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Chapter of Begine  作者: Tkayuki 冬至
始動
8/71

招かねざる客

「はぁ、はぁ、はぁ、」


息を切らしながらもソフィアは薙刀を構える。


装備や服が破けたり土で汚れたりしているが目立った外傷は無い。


一方、超巨大なジャンガルノには無数の傷があったがどれも浅い。まだ戦う様子だがソフィアの体力は限界に近づいていた。


辺りは激戦を語るかのように木々がへし折られ、大地は所々抉れていた。


ソフィアは防御や回避に徹していたがこのままでは体力が尽き敗北するだろう。


ーグゥォォォオ!!


超巨大なジャンガルノは突っ込んでくる。相手も限界がきてるのか遅いように感じるが、それでもやはり回避するのに一苦労だ。


それは超巨大なジャンガルノもわかっているのか戦闘スタイルを変えてくる。今までは暴走車の様に突っ込んで攻撃していたがソフィアが回避する直前に停止し、回避し始める相手に向けて攻撃してきた。


ソフィアは回避に成功するが、取り残された切られた髪の毛が宙に舞う。


だがソフィアは回避した直後、着地した時に足を踏み出そうと足に力を入れるのだがそれと同時に何かが外れる様な感覚に見舞われる。


いくつもの南京錠が一気に解錠されたような。


その瞬間、今までとは桁外れの速さで超巨大なジャンガルノの懐へと潜り込んだ。


それをソフィアは驚くこと無く、そのまま薙刀で斬りつけた。


ーグァァァアッ!?


耐えられなかったのか尻餅をつくように転倒してしまう。


そこでようやく自分の異常な速さに、力について認識する。


「これなら、いけるっ!」


再び薙刀を超巨大なジャンガルノに向けて構える。


超巨大なジャンガルノは直ぐに立て直した所をソフィアは先程の速さで攻めこんでゆく。


ーガゥアァッ!?


超巨大なジャンガルノはソフィアが振るう薙刀の威力で圧倒する。


そして…。


ーグギャァァァァァ!!!


足に激痛が走り、膝を地につけてしまう。そこを狙ったソフィアは最後に斬りつけようとするが傍らにあった長い木を横に凪ぎ払う。


ソフィアは薙刀を棒高跳びの棒の様に扱い、回避する。

宙に舞うソフィアは超巨大なジャンガルノに向かって着地と同時に薙刀を降り下ろした。


超巨大なジャンガルノは崩れ落ちる様に倒れた。

駆け寄ると超巨大なジャンガルノは反撃することないが怯え苦しんでいた目をしていたのだ。


ソフィアは薙刀を置き、優しく超巨大なジャンガルノの頭を撫でる。

するとソフィアが撫でている手から優しく包み込む様な光が宿る。それが何かは今のソフィアにはわからない。10秒位で消えてしまったが超巨大なジャンガルノの目には怯えや苦しみから解き放たれた様に優しく穏やかな目をしていた。ソフィアに感謝するように顔を擦り寄せる。

ありがとう、とそう言ってる感じがする。


しばらく頭を撫でたソフィア出会ったが、超巨大なジャンガルノのは何か気配を感じ取ったのか唸り声を上げる。


そこには数十人の冒険者がいたのだ。

しかし、どの冒険者も正気ではないことがわかる。錯乱状態なのか冒険者達は超巨大なジャンガルノを捉えると武器を抜き出し、襲いかかった。


ソフィアは置いてある薙刀を掴もうとするが接近していた冒険者の手にもつ剣で斬りつけようと迫っていた。

間に合わない、と感じたがその両者の間に超巨大なジャンガルノが割り込み、背を向け相手にの冒険者の剣を受けてしまう。


「な、なんで…」


超巨大なジャンガルノは攻撃を受けるが決して冒険者達に反撃をしなかった。剣や魔法を食らわれてもソフィアを守っていた。ソフィアは身体を動かそうとするがさっきまでとは違い思うように動かなかった。

