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プロローグ

第二章の開幕です。

「三十七……三十八……三十九……!」

「さあ、後ちょっとであるぞ」

「き、きっつーい!! わ、私術士なんだけど!?」

「術士だからと言って、基礎トレーニングを怠ってはいけないのである。見よ、ユネやミミルは余裕で腕立て伏せを終えているぞ」

「二人は戦士コースの生徒でしょ!?」


 ボルトリンに入学して、早くも二ヶ月。

 春の暖かな風も、そろそろ変わろうとしていた頃。すっかり一組の仲良し四人組とまで言われるほどになったシルビア、ユネ、ミミル、ピアナの四人は早朝トレーニングをしていた。


 これまでよりももっと強くなりたいと願うピアナは、授業以外でもできることはなんでもやっており、ピアナ達の日課である早朝トレーニングにも参加している。

 ただ、それが思っていたよりも術士であるピアナにはきついものだった。

 それなりに基礎トレーニングを積んでいたつもりだったが、実際やるとどれだけきついか身に染みていた。


「そもそも、普通の腕立てなら百回はいけるわよ。でも……なんで……!」


 ピアナは術士ではあるが、それなりに筋力や体力はあるほうだ。

 実際、術士コースで行われる接近された場合の回避方法の授業で、トップの成績を出すほど。

 だが、それは所詮必要最低限の格闘術。

 戦士コースの本格的なトレーニングは違った。


「なんでこんな錘を!!」


 ピアナの体に取り付けられているのは、普通の錘じゃない。魔力を流し込むことで、重さを調整できる代物で、学校側に頼めば貸し出しなどが可能。

 ただ魔力コントロールが十分にできる者でないと、重さの調整が難しいためほとんど使われていない。

 そのため、こうして人数分をすぐ借りることができたのだ。


「ピアナが言ったんじゃないですか。一度、戦士コースのトレーニングを体験してみたいって」

「そ、そうだけど……」

「ピアナちゃん。きつかったら、錘外そうか?」

「だ、大丈夫よ! これぐらい!」

「その意気であるぞ。さあ、終わったらシャワーを浴びて、教室へ行こう」

「わかって、るわよ!!」


 正直に言えば、まだユネもミミルも錘をつけての筋肉トレーニングはきついものがあった。それでも、ピアナよりも早く終わることができた。

 戦士コースが術士コースの生徒に負けて入られないと、多少無茶な速度で終わらせたため、まだ疲れが残っているが、ピアナが終わる頃には動けるようにはなっているだろう。


「つん」

「わひゃ!? ななななにを!?」

「いやー、汗を流す美少女の姿ってどうしてこうエロいんだろうって」

「せ、生徒会長!?」


 そろそろ目標の五十回に達しようとしていた刹那。

 突然姿を現したナナエ。

 ちなみに、ナナエが突いたのはピアナの太もも付近である。


「やほー、後輩ちゃん達。トレーニング中にごめんね。実はさ、シルビアたんをちょーっと貸して欲しいんだよー」

「我輩を?」


 いつもの調子に見えるが、どこか少し違うような……。まだナナエのことをよくわからないシルビアは、警戒しつつもついていくことにした。

 ただトレーニングが終わってからということで、ナナエは先に生徒会室へと戻っていく。


「いったい何の用なのかしら」


 何とか腕立て伏せを終えたピアナが真っ白なタオルで汗を拭き取りながら、小さくなっていくナナエの背中を見詰め呟く。

 ナナエのことだ。

 意味のないことは……しそうだが、今回は違うと思いたい。


「あの人、前からシルビアのことをえらく気に入っている様子ですからね。もしかしたら、着せ替え人形になってー! とかじゃないですか?」

「さすがにそれは……」


 と、言葉が止まったピアナはシルビアをしばらく見詰める。


「どうした?」

「いや、確かにそうしたい気持ちはわからなくもないかなぁって」

「そ、それは言えてるかも」

「え? み、ミミル?」

「ううん!! な、なんでもない!!」


 時々ミミルは、ユネを驚かせる言動をしているようだが、昔からこうだったのだろうか? それともこの学校に来てからなのだろうか? 

 

(それはともかくとして。ユネの言っていることはあながち間違ってはいないかもしれない。確かに前から、可愛い洋服があるからと言って誘われていたからな……)


 だが、今回は違うとシルビアの直感が告げている。


(まあ、いったいどんな用なのかは、直接行けばわかること)

「どうしました? シルビア?」

「ん? いや、なんでもない。さあ、最後に軽く走りこみをして終わりにしよう!」

「え!? さ、さっきので終わりじゃなかったの!?」


 ピアナはさっきの腕立て伏せで終わりだと思っていたようだ。

 ここまでさまざまな筋肉トレーニングをしていたため、次があるとは思っていなかったのだろう。


「何を言っている。ここから寮まで走って行くのだぞ? 来る時もそうだったであろう?」

「そ、そうだけど……帰る時ぐらい歩いて帰りたい……」

「頑張りましょう! ピアナ!! 強くなるためです!!」

「無理だったら、ゆっくりでもいいんだよ?」


 戦士コースの三人は、まだまだ余裕のようだ。

 そんな三人を見て、ピアナは負けてられないと決意を固め、我先にと走り出す。


「行くわよ!」

「その調子である!」

「行きますよー! 最下位の人は、食堂で何かを一品奢るということで!!」

「ええ!? そ、それはないよー! ユネちゃーん!?」

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