危険
できましたー!
ある大きな船の上、その周りには船だったよであろう残骸が海に浮かんでいる。中には人の遺体があるがそれを捕食している小モンスターが群がっていた。
「ウォォォォォォォォォォォォォイ!!!ジャスの野郎が地球人を見つけて先に行きやがっただとぉぉぉ!?」
約3メートル越えの身長の巨漢の声は地響きにも似ていて船が軋み、波は荒く揺れている。
彼こそが海賊八王の一人、『金剛』と呼ばれる者だ。
下っぱであろう者達は彼の威圧によってバタバタと倒れていく。
「お頭ぁ。あいつは……」
「うるせぇぇぇえ!!!」
「がっーーー!?」
ある一人の部下が何か言おうとするがその前に首から上が消える。そして頭であろうものがゴトリっと転がっていく。
「(あ~あ、『また』下手に口を出すからだ。前から言ってたろうに)お頭、取り敢えず落ち着いてくれ。まだ着いてはいねぇはずだ。」
「ぬぅ……そうか。」
一人の男性が『金剛』を何とか宥める事に成功するが内心ヒヤヒヤしながらもその力を目の当たりに興奮もしていた。
「で、どうしやす?ジャスが向かっている街はそう遠くはねぇ。」
「そうだなぁ……。よしぃ!おい、お前らぁ!今から地球人がいる場所に向かうぞぉ!」
「「「「応っ!!!」」」」
そして海賊八王の一人、『金剛』が悠を狙い動き出す。
『金剛』が率いるその海賊達は一般市民には一切手を出さない。だが相手から仕掛けてくるなら容赦はしないだろう。そして彼等の敵は『金剛』が座る海賊八王の座を狙う同じ海賊達。そして彼等、特に『金剛』が恨む地球人。
このやり取りで勘違いしないで欲しいが彼等は仲間思いだ。だから……。
「ぐぞぉぉぉぉぉぉぉお!!!仲間を一人殺っちまったぁぁぁぁ!!!すまねぇぇぇぇえ!!!」
しかし頭を吹き飛ばされた者の身体は首から出血することなく頭の元へとゆっくりと歩いていき両手で頭を持ち上げた。
「あ、いや大丈夫ッスよ」
「おぉぉ!!!そういやぁお前は妖族の頭離族だったか!」
「一応俺初期メンバーッス。そろそろ覚えてくれッスよ……。」
「ぬぅ、すまん」
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開けた森の中に何十人もの冒険者が『グラトニークロコダイル』と戦闘を繰り広げていた。
「ーーーっち!映像で見るよりかなり大きいじゃねぇかっ!」
ある冒険者が大剣で『グラトニークロコダイル』の長い尾を防ぐと舌打ち、愚痴を溢してしまう。
彼等が相手をしている『グラトニークロコダイル』は通常は40メートル位だが目の前のは約60メートルを優に越えている。
正直身体は堅く傷をつけることは難しい。加えて『グラトニークロコダイル』は辺り構わず暴れたおしている。
だが突如として『グラトニークロコダイル』の動きが止まる、いや止められてしまう。
「あれは!?」
『グラトニークロコダイル』の足元には氷で凍りついており、本体には樹木の根が無数に絡めていた。
「『氷結!』」
「樹木の魔力よ、そこにいる者を拘束せよ!『自然之拘束』!!!」
薙刀と青い太刀を持った金髪の美少女、ソフィアと栗鼠の耳と尻尾のロリ魔女っ子、ミルが『グラトニークロコダイル』の動きを止めていた。
だが動きを止められるのは一時的だろう。
すると口を大きく開けたその奥から赤いオーラが溢れだしている。何かのブレスがくるのだろう。
それをソフィアとミルに向かって放たれようとしていたがその前には馬人化になった褐色女騎士のクレハが盾を構えていた。
ブレスが放たれた瞬間、その盾が魔方陣が発動する。
「反射!!!」
ブレスが盾に触れた瞬間、それは見事に反射され『グラトニークロコダイル』に返されてしまう。
ーーーギャォォォアァァァア!?!?
まさか自分のブレスを返されるとは思っていなかったのだろう。
だが自身のブレスに苦しむがソフィアとミルの拘束が解けてしまう。
「『閃光・斬撃波』!」
「『二双・暴風斬』!」
解けた瞬間、ハクは純白の太刀、マグナは双剣で光と風の斬撃を放たれる。その斬撃は頭部に当たると同時に爆発が生まれる。
「『隕石』!」
「『大円斬』!」
他の冒険者達も遠距離攻撃を怒濤の嵐の様に放たれ更に爆発が大きくなっていった。
「……どうかねぇ?」
「これで殺ったとは思うが……」
「気を抜くなよ……」
それぞれの冒険者達は暴煙に包まれた場所へと注目し警戒を高める。
次第に煙は晴れていくが、そこには無傷の『グラトニークロコダイル』が。
その周りには紫の結界の様なもので守られていた。
「……あれが黒幕か」
『グラトニークロコダイル』の頭上には一人の漆黒のローブの人物がいた。
「ククク……中々の攻撃だな。だがもう少し、俺の相手をしてもらうぞ?」
「何者だ!」
「さぁ?俺に勝てば教えてやるぞ?」
その言葉が合図に戦闘が開始されてしまう。
この時ハク達を含めた冒険者達は気づかなかった。これは単なる時間稼ぎだということを。
悠の身に危険が近づいていたということを。