ただ超巨大なジャンガルノに守られているだけ…。


そして虚しく最悪な結末を迎えようとしていた…。


筈だった。


突然、超巨大なジャンガルノと冒険者達の間に何者かが現れる。


冒険者達はその者から離れ様子を伺おうとする。


その者はこの状況を即座に理解して行動を開始した。


姿が消えたと思うと冒険者達が撃ってきた魔法、矢を片手剣で相殺し、近くいた冒険者達の武器を叩き落とした。


冒険者達が理解したのはいつの間にか魔法や矢を無効化され武器も地に落ちていたことだけだった。


超巨大なジャンガルノは突如現れた者に対してソフィアを守るように威嚇する。


「…」


その者は黙って超巨大なジャンガルノに近づき身体に触れた。

触れた手からエメラルドグリーンの光が出現し超巨大なジャンガルノを包み込む。


すると無数の傷が完治すると何かを察したのか超巨大なジャンガルノはその者へ感謝するように顔を擦り寄せる。


冒険者達は何も言わず、その者へと斬りかかろうとするが目の前に白い子供の狼が現れる。

その白い子狼から優しい光が冒険者達に包み込むとその光は役目を終えたように消えて行く。


「…えっ、ここどこだ?」

「一体何が…」

「ちょ、何で大剣が落ちてんの?」

「う~、何か気持ち悪い」

「おい!目の前にジャンガルノがっ!」

「…でも、大人しそうみたいよ?」

「ああ、敵意も無さそうだし…」


冒険者達は何かから解放されたように正気を取り戻す。どうやら何が起こっていたのか理解していないようだ。ソフィアは何が起こったかわからないが超巨大なジャンガルノを撫でている者をみる。


「ハクさん!」


そういうと薙刀を杖が代わりにして近づいて行く。

ハクはソフィアを見るやいなや頭に手を乗せる。その手から超巨大なジャンガルノにしたように治療術を行う。身体の怪我や怠さは抜け大分動きやすくなった。


「違和感はないか?」

「はい!大丈夫です!」

「そうか…。よかった。」


そう言いながらソフィアの頭を撫でる。

気持ちいいのか目を細め、頬を紅く染めながら麗しく微笑むハクに見惚れてしまう。


一方冒険者達は聖獣であるディオンが何があったのか説明していた。最初は聖獣であるディオンに驚いていたが、愛らしいく影響かすぐに打ち解けていた。


すると一人の眼鏡をかけた森族男性は超巨大なジャンガルノに近づくと考え込んでいる。他の冒険者達も超巨大なジャンガルノに近づくと身体を撫でたり観察していた。超巨大なジャンガルノは身体撫でられるのが好きなのかされるがままになっている。


「やはり、か…。」

「やはりっというのはどういうことだ?」

「このジャンガルノは恐らく群のボスだろうな。そして本来ジャンガルノは群を成して行動する。だがジャンガルノが1体だけで行動するのは1つしかない。それは…」


ハク達や冒険者達は眼鏡をかけた森族の男性に注目する中、彼は一息置くと、苦虫を噛み潰したような表情になる。


「自分達の群が全滅してしまう可能性がある時、その群の中で一番強いボスが自ら囮となって他の仲間達を逃がす時だ。」


沈黙が生まれる。


だが何故超巨大なジャンガルノが1体でいる理由が理解できる。


ハクの肩で寛いでいたディオンが何かを察知したのか声をかける。


「ハク!」

「ああ、わかってる」


ハクも理解すると超巨大なジャンガルノもハクとディオンと同じ方向付けを向いて威嚇している。その目には怒りに満ちていた。それと同じ様に大きな恐怖に塗りつぶされていた。


ソフィアや冒険者達も同じ方向を向こうとすると同時にドンッ!!と何かが落ちてきた。


「…お前さんがそんなに逃げ腰になってんの、よくわかるわ」


獣族の男性は思わず呟く。


そこにいたのは黒く巨大な何かだ。


冒険者達は襲われた者達のことを思い出す。


ー黒い何かに襲われた、と。


大きさは超巨大なジャンガルノより一回りも大きく、身体の形状を止めていない。身体は禍禍しい毒が含まれていそうな黒だ。黒い身体には赤く怪しい光が2つ見える。おそらくあれが目だろう。

