第十二話「戦士コース」
今日も二話投稿!
明日はどうなるかな……。
「よ、よかったぁ。ユネちゃんやシルビアちゃんと同じ戦士コースで……私ちょっとドジっちゃったところがあったから心配だったんだぁ……ふう」
「だから言ったではないです。ミミルだったら、大丈夫だって! ユネが言うのだから、絶対です!!」
シルビアとユネ、ミミルは三人仲良く戦士コースに選ばれた。
シルビアはばりばりの接近戦タイプだったため、誰が見ても戦士コースにいくのは誰もが思っていた。そして、ユネもそうだ。
だが、ミミルはどちらなのかと誰もが迷っていただろう。
接近戦も、遠距離戦もそつなくこなしていた。
よく言えばなんでもできる。
悪く言えば長所がない。
格闘術はそこそこで、武器も色々と使える。攻撃魔術もそれなりの威力があり、治癒術もかなりのものだ。
教師達は、素直に驚いていたという。模擬試合の時は、どこか自信がなさそうで、攻撃するのもどこか躊躇っているところがあったため合格してもついていけるのだろうか? と。
しかし、これまでの授業の中で彼女の能力が次々に明らかになっていったことにより、評価も変わった。
そのためミミルは最後までどっちのコースに行かせるか迷っていたと。
「すごい才能であるな、ミミル。これは鍛えれば、どこのパーティーからも必要とされる存在になれるのである」
「そ、そうかな? 私、ユネちゃんみたいにこれと言って長所がなかったから一杯頑張っただけなんだけど……えへへ」
「努力の成果ということであるな。いやぁ、正直羨ましいのである。我輩は、魔術が苦手……というかほとんど使えないゆえ」
今でもこのシルビアの発言には驚かされる。
周りのイメージは、格闘術も魔術もなんでも完璧にこなす超人だと思われていたようだ。
ちなみに、そんな超人は一年の主席であるあのクェイスもそうだ。
が、実際シルビアは魔術が苦手。
魔力があるにしろ、魔術を使うとなると初級魔術程度しか扱えない。それが授業で明らかになった時は、雲の上の人だと思われていたシルビアへの認識が少し和らいだそうだ。
「よ! シルビア! これから一緒の戦士コースだな!」
「うむ。ともに精進していこう」
「シルビアちゃん。今日も可愛いね」
「ありがとう」
こうして、気軽に同じ学びやの同士として話しかけてくることが多くなったのだ。
中には、魔術もまともに使えないのかよと馬鹿にしている者達も少なくはないが、シルビアはそんな些細なことは気にしていない。
自分にできることをやるだけだと、前に前にと進んでいる。
「でも、本当に驚きです。シルビアの意外な一面を見て」
「そうであるか? 我輩は、自分が完璧超人だとは言った覚えはないのであるが。我輩とて、不得手なことがあるということだ」
「まあ、ユネも魔術と言っても強化魔術しか使えないんですが」
魔術と言っても、種類がある。
攻撃魔術、強化魔術、特殊魔術の三つに分かれている。
中でも一番基本的な魔術が攻撃魔術だ。
魔術を習う者は、ここから習い、強化と順番に習っていく。ただ、ユネのように適正というものがあり、中々伸びないこともある。
特に特殊魔術は中でも扱える者はかなり少ない。
「だからこそミミルは、誰よりも才能ある存在なのである」
「あ、あまり褒められると照れちゃうよぉ……!」
「はっはっはっは!! 茹蛸みたいであるぞ、ミミル」
「ううぅ……」
少女同士の微笑ましいやり取りをしながら移動し、戦士コースに選ばれた者達の集合場所に到着した。
一年は、二組に分けられている。
シルビア達の二組ところからは、三十人の内十八人。
一組からも半数の十五人が戦士コースに来ているようだ。つまり、二組のほうが戦士向けの生徒が多かったということになる。
「ど、どうも。皆さん」
「あっ、シーニ先生だ」
相変わらずどこか腰が低いシーニが紙が挟まっている黒い板とペンを手にジャージ姿で現れた。
「一組の人達は、お久しぶり、になるでしょうか。あいや、普通に校内ですれ違うこともあるので、久しぶりでもない、ですかね?」
シーニは二組の実技担当。一組のほうには別の教師が教えていたのだ。
だが、こうしてシーニ一人が姿を現したということは。
「今日から、正式に一年の戦士コースの担当となりました。シーニです。これでも、去年は二年の戦士コースを教えていたので、それなりに自信はあります!」
「そ、それなりって……」
「先生ー! もっと自信もってー!」
「は、はい! ありがとうございます!」
相変わらず生徒から元気付けられる不思議な人だと、シルビアは笑みを浮かべる。
「で、では今日は初日ということもあり。簡単な組み手の後に、一組と二組からそれぞれ代表を選んでもらい、模擬試合をしようかと思います」
「ふむ。模擬試合か。しかも、違う組同士……」
そこで、シルビアはあることを思い出した。
そういえば一組には。
「きたぞー!!! これはもう、一組からはこの俺が! 出るべきだろう。そして二組からは……シルビア!! お前が出るべきだ!!」
「うわぁ……嫌な予感はしていましたが、やっぱりあの人も戦士コースだったんですね」
相変わらずうるさい、というか騒がしいというか。あれで、ちゃんと馴染めているのだろうかと普通に心配になるほど、入学式から何も変わっていない主席クェイス=ファストが叫んでいた。
「く、クェイスくん。まだ組み手が終わってないから、模擬試合はその後」
「すまない! シーニ女史!! だが!! これはもう確定的! 明らか!! 絶対!! 一組は当然主席である俺が出たほうがいい。いや! 出るしかない!! そして、二組から俺の次にすごいシルビア!! お前が出るべきだろう!!」
これもどこかで見た光景だ。
クェイスが叫び、シーニが控えめに注意する。まだ入学式から十日しか経っていないが、懐かしく思える。
それからクェイスは誰よりも目立っており、組み手においてもまるでシルビアを挑発するかのように、自分の力を見せ付けていた。
が、シルビアはそれをあえて無視していた。
そして、ついに模擬試合が始まろうとしているのだが。
「なぜだ!? なぜ、俺じゃないんだ!?」
一組からはクェイスではない生徒が。
二組もシルビアではなく、他の生徒が模擬試合をすることになった。
これには、クェイスは猛講義。
どうして自分じゃないのか。どうして、シルビアじゃないのかと。
「ごめんね、クェイスくん。でも、今日は初日。ちょっとした交流を兼ねてと思っているから」
そうシーニが説得すると、更にヒートアップするかと思えば、すっと静かになる。
「……まあ、そういうことなら仕方ない。俺の強さはもう誰もが認めている。今更見せ付けても、あいやだが俺の最強道の壁となるシルビアを倒すチャンスが……いやいや! ここは学び舎だ。すまない、シーニ女史! 今日は他の者達に譲ろう! 続けてくれ!!」
「あ、ありがとうねクェイスくん」
「相変わらず偉そうな人ですね」
「ユネ以上に自信の塊なのだろう」
「ゆ、ユネはあの人と違って見下したりはしません!」
そんなことはわかっていると、シルビアはユネを落ち着かせる。
と、ふいにクェイスと目が合う。
引き下がったようだが、やはりどこか不満そうな顔だった。
模擬試合も、順調に進み盛り上がった。時間が許す限り、生徒達は次々に模擬試合をしていき、残された時間で、軽く会話に花を咲かせ、初日は終了した。




