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第十話「一日の終わり」

脳への刺激が効いたのか。

筆がかなり進んだので本日二話目です!

 そろそろ一日の授業も終わりが近づいていた。

 昼食も済み、昼休みも終え、午後の授業が開始している。


「余裕ですね。これぐらいできないようでは、冒険はできませんから」

「中々の手際であるな。現代では、中々火打石など使わないというのに」

「ユネ達が住んでいるところでは、まだ使っているところが多いんです。それに、冒険者になるために一通りは体験しましたからね。もちろんミミルだってこれぐらいは余裕」

「ではなさそうだが」

「え?」


 冒険者にとって冒険は当たり前のこと。

 そんな中で、街や村などに辿り着けないことなどよくあることだ。

 そのため野宿をしなくてはならない。


「えいっ! えい!! や、やっと点いた……」

「よ、余裕です!」


 安全確保から薪集め、テント作りに料理。少なくともこれができなくては、とてもではないが冒険はかなり厳しいだろう。

 ただ料理に関しては、保存食もあり、魚などをただ焼くだけでもよし。

 料理が苦手だとしても問題はない。


 ただテント作りや火を熾すのはできるようにならなければならない。

 火を熾すだけならば魔法を使えばいいのでは? と思われているが、魔法が使えない者も居る。

 やり方が古いと言われようとも、冒険者にとっては必要な知識のひとつなのだ。


「えへへ。ユネちゃんとやったことがあったけど、やっぱり難しいね」

「魔法を使えれば火を点けるぐらい楽なのであろうが。魔法を使えない者にとっては、難しくとも覚えなくてはならない。我輩も昔は苦労したのである……」

「昔って……もしかして、もっと小さい時からすでにやってたの?」


 つい口が滑ってしまった。

 シルビアが言う昔とは、当然ボルトバだった時の話だが、彼女達は知らない。

 うまく勘違いしてくれているので、ほっと胸を撫で下ろす。今後は気をつけて発言しなくてはと反省するシルビアだった。


「う、うむ。実は、五歳の時に初めて火打石を使ってだな」

「す、すごいですね。ユネでさえ、七歳の時だったのに……」


 ちなみにボルトバだった時は、八歳の時に始めて火打石を使って火を熾すたため、シルビアとしてはユネの行動の早さに感心している。

 ひとつ違いとはいえ、現代の子供ではあまりない行動だ。

 現代だと、スイッチひとつで火を熾させる便利な機械があるだけではなく、魔法でも火を熾せる。

 わざわざ子供が薪を集めて、火打石を使い火を熾すなど誰が思うだろうか?


「七歳で挑戦しているならば普通に考えてすごいことだと思うが? あまり気にしないほうがいいのである。さあ、次はテント作りをしようではないか。他の者達はすでに骨組みを組み立てているようだ。我輩達も、遅れるわけにはいかないのである」


