第十四話「クエスト」
「さあ!! 学校からの許可を貰ってきました!! これからクエストをやりましょう!! もちろんミミルの分の許可も貰ってきましたよ!!」
「わ、私もやるの?」
「当然です!! ミミルだけ仲間外れなんて寂しいですからね!!」
「まあ……一人で休日を過ごすよりはマシかな? それに、何事も経験!! だよね!!」
「その意気です!! ミミルもボルトリンで過ごしたことで、ちょっとは前向きになってきましたね!!」
ユネは、十分ほどで戻ってきた。
当然のようにミミルの分の許可も得てきたようだ。シルビアも、ユネが帰ってくる間にクエストを終わらせ、片づけをしていた。
「うむ。では、これから三人でクエストに向かおう。ただ、我輩は残り一回しかクエストに行けないゆえ。その後は、二人で判断してほしい」
「ということは、シルビアはすでに四回もクエストをやっていたんですか?」
「その通り」
学校の許可を得ようとも、結局は冒険者見習い。クエストができる回数にも上限が設けられている。
一年は、五回。
ただこの五回は、今後の成績や教師の評価次第で増える。
つまり、学校の授業も頑張れということだ。
当然、学年が上がればそれだけで上限は増える。
「我輩とて、なにも休日をクエストだけに費やそうとは思っていないのである。休む時には、しっかりと休む。それも冒険者として、必要なこと」
「だってさ、ユネちゃん」
「うっ……! わ、わかってますよ!!」
なにやら珍しくユネが押されている様子だが、シルビアはまあこういうのもいいだろうとあまり気にせず歩き出す。
それに気づいた二人は、慌てて追いかけた。
「それで、いったいどんなクエストをやるつもりですか? 冒険者を目指す者として贅沢は言いませんが、できれば討伐クエストをやりたいですね!!」
「なら喜ぶのである。これからやるのは討伐クエストだ」
クエストにも多種あり、魔物を倒す討伐クエスト。素材を採取する採取クエスト。護衛などを主とする護衛クエスト。
最後に、先ほどシルビアがやっていたような雑用クエストだ。
低ランクの冒険者や、見習いは雑用クエストを地道にやっていく。討伐クエストなどは、中々ないのだ。
「やりますね!! さすが、シルビア!! 最後が討伐クエストとは!!」
「でも、私達見習いは討伐クエストを受ける場合って」
「ランクの高い冒険者が同行しなくてはならない。が、我輩はある程度のクエストならば補助なしで受けることができる」
これも成績優秀者の特権だ。学校とそのギルドの許可があれば、補助なしで受けられる。
「ただ、二人が一緒となるとどうなのだろう?」
「まあ、そこはギルドに聞いてみればわかることです。さあ! そういうわけですからちゃっちゃとギルドへ向かいましょう!!」
補助なしは成績優秀者の特権。だが、ユネやミミルが一緒となるとどうなるかはわからない。もしかすると、補助有ではないと受けられないということになるかもしれない。
再度、校則について調べようとするもそれよりも早くユネが飛び出していく。
「ユネちゃん待ってー!!」
・・・・・☆
「近隣に大量発生した【ドロロン】を十体討伐、ですか。まあ妥当なところですかね」
ギルドに聞いたところ、今回のクエストに関しては補助なしでも大丈夫だと判断された。
ちなみに、生徒会も今回のクエストを受けているそうだ。
【ドロロン】とは、泥の塊のような魔物。
初心者でも比較的倒しやすい魔物の一体で、土がある場所ならばどこでも現れ、泥の体だけに無限と言ってもいいほど数を増やす。
そのため、こうして頻繁に冒険者達が【ドロロン】討伐をやっている。
ただ女性冒険者はあまりやりたがらない。
理由としては、やはり泥でできているため戦えば泥が跳ねて体に付着し、服が防具が髪の毛が泥まみれになってしまう。
「それにしても、最近の女性冒険者はだめですね。冒険者ならば汚れるなんて当たり前だと言うのに」
ユネも最近の女性冒険者の一人なのでは? と突っ込むべきところなのだろうが。
討伐対象と遭遇してしまう。
あちこちに、泥の塊に顔がついたような生物がうようよと。大きさは、バラバラで一番大きいものでシルビアより少し小さいぐらいだろうか。
「うわぁ……結構居るね」
「十体を倒せばクエストはクリアになる。しかし、サブクエストとしてもう十体を倒せば報酬アップとなるのである」
クエストには、サブクエストというものがあり、それを達成することで報酬が増える。
例えば、部位のある魔物を倒す場合、指定された部位をギルドに持っていけば報酬アップという感じだ。
「そういうことなら、二十体でも三十体でも。いえ! どうせだったら、この辺りの【ドロロン】を全て倒しちゃいましょう!!」
サブクエストはひとつだけ。二十体以上を倒しても報酬は上がらない。ただ、魔物は倒すことで素材を落とすことがある。
それを換金屋などで換金することで金を増やすことはできるが……まだ学生であるシルビア達にはできない。あくまで、素材換金は正式な冒険者だからこそできることだ。
ただせっかく集めた素材をそのままにしておくわけではない。
集めた素材はギルドが受け取り、その換金した金は学校側へと送られる。
そして、その金は学費となり、生徒達の小遣いとなる。
つまり、結果的には自分の金になるということだ。自分では換金できないが、ギルドを通して金に変わり、自分達の今後のためになるのだ。
これは、素材を換金して金を稼ぐ。
冒険者としては当たり前のことだが、それを学生の時に許していればただただそれだけをして、学業が疎かになるのを防ぐという考えにある。
素材を換金して金を稼ぐだけならば、学校に入学することなくそのまま冒険者になればいいだけ。
学生として、学ぶ必要はない。
「であるな。ただこの後の約束を忘れぬようにな」
「わかってます。ユネだって馬鹿じゃありません」
クエストを受ける前に、シルビア達は約束をした。クエストを早めに終わらせて、楽しい休日を三人で過ごそうと。
自分達は冒険者見習いであるが、学生でもある。
せっかくの休日は友達と遊んで過ごす。
それが学生として、子供もとしての責務でもある。
「では、ゆこう。魔物討伐である!!」
「が、頑張る!!」
「突っ込みますよ! シルビア!!」
「任せるのである!!」
先制攻撃とばかりに、シルビアとユネが飛び出す。それと同時に、ミミルは魔力を練り上げた。
「二人ともいくよ! 《エア・フォース》!!」
ミミルが詠唱した《エア・フォース》は強化魔術。
風の加護を付与し、魔術しかまともなダメージが入らない的への有効打を与える。
戦う魔物は泥の体の【ドロロン】だ。
拳や足で戦う二人にとっては、厄介な相手。
当然だが、攻撃が当たれば体に触れる。
触れれば泥が確実に体に付着するうえに、勢いがあれば飛び散って体にも付着するだろう。
それを防ぐために、ミミルは風の強化魔術である《エア・フォース》を使った。
「これで思いっきりやれますね!!」
「まずは一体!!」
風が纏った拳と足が【ドロロン】を貫く。
泥が飛び散るが、風の加護により二人の体を避けていく。
「こうして工夫すれば、汚れることはないですね!」
「その通りである。さあ、この調子で倒していこう!!」
「私も! 《フレア・ランス》!!」
次々に【ドロロン】を粉砕していく中、ミミルは攻撃魔術で二人を襲うとする敵を正確に倒していく。
こうして、難なく三人は討伐クエストを終え、ギルドに報告。
その後、三人仲良く街へと繰り出した。




