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第二十七話「侵略者の撃退」

「ギョ? なんだ、お前達は。人間か?」

「うむ。人間である。悪いが、ここから出て行ってもらえないか? ここの主人が困っているのでな」


 この美しい光景を争うとしていたところへ、シルビア達は立ちはだかる。

 魚人達は、こんな海底に人間がいるなどありえないと思っているのか。全員が動きを止めてしまっている。

 が、その中で、慌てた様子の魚人がリーダーっぽい魚人に耳打ちをする。


「ほう。貴様らが、我等が同士を容易く撃退した人間どもか」

「あれは、あいつらのほうから襲ってきたのよ。私達は悪くないわ」

「ギョッギョッギョッ!! 何も悪いとは言っていない。ただ、人間が水の中で我等を圧倒しているという事実を受け止めきれないだけだ。見たところ、その服のおかげみたいだな」


 不思議な笑い声を上げるが、さすがはリーダーというところか。冷静にシルビア達のことを観察し、見極めている。

 

「ええ、そうですよ。それで? どうするんですか?」

「どうするとは?」

「ここから出て行くかってことです!」

「こんなに綺麗な場所を荒らすなんて許さない! あの魚達やっつけてやるー!」


 と、我先に突撃していくシャリオをまあまあっとシルビアが宥める。


「我輩達も、無益な戦いは避けたい。もし、何もせずここから退去してくれるのであれば、我輩達も戦わない。しかし、そのままこの場所を荒らすというのであれば……容赦なく撃退する」


 シルビアは拳を握り締め、魚人達を睨む。

 それに釣られるように、ピアナ達も構えた。


「ギョッギョッ! そんな脅しで我等が怯むとでも思っていたのか? 我等の目的は、ここの! ウミネール・ハイン・アティネス一世が眠っていたと言われる場所から、海の宝を手に入れることだ!」

「ふむ。わしの宝か? そんなものはどこにもないぞ」

「なにを言うか! ウミネール・ハイン・アティネス一世のなき今! どこかに宝を……ん?」

「なんじゃ。わしに用があるのではないのか? 魚人ども」


 魚人達は、シルビアの肩に乗っているウミネールをじっと見詰める。

 しばらくの沈黙後、周囲の魚人達とひそひそと何かを話している。


「まさか、本物が現れるとは思っていなかったんでしょうね」

「魚人達もすごい動揺してるみたいだねー」

「このまま立ち去ってくれればいいんだけど……あっ、話し合い終わったみたいだよ」


 少し長めの相談も終わり魚人達は、再びシルビア達へと声をかける。


「ギョッギョッギョッ!! 少し驚いたが、そんなことはありえないという結論に至った!!」

「は?」

「まさかとは思いますが」

「彼女を本物のウミネールだと思っていないようだな」


 いや、これは本物だとわかっているうえで、本物だと思わないようにしているのだろうか。なにはともあれこの流れからの、彼らの行動は予想がつく。


「ゆえに、我等はこれより貴様らを撃退し、海の宝を根こそぎ手に入れる!!」

「……ねえ、ウミネール様」

「なんじゃ?」

「本当にこの辺りには、あなたの宝はないの?」

「ない。わしは、宝には興味がないのでな」


 しかし、彼らは宝があるものだと思っているようだ。おそらく、彼らは一度思い込んだらとことん思い込んでしまう性質なのだろう。

 

「さあ! ものども!! 水中ならば、人間など、我ら魚人に敵うはずがない!! やってしまえ!!」

「ギョギョギョッ!!」

「ギョー!!」


 やはり、戦わなければならない運命らしい。

 

「仕方ないわねぇ。あいつら、自分達の仲間が負けたってこと忘れたのかしら?」

「おそらく忘れているのでしょうね。なんだか頭悪そうですし」

「それは言い過ぎ、じゃないかな?」

「まあまあ。ともかく、降りかかる火の粉は払うまで、だよ。スーツの魔力残量も半分を切っちゃったし、ぱぱっとやっちゃおうか!!」

「おー!! 突撃隊長シャリオがまずいくぞー!!」


 いったいいつから突撃隊長になったのかは、誰もが思うところだが、一番元気がよく誰よりも先に突撃しようとするシャリオにはお似合いだ。

 部分武装にて両腕に鎧を纏い。弾丸のように突撃していく。

 そこから腕を回転させ、スピードアップ。


「ギョッ!?」

「ギョギョッ!?」

「ギョアー!?」


 渦潮を巻き起こし、魚人達を蹴散らしていく。これは危険だと思った魚人達が後退するが。


「はい、下がらない」

「あなた達から仕掛けてきたんですからね」

「容赦はいないから!」


 すでに進行方向へと移動していたピアナ、ユネ、ミミルの三人に撃退されてしまう。


「な、なんなんだ!? 貴様ら本当に人間なのか!? ギョギョッと驚いてしまったぞ!!」

「うむ。彼女達は、まだ学生の身ではあるが、冒険者を目指す才能ある子達である」

「シルビアちゃんだって、学生でしょー?」

「そうであったな。さて、どうする? リーダー殿。君の部下達は、次々にやられていく。このままでは、君一人になる。いや……君も消えることになると言ったほうがいいか?」


 異様な圧に、魚人のリーダーはぎゅっと矛を握り締める。

 

(な、なんなのだ、あの人間の子供は!? ここまでの異様な圧は……!?)

「へいへーい! リーダーびびってるー!」


 楽しそうに煽るナナエの声に、魚人のリーダーはハッと我に帰る。


「だ、誰がびびるか?! ギョッギョッギョッ!! 所詮人間! それも子供!! 魚人である我が負けるはずがなーい!!」


 こんな圧に負けるー! とばかりに矛を構え突撃してくる魚人のリーダー。そんなリーダーに、シルビアは仕方あるまいと肩に乗っているウミネールを一度下ろし、対抗するように闘気を足に溜めて爆発させる。


「いいスピードだ! だがそれも人間にしてはだ! 我等魚人には―――ギョッ?」

「こっちである」


 華麗に闘気を操り、一気に視界から消える。

 そこから横腹へと大打撃。

 折り曲がるんじゃないかという勢いで吹き飛ぶ魚人のリーダー。


「この!」


 不意打ちを食らったが、このままでは終わらないと矛を今一度構え突き貫こうとする。


「だからこっちである」

「ギョギョギョッ!?」


 しかし、また視界から消え、今度は真下からアッパーカット。


「ついでにあたしも参加ー」

「ギョップッ!?」


 自分も戦わないのでは、生徒会長としてもお姉さんとしてもあれだからナナエは浮上してきた魚人のリーダーをシルビアが待っている真下へと叩き落す。


「ふむ。では、終わらせよう。水中もいいが、地上が恋しくなってきたからな」


 貴重な海底探索、水中戦、古代の姫との出会い。

 ボルトバだった頃はどれも体験できなかったことばかりだ。この短い期間で、これほどの体験を、冒険をできたことに感謝を込めて、右拳に闘気を集束させる。


「吹き飛ぶがいい!! 海を荒らす愚か者よ!!」

「ギョー!?」


 魚人のリーダーは、いや他の魚人達もシルビア達の強さに成すすべなく撃退された。

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