誤解
中々話が進まない。
速くしなければっ!
この話は少しBL要素が入っています。
それでもよければどうぞ!
「キシャー、キシャー!」
僕の傍にいたギンが真白髪のボーイッシュな彼女に向かって威嚇をしていた。しかしその威嚇は何故か愛らしい。僕はギンを止めようとするがその前に彼女がギンの頭を優しく撫でていた。
「Cランクモンスターのパヒュルネか。珍しいな。君の主は大丈夫だ。今から治す」
言葉を理解したギンは大人しく僕の傍に戻る。
すると彼女が僕の胸に手を置くとエメラルドグリーンの輝きを放ち身体全体を包み込んだ。
その優しいエメラルドグリーンの光は身体は身体にある切傷が瞬時に治っていく。だが、身体の倦怠感とは違う、乗り物酔いの様な感覚が酷く残っていた。
「……体内の毒は完全に抜けきれなかったか。」
そう言うと彼女は僕を起こしながら腰に付いていたバックの中を漁り、黒い液体の入った瓶を取り出した。その瓶の蓋を指で開けるとそれを僕の口に流そうとする。
「安心しろ、これは毒消しの薬だ。少し苦いかもしれないが我慢しろ」
彼女はそう言うが未だに身体の自由は無く、思うように口が開かない。
「……仕方がない……許せよ?」
彼女は申し訳なさそうにその黒い液体を口に含むと、そのまま僕の唇に押し付けた。
彼女の口から僕の口の中に液体が少しずつ流れるのがわかる。彼女の唇は柔らかくて鼻孔からは彼女の匂いを感じてしまう。僕は彼女から送られた液体を少しずつ飲み込むが苦いとは感じない。
あぁ、こんな美少女にキスされるなんて幸せ過ぎる!気のせいか彼女の唾液が美味しい様にも感じる。ほんのり甘くて病み付きになりそうな……。
彼女の口から液体が流し終えると僕の唇から離れてしまう。
「どうだ、少しは楽になったか?」
彼女は何事も無かったかの様に僕の顔を直視していた。確かに身体も大分楽になり、紫に変色した肌は元の色に戻っている?
僕はその綺麗な顔を見てしまうと恥ずかしくて顔を逸らしてしまう。顔が熱い……。
「どうした?まさかまだ体内に毒が……。」
そう言うと彼女は再び黒の液体が入った瓶を取り出し口に含もうとしている。
また彼女に口移しをしてくれるのは嬉しいけどこれ以上やったら色々ヤバイ!
「もっ、もう大丈夫!」
「そうか。身体は何ともないか?」
「だっ大丈夫!」
「なら悪いが暫くこの場で待っててくれ、ディオン頼むよ」
「はーい」
すると彼女の肩から白い小狼が僕の元にやってきた。とても可愛くて愛らしいが……今、喋ってたよね!?はーい、って!!この世界じゃあ普通なの!?
そんな事を考えている中、彼女は後ろに目を向けるとそこにはあの毒竜2、30体位が木々の間からやってきた。そして仲間であろう真っ二つにされた毒竜に目をやると僕達に向かって威嚇してきた。
「さて、」
彼女はゆっくりとした足取りで毒竜達に近づいていく。怖くないのだろうか、大丈夫なのか?と不安な表情をしているとディオンと呼ばれた白い小狼が愛らしい声でこう言った。
「ハクなら大丈夫だよ、君は安心して身体を休ませて」
その言葉に僕は頷くと彼女の方へと目を向けた。
「『雷双剣舞』!」
彼女はそう唱えると彼女の両手から雷の剣が現れそれを難なくと掴む。
ーギュグガァァァァァア!!
ーキュグググググ!!!
ーギギギギギィィィ!!
それが合図かの様に毒竜達は彼女に向かって一斉に襲いかかる。彼女から離れ後ろから見ているがそれでも毒竜達の迫力は恐ろしい。
しかし彼女は怯むこと無く姿勢を低くして迎え撃った。
まず最初に一番前に出ていた毒竜は噛み付こうと首が伸びるが彼女は潜り込むように下にかわすとそこから顎に向かって雷剣を突き刺し脳天まで貫通して絶命した。次に横からきた毒竜は毒の霧を吐き出そうとするがフリーになっている雷剣で吸うのと同時に飛ばし口の中に後頭部まで貫通し絶命した。
それから首を跳ねたり身体の一部に突き刺して感電死させたり、素手で相手の首を折ったり等と人間離れした動きで毒竜達を殲滅させた。
途中からどうやって殺したのか解らない程の速さだった。
僕は毒竜達の死体の中に佇む彼女を見蕩れていた。 美少女で戦いも強くてそれにカッコいい。しかも身体には帰り血が一切ついていなかった。
視線に気づいたのか彼女は僕に近付く。
「どうした?」
不思議そうな表情の彼女は 僕を覗き込む。
「あっいえ、何でもないです」
「そうか。」
僕は思わず彼女の唇を見てしまうのだがその事を思い出すと沸騰するかの様に顔が熱くなり無意識に自分の唇を触れてしまう。
「……そうだな。嫌だったよな」
「えっ?」
彼女は申し訳なさそうな表情をしていた。嫌?何が?
「俺の名前はハク、ハク・ウェード。」
「天城悠です。」
女の人で俺って使う人を見たのは初めてかもしれない。俺っ娘……悪くない!
「本当にすまないな。だが助ける為だったんだ。」
どうやら口移しでキスした事が嫌だったと思われているらしい。
「嫌じゃないですっ!」
僕はそう言い切ると彼女は怯えた表情で見ていた。肩にはディオンがジト目で何も言わずに見ている。
「……お前、そっち系だったか。」
「そっち系って何ですか?」
「い、いや、別に悪い事では無いが俺はそっち系ではない。だから無理だ。」
完全に拒絶されてしまった。あっ目にゴミが……。
「……男には興味無いんですか?」
声が消えそうに見るが彼女は顔をひきつった表情だった。
「そうだ、俺は女性しか興味はない」
「……そうですか、そっち系だったんですか」
「は?」
彼女はどうやら百合系だったらしい。まあ確かにあんなにかっこよかったら同姓にもモテるだろうね。
「ねぇ、何か誤解してるよね?」
「きゅい……」
いつの間にか僕の右肩に乗っていたディオンは呆れた口調だ。左肩にはギンがくっついていた。
「えっと……何がですか?」
「ハクは男だよ?」
「へ?」
どうやら僕は盛大に色々と間違っていたらしい。
やっと悠君はハクが男だとわかりました(笑)