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第一話「一緒に!」

「というわけで、一緒に悪者をやっつけよー!!」

「……ふむ。まったくわからん」

「まあ、これが普通の反応ですね」


 突然ナナエから呼び出され、ある程度用件を聞いたシルビアだったが、あまり理解できなかった。

 現在生徒会室に居るのは、シルビア、ナナエ、マイキーの三人。

 ナナエのハイテンションな説明を短く纏めるとこうだ。


 最近悪者が増えたから、シルビアたん一緒にやろう! とのことだ。

 

 ナナエが只者ではないことはシルビアも理解はしていた。

 そして、説明が下手だということも理解していた。

 理解していたが、ここまでとは思っていなかった。

 なんとなくだが理解はできる。つまりは、ナナエはボルトリンの生徒会長をしながら、悪者をやっつけている。だが、最近になって悪者が増加して、一人じゃ手が回らないからシルビアに手伝ってほしい、ということなのだろう。


「ナナエ殿。もう少し落ち着いて説明を」

「つまりだよ! あたし、正義のヒロインやってるの! 特務っていう……えーっとこれはまだ話せないけど。とりあえず、悪者をやっつける仕事をしているんだけど。最近どういうわけか、強い悪者が増えちゃってさぁ。あたし一人じゃ、大変なの! そこで、前から目をつけていたシルビアたんとダブルヒロインで悪者をやっつけようかなって!! 思ったわけだよ!!」


 さっきよりは理解できる説明だが、ヒロインという単語がよくわからない。正義とつくぐらいだ。正義の味方、のようなものなのだろう。

 ナナエは異世界出身ということもあり、シルビアでは理解できないような単語をポンポン言ってくるため首を傾げることが多い。あまり気にしていなかったが、名前の後につくたんというものもよく理解していない。くんやちゃん、さんなら理解できるがたんとは何なのだろうか? と。


「なんとなく理解はできた。しかし、なぜ我輩なのであるか? 我輩よりも主席であるクェイスを選ぶべきだと思うのだが」

「クェイスくんじゃだめなの! シルビアたんじゃないと! だって、ダブルヒロインなんだよ!? クェイスくんが入ったらダブルヒロインじゃなくなっちゃうじゃん!! ねえ! マイキーくん!!」

「僕に振らないでください……」

 

 さすがのマイキーでも、異世界語が入っていると頭を悩ませるようだ。


「それに、シルビアたんには素質がある!!」

「素質?」

「そうそう!! ちょーっとこっちに来て!」


 いったい何をさせようというのか? 危険なことをさせられないことを祈り、ナナエの後をついていく。

 そして、十数分後。

 再び生徒会室に現れたシルビアは。


「なんであるか? この服は」

「きゃー!! やっぱり似合うー!! 可愛いー!! 写真! 写真に収めないと!!」


 フリル多めの衣装を身に纏っていた。

 ナナエも同じような服を身に纏っており、興奮した状態で何度もカメラのシャッターを切っている。

 

「いつの間にこんなものを」

「シルビアたんとダブルヒロインするって決めてから!! しかも、ツッキーに頼んで変身機能つきの道具も作ってもらったんだよ!!」

「あの人はまた悪乗りをして……」

「これで、あたしがシルビアたんと組めば小さな女の子も憧れるスーパーヒロインになれること間違いなし!!」


 やはり、まったくついていけない。

 ナナエにとっては当たり前のような会話なのだろうが、異世界の知識がまったくないシルビアには古代言語でも聞いているかのような感覚だ。

 

(小さな女の子が憧れる……つまり、我輩はナナエ殿と共に憧れの存在になるということなのだろうか)


 シルビアなりに思考する。

 ナナエは、悪者を倒しているそうだ。それがヒロインという名で、自分もそのヒロインになってほしいと言われている。

 やはり、ヒロインというのは正義の味方を異世界風に言語変換したものなのだろう。


(そうだ。女神様ならば、何か知っているかもしれない。あの怪しげな魔力についても聞いてみたい……)

「どうしたのー?」

「いや、なんでもないのである。それより、用事を思い出したゆえ今日はこの辺で」

「それがいいですね。今回の提案は持ち帰ってもらい、後日返事を貰うということでいかがでしょうか? 会長。いきなりの提案ですし、彼女もすぐには決められないと思いますので」


 と、ナナエに問うと不満そうな表情をするも。


「わかったよー。シルビアたんの判断に任せる! あたし的には一緒にやりたいんだけどー」

「すまない。では、我輩はこれにて。失礼する」

「またねー」

「では、また」


 ひとまず、今日のところはゆっくり休み。明日になったらディアナと連絡を取り合おうとシルビアは生徒会室を後にする。

 ディアナとの連絡手段は、彼女から貰った【女神石】を手に持ち、念じることでこちらから連絡することができるのだ。五歳の時に貰って以来あまり使っていないが、今でも大事に持っている。

 

(女神様と離すのはいつぶりだっただろうか? 頼ってくれと言われていたが、やはり女神様に頼るほどのことがなかったゆえ、全然連絡などしていなかった。ただの世間話をするというのも、どうかと思ったし)


 相手は、女神だ。気軽に話せるような友達という感覚で連絡を取るのはどうかとシルビアは思っていた。ディアナのほうも、こっちに気を使っているのか時々様子を伺う程度にしか連絡をしてこない。

 最近では、全然あちら側からも連絡はなし。

 おそらく学業に専念して欲しいということで、あえて連絡をしてこないのだろう。


「ねえ。あれ」

「お、おう。派手だなぁ」

「ああいう趣味があったんだね。でも、凄く似合ってる……」

(ん? なんだろう。周りの視線が)


 クラス対抗バトル以降の悪い噂や、生徒会からの修正のいい噂で視線に慣れているが。今回の視線は、何かが違う。

 なんだろう? 睨んでいるわけでもない。嫌味なものでもない。

 いったいなんだろうと考えながら、寮に戻るとゴンと遭遇する。


「ただいまである、ゴン殿」

「おう、おかえり。……」


 まただ。何か自分の顔についているのだろうか? と顔を満遍なく触るも、特に何かがついているようには感じない。


「お前も、背伸びをしているようで。子供だってことだな」

「どういう意味であるか?」

「他人の趣味にとやかく言うの野暮ってもんだが。せめて、一度帰ってからにするんだな。そういう服は」

「……あっ」


 ようやく理解できたシルビアは、視線を下に落とす。そういえば、ナナエに服を着せられてから着替えずにそのまま出てきてしまったのだ。

 これほど明るい色の服を校内で着ていれば、目立つのは当たり前というもの。

 後日、服を返そうとナナエの部屋に尋ねたところ、数時間ほど捕まってしまい、着せ替え人形の如く色んな服を着せられてしまい、ディアナとの連絡が昼頃になった。

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