その黒い何かはその場で動こうとはしない。


「何…?」


ソフィアは困惑していると黒い何かは突如笑い出す。


「クフハハハハハハァ!!!」


その笑い声は男女や子供の悲鳴にも混じっているようだ。


その黒い何かの前に出たのはハクだった。


「ン?何ダ?ソコノ小サイノ。」


赤く光る2つのはハクを捉える。


「お前は、一体何なんだ?」

「サア?何ダロウネ?」

「何者だ?」

「…マラサ。」

「じゃあ、マラサ。ジャンガルノが怯えてるけど、何したんだ?」

「アア、ソコノジャンガルノニ邪魔サレテ、ムカツイタカラ仲間ヲ見セシメニ殺シタ。ソノジャンガルノヲタダ、殺スノハツマンナイカラ、オ前等冒険者ト殺シ合ワセテ、最後ニ残ッタヤツヲ、殺シテアノ方ニ捧ゲヨウト思ッタンダ。外カラ観テテ面白カッタヨ?」

「あの方、って誰だ?」

「教エルト思ウカ?」


ハクは舌打ちをする。

話からして超巨大なジャンガルノが暴れていたのと今いる冒険者達が錯乱状態になっていたのはこのマラサがやったのだろう。


「で、ここにいる俺達をどうするつもり?」

「当然皆殺シダ。…ジャンガルノニカッタアノ子はデザートダ。マ、最初ニ頂クケドネ」


赤い2つの光がソフィアに向けられる。


今までに戦ってきた相手とは明らかに桁が違いすぎる。恐怖が、ソフィアを襲われ上手く言葉を発することができない。

超巨大なジャンガルノは何とかなるとは思っていた。だがあの黒い何かは無理だ。逃げたい。でも手足が震えて動かせない。間違いなく戦えば命は無いと本能が嫌と言うほど感じてしまう。

だがその本能を無視して無理矢理身体を動かす。

あの黒い何かを放してはいけないと瞬時に思ったのだ。

手に持つ薙刀でマラサに斬りつけようとする。

が…。


強固な岩に斬りつけた感覚で傷一つつかなかった。

絶望的な状況だが、ソフィアとっては更なる不幸が起こってしまう。


「う、嘘…」


折れたのだ。手に持つ薙刀が…。

折れた薙刀の刃が地面に落ちて行く。


「そ、んな…。パパの…」


ショックでその場で呆然と立ち尽くしてしまう。


「弱イ、弱イナ。マア、イイヤ…死ネ!」


マラサはソフィアを喰らおうとして飛び掛かる。


「嬢ちゃん、逃げろぉっ!!」


人族の男性冒険者や他の冒険者達が叫んだり助けようと行動する。

誰もが助からないと思っただろう。


「ッ!?ブハァアッ!?」


マラサは痛々しい声を上げながら何かによって後へ吹き飛ばされる。

吹き飛ばした本人、ハクは吹き飛ばされたマラサを睨み付ける。


「させない!」


卒倒してしまったソフィアを抱えると超巨大なジャンガルノへ向かう。


「…ディオン、ジャンガルノと一緒にソフィアを逃がしてほしい。」

「…わかったよ、直ぐに戻ってくるからね!」

「ああ。ジャンガルノも頼むぞ!」


超巨大なジャンガルノは頷くとソフィアを抱え、ディオンと一緒にこの森から脱出していく。


「俺は戦うぜ!」

「そうよ!この黒いのに変な魔法かけられたんだから!」


冒険者達は武器を手に取り戦おうとするがハクは前に出る。


「悪いけど、ここは俺に任せて!」

「何言ってるんだ、お嬢ちゃん!ここは俺等に任せて逃げろ!」


ハクは女呼ばわりした岩族の冒険者の胸ぐらを掴みギルドカードを見せつける。


「俺はSランクだ。ついでに言っておくが…男だぞっ!」


胸ぐらをを掴んだ冒険者を突き放し冒険者達を睨み付ける。

それを理解した冒険者達はハクに言われて安全な場所へと移動した。


「ウゥ…。今ノハ、効イタ。デモ、逃ガサナイ!デザート!」


マラサは追いかけようとするが後方からハクが放った雷によって行く手を阻まれてしまう。ターゲットをソフィアからハクへと変えたマラサは身体から無数の触手が生まれる。

ハクは片手剣を構えて戦闘が開始するのであった。





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