負けた国のものだという。


「でも、それって残党兵士狩りってことよね?」

「違うよー。本当だったら、放っておいても良いんだけど。その人達が、近隣の村々を襲っては食料強奪や誘拐、殺人を犯しているみたいなんだよね。これは、完全に悪党だよ! それに、最近入った情報でB+にランクが上がったと言ってもいいね」


 クエストを受注し、五人は仲良く移動をしていた。

 これからB+の悪党と戦うというか、普通に遠足にでも行くような雰囲気だ。格好もボルトリンの制服のままのため余計にそう見えるだろう。

 

「まあ、そうですね。私も、悪党を統括している人物の名前を聞いて正直身震いしましたよ」

「拳闘士コグド。確か、南にあるガオザって国で最強と言われていた拳闘士だったかしら?」

「そうだよ。ちなみに、あたし達がこれから倒しに良く兵士達もガオザの兵士達だよ」


 コグドとは、鋼鉄をも砕く左を持っていると言われている拳闘士だ。彼は、ガオザの闘技場で最強を誇り、十年負けなし。

 どんな敵だろうと、左拳で一撃粉砕してきた。どんなに硬い鎧を纏っていたとしても。どんなに硬い盾で防ごうとも。彼の拳は防ぎきれなかったという。

 その派手な攻撃から、ガオザでは英雄的な存在になりつつあった。しかし……最近になって、謎の勢力からの襲撃に合い、国の兵士と共にコグドも応戦するも敗北。

 王は自ら戦いに出て討ち死に。

 王妃、王女はどうにか逃げ切ったようだが、その後の情報は入っていない。


「国民や兵士達はちりじりになったって聞いていたけど、まさか犯罪者になっていたなんてね」

「それも、あのコグドと一緒にね」

「どうして犯罪なんて……」


 コグドの強さに憧れる者は多かった。その中でも、子供達は特に。この事実が知れ渡れば、どれだけの子供達が失望することか。

 

「コグドは、確かに皆が憧れるような拳闘士だったけど。色々と悪い噂が多かった人だからね。例えば、女遊びがひどかったとか。例えば、貧民に金を渡してはサンドバックにしていたとか」

「ひ、ひどい……」

「まったく、そういう大人にはなりたくないわね」

「であるな。いかなる強者であろうと、性格がひどくてはな」


 その性格もあって、一度の敗北で何かが吹っ切れたのか。今こうして、討伐部隊が向かうほどの悪党になってしまった。

 情報では残党兵士の数は、約三十だという。


「勝てる、かな」

「勝てます! 確かにユネ達は、見習い冒険者ですが。実力は生徒会長が認めてくれています!!」

「うん! その通り!! あっ、それとこれをシルビアたんに渡しておくね」


 そろそろ目的地に到着しようとしていた時だった。ナナエが薄い板のよなものをシルビアに渡す。何かの武器だろうか? 全体をくまなく確認するが、特に変わったところはなくただの板のようだ。

 強いて言うならば、重量がある。

 鉄の板……でもないようだが。


「なんであるか? これは」

「変身道具!! それでね、使い方なんだけど」




・・・・・☆




「コグド様! 偵察終わりました! 今日も平和なものです!」

「ご苦労だったな。そんじゃ、村に行くか。今日のサンドバックはどんな奴にするかな」


 コグドは石作りの玉座から腰を上げる。

 今日も、拳がなまらないようにと近隣の村々へと向かい人間達をサンドバックにするために。謎の勢力に負け、無様に逃げたコグドは何かが吹っ切れたかのようにより一層悪へと染まった。

 昔からコグドのことを知っていた残党兵士達も、彼についていけば大丈夫だと信じて拠点まで建てるまでの協力をしている。


「ですが、コグド様。いいのですか?」

「あぁ? なにがだ」


 移動しながら、兵士の一人がコグドにある疑問を問いかける。


「いえ、国外に逃げたほうがいいんじゃないかと。このままここに居たら、またあいつらが―――ごはっ!?」


 人形でも吹き飛んだと勘違いするほど、派手に壁へと叩きつけられる兵士。

 身に纏っていた鎧には、拳サイズの穴が空いており、兵士はぴくりとも動かない。


「その話はするなつっただろうが。それに、俺は聞いた。あいつらは次に西の国を攻めるとな。つまり、このまま南の国に居ればあいつらとは会わねぇってことだ」

「お、おい大丈夫か?」

「そいつは放っておけ! 早く村に行くぞ!!」

「え? あ、はい!!」


 ガオザを襲った謎の勢力は、南から西へと向かった。そんな会話を聞いたコグドは、無理に国外へと逃げることなく南に留まっている。

 あいつらさえ居なければ、自分は負けない。

 拳闘士として生きるのはもう無理だが、いままで 我慢してきた分自由に生きてやると。


「こ、コグド様!? た、大変です!!」

「あぁ? なんだよ。お前、周囲の警備はどうした」


 拠点から出るとすぐに警備をしていた兵士の一人が慌てた様子でやってくる。今まで、こんなことはなかったためコグドも眉を顰めている。


「そ、それが討伐隊が」

「ついに来たのか。んで? どんな奴らなんだ」

「それが」


 なにやら兵士の様子がおかしい。いったいどう説明すればいいのかと困惑しているようだ。それだけ強い奴らなのかとコグドは笑みを浮かべるが。


「そこの悪者!」

「ん?」


 少女の声だ。いったいどこから……と周囲を見渡す。


「ここだ」


 もう一人の少女の声が聞こえ、ようやく居場所をつかんだ。どうやら拠点の天辺に居るようだ。太陽を背に、二人の少女が仮面で顔を隠し、薄い板を持って構えていた。

 

「ガキどもだと? おい、まさか討伐隊ってのは」

「は、はい。少女達です。しかも、あそこの二人だけではなく合計五人。他の三人は、今も尚兵士達と交戦中です。ですが、こちらが劣勢……」

「ちっ! 使えない奴らだ。おい! がきども!! 俺は忙しい! 遊びなら、よそでやるんだな!!」

「そうはいかないよ!! あなたのような悪党を野放しになんてできない!! さあ、いくよシル!!」

「ああ、ナナ!!」


 いったい何をするつもりだ? 少女達は薄い板を持ったまま妙な動きをする。

 薄い板を持った手を交差させたまま天に掲げ、魔力を放出させた。

 刹那。


《クロスエンゲージ!!》


 不思議な呪文を唱え、二人は魔力に包まれる。

 魔力の塊は、すぐに弾けそこから現れた二人は……この場には合わない可愛らしい服装へとなっていた。

 変わっていたのは、服装だけじゃない。髪の毛の色や髪型も変わっている。変わっていると言っても、二人の髪の色が入れ替わっただけだ。そして、互いにサイドポニーテールとなっており、合わせればツインテールになるようになっているようだ。


「白銀の断罪少女!! ナナ!!」

「黒金の断罪少女!! シル!!」

《この拳で、あなた達の罪を打ち砕いちゃうぞ!!》

「なんだあいつら……」

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