 今回の授業は、冒険者仲間で冒険をして、野宿をしたという状況を想定してやっている。

 ただ火を熾す作業は一人ずつ。

 テント作りからが協力となる。すでに、他の組みはテント作りに取り掛かっている。

 これは負けていられないと、ユネはテント一式を袋から取り出す。


「さあ、一気に組み上げていきますよ!」




・・・・・☆




「いやぁ、今年の生徒達は優秀な子達が多いねぇ。あっ、マイキーくん。あたしがいない間の挨拶ありがとねー」

「いえ。それが副会長となった僕の役目なので。それよりも会長。こちら、溜まっていた資料です。早めに片付けてください」

「えー? あたし、すっごい苦労してようやく戻ってきたばかりなんだよー。やーすーまーせーてー!」

「子供じゃないんですから」

「十代はまだ子供ですー」


 ボルトリンの校内にある生徒会長室にて、マイキーは真面目なのか不真面目なのかよくわからない雰囲気の少女と会話をしていた。

 漆黒の長い髪の毛に赤い瞳。

 前髪には、猫の装飾がついている髪留めがついている。

 彼女は、生徒会長のナナエ=ミヤモト。ボルトリンの生徒会長というのは、もっとも優秀な冒険者になるだろうと教師からも認められた称号だ。

 副会長であるマイキーこそが相応しいと思う者は、まだナナエの実力を知らない者がいう言葉だ。


 在校生や教師達は、誰もがナナエを認めている。

 ただ実力は凄いのだが、不真面目な部分もあるため時々大丈夫なのだろうか? と疑問に思ってしまうこともしばしばある。

 とはいえ、そこを補佐するためにマイキーが居る。ナナエがいなければ次期生徒会長だろうと言われるほどの優秀な生徒が補佐するということもあり、教師達も安堵している。


「そういえばさ! 模擬試合ですっごい! 子を見つけたんだー。ほらほら、この子ー」

「まさか、模擬試合を見に行っていたんですか?」

「え? そうだけど? 生徒会長として当たり前じゃん! 未来の後輩になる子達なんだからさ」


 確かに、言い分はわからなくもない。

 ただその時は、緊急のクエストが入っていたとマイキーは記憶している。

 優秀な成績を収めている生徒達は、卒業していないくとも特例として現役の冒険者に混ざってランクが上のクエストを受けることができる。

 それも、ギルドに所属している冒険者達と一緒に。


 ボルトリンの授業の中には、ここから卒業した冒険者達が所属しているギルドの協力の下、体験入学ならぬ体験クエストがある。

 将来ギルドに所属し、冒険者としてクエストをこなす見習い達のためにと設けられているのだ。

 

 別にギルドに所属していないから冒険者を名乗るな! というわけではない。

 ギルドに所属していなくとも、クエストは受けられる。

 ただギルドに所属していれば、国などから支援を受けられるため、所属していたほうが何かと楽な部分がある。


「大丈夫だってー。ちゃんとクエストもこなしたからー」

「それならいいのですが。それで……なるほど、この子ですか」


 一安心したところで、ナナエが指差す新入生の名を見て笑みを浮かべるマイキー。

 

「今日も見たけど、可愛いし、強いし、我輩だし!」

「そこは強調すべきところなんですか?」

「だって我輩! なんて一人称の幼女なんてそうはいないよ!! くー!! なんだか属性が多くて高ぶってきちゃうなー!!」


 と、テンションが上がっていくナナエを見てまたかとマイキーは静かに見詰める。

 彼女は、どうやら異世界からやってきた者らしい。

 異世界人。

 こことはまた違う世界から召喚または流れ着いてきた者の総称である。彼女は、どうやら前者のようで、ちゃんと召喚師とも今でも交流はあるようだ。ただその召喚師がどういう人物なのかはマイキーは知らない。ただ面白い人、ということだけ教えられている。


 異世界人は、この世界に影響を与えている。

 機械工学もその内のひとつだ。

 他にも異世界人は誰もが特殊な力を持っていることが多く、ナナエもその内の一人。


 何かと暇があれば、漫画読みたいーやアニメ観たいーと謎の言動が多々ある。しかも、男にはほとんど興味がないらしく、あるとすれば同性。

 つまり女の子にしか興味がないということだ。

 そのためか、可愛い女の子を見つければすぐ仲良くなろうと飛び出していく。そう……今のテンションのまま急に。


「よおし!! お友達になってくりゅう!!」

「だめです」

「あふん」


 玄関からではなく、窓から飛び出そうとするので、マイキーが首根っこを掴みそれを阻止する。

 生徒会長室は、三階にあるためかなり高い。

 が、彼女の身体能力であるなら三階から飛び降りても平気なのだ。マイキーは何度も目の当たりにしているため慣れている。


「離してー!! シルビアたんと仲良くなって、はすはすしたいー!!」

「はすはすの意味はわかりませんが。仲良くになるにしろ、まず自分の仕事を終わらせてください生徒会長」

「ぐぬぬ……!」


 子供っぽく、結構いい加減なところはあるが、仕事はきっちりとこなす。

 不機嫌な表情を浮かべながらも、真面目に資料に目を通し、サインを入れ、おかしいところがあれば指摘する。

 そして、マイキーがサポートすることで仕事は更に捗る。こうして、なんとか仕事を終えたナナエは、宿題から解放された子供のように生徒会長室から飛び出していった